京都大学特任教授 安田陽【メガ発インタビュー】 - 土地付き太陽光発電の投資物件探しは【メガ発】

京都大学特任教授 安田陽【メガ発インタビュー】

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出力抑制を深刻なリスクと思う者は太陽光に投資しない方がよい

本日は宜しくお願いします。さて、メガ発には太陽光発電所を所有されているオーナー様やこれから太陽光発電所へ投資をお考えの方が多数登録していらっしゃいますが、太陽光発電所に投資を検討する上で『出力抑制』 が一つのリスクと捉えていらっしゃる方が多いように思います。

九州では2019年3月に16日間、2019年4月は18日間出力抑制が実施されました。出力抑制は投資をする上で大きなリスクとなるのでしょうか。 また、今後日本での再エネに対する出力抑制はどのように変化していくとお考えでしょうか。

まず最初に出力抑制のお題を頂きましたが、出力抑制が深刻なリスクだと考えている方は、ハッキリ言って太陽光に投資しない方がいいと思います。…と、いきなりそういう厳しい発言からスタートしていいですか?(笑)

はい。大丈夫です(苦笑)

まず、リスクという観点から述べますと、FIT(固定価格買取制度)は色々問題が指摘されていますが、一定の内部収益率(IRR)を想定した上で買取価格が設定されています。

わかりやすく旧ルール(出力抑制30日ルール)で計算すれば、30÷365で約8%の出力抑制が発生する可能性があることも当然盛り込まれて収益率が計算されているわけですよね。

そもそもFIT施行時に、買取価格に出力抑制分が内部収益率に含まれることをお知りになっていた方はほとんどいらっしゃらなかったと思います。

そうだとすればとても問題です。現在、九州エリアで実施されている出力抑制の年間出力抑制率は公表データに基づいてざっと計算しても4%程度です。これは国際比較を行っても特段問題視される大きな数値ではありません。

この30日ルールが良いか悪いかはともかく、約8%の出力抑制が発生する可能性があるということが織り込まれたルール設定で買取価格が決定され銀行が融資している状況で、それでもなお出力抑制が深刻なリスクだと考えている方ははっきり言って太陽光発電の投資や所有はしない方がいいです。

約8%の出力抑制が発生することが織り込まれたルール設定のもとで、現時点での出力抑制を深刻なリスクと捉える事自体が認識として誤っていますし、またリスクが読めない方は太陽光投資はするなということですね。

そうです。出力抑制が出たのは2018年の10月ですが、ちょうどその時私は国際委員会のためヨーロッパにいて日本のニュースをインターネットで見ており、いくつかの新聞が出力抑制のことを一面トップに取り上げていました。その国際委員会はちょうど系統連系に関する委員会だったので、私が海外の専門家の方々に「日本で出力抑制が初めて起こりました」と言ったら、反応はどうだったと思います?

九州で出力抑制が初めて実施されたときはテレビやYahoo!ニュースなどネットで大きく取り上げられたいましたね。それでどんな反応でしたか?

『あ、そう。』みたいな反応でしたね(笑) 出力抑制なんて我々の国でもありますよ。って反応だったんです。

え?!そうなんですか?!世界からしたら出力抑制なんて当たり前の出来事だったんですね。

日本ではメディアも含め出力抑制の実施が、まるでゴジラが上陸したような大騒ぎです。一方で、世界からしたら『えっ?なんでそんなに大騒ぎしているの?』と思ってしまうわけです。日本全体でリスクをリスクとして認識せず、リスクの想定範囲のものをさも深刻なリスクがあるかのように大げさに騒ぐ風潮があまりにも多いように思えます。

FIT施行時は出力抑制の事などほとんどの方がお知りでなかったと思います。

一般の方ならともかく、太陽光発電でビジネスをやっている方までその程度のリスク認識しかないのは問題です。適切なリスク認識なしに、どのようにしてビジネスとして儲けるのですか?という話なので、私はとても心配しています。

私も7年ほど太陽光関連の事業に携わってきましたが、太陽光発電のリスク認識が甘い方は本当に多いと思います。

あるテレビではある発電事業者がインタビューで「出力抑制はけしからん」という発言をしていましたが、リスク認識の観点からは「けしからん」と言っている方がけしからん状態です。

その方は出力抑制が売電収入の妨げになるから「けしからん」と言ったのかもしれませんが、そもそもリスクとは何かがわかっていなかったということですね。

そのような発言は「発電事業者」がビジネスとしてするべき発言なのか疑わざるを得ません。発電ビジネスとして正しい情報を得て正しいリスク認識をしていないのではないか?という話になります。

おっしゃるとおりで、発電事業者として正しい情報を得ようとしない方に太陽光発電事業をやる資格はないという事ですね。

そうです。太陽光投資をするからには相当ご自身が情報収集して適切なリスク認識とリスク対応をした上でご商売された方がいいと思います。敢えて厳しい言葉で言わせて頂くと、リスクを正しく認識しない方は早く痛い目にあって退場してもらった方が日本のためです。

私も認識不足だったため耳が痛いです。(苦笑)

出力抑制の話に戻ると、国際水準と比較してどうなのかという視点が重要です。九州で出力抑制が行われているのは特段大きな政策の失敗とか電力会社の怠慢というわけでは全くないんです。もちろん、さまざまな施策を実施して出力抑制率をさらに減らす努力をすることも重要です。

しかし、国際動向や全体制度設計を無視して「出力抑制があると売電収入が減るのでけしからん」とか「出力抑制は損をする」だけを主張しても、それは太陽光の人たちが自分たちの目先の利益やエゴのために横車を押しているとしか見られなくなってしまいます。

国際動向の情報収集や全体制度設計を理解することが大切ですね。

そうですね。なぜそのような制度設計になっているかなどの出力抑制の発生メカニズムをちゃんと情報収集し、逆に「この部分が問題でこの部分はこう改善すべし」といったような具体的な提案を行政や産業界に発信していくことが大切です。

ちゃんと情報と理論を持って正論で声を挙げていくと電力会社や省庁なども「なるほど」と耳を傾けてくれるようになるでしょう。ただ「けしからん」と言っているだけでは長い目で見てビジネスにならないですし、時代を動かせません。

情報収集して自らが思ったことや考えた内容を発信していくことが大切ですね。

※1.IRR…(Internal Rate of Return:内部収益率)投資期間内における1年あたりの利回り

FITというのはそもそも発電事業者に優しい制度ではない

リスクという点では、出力抑制よりもずっと大きなリスク要因がさまざまにあります。例えば、FIT制度については、大きく誤解されている人も多いと思います。

私が執筆した本(「再生可能エネルギーのメンテナンスとリスクマネジメント」, インプレスR&D, 2017年)にも書いていますが、FITというのはそもそも発電事業者に優しい制度ではちっともないんですよ。

図 FITに関する誤解と神話(出典:安田氏講演資料

図 FITに関する誤解と神話(出典:安田氏講演資料)

FITは発電事業者に優しい制度ではないと?

はい。例えるなら「皆さん、今から冷たい水に飛び込んで下さい」という制度です。なぜかというと、FITは税金を原資としないので補助金ではないですが、電力消費者から賦課金という形で少しずつ原資を頂くという点で、補助金に似た補助制度です。しかしこれは、初期投資に対する補助ではありません。

確かにFITは補助金ではないですね。

FITは最初にポーンとお金をもらってあとは何もしなくても濡れ手で粟で儲かるというものではありません。kWh(キロワットアワー)という財を少しずつ生産していってそれに対して対価をもらえるのです。初期設備に対する補助金ではなく、生産物に対するパフォーマンス型補助制度ということができます。

なので、最初に飛び込む水は冷たいんですよ。なぜなら、再エネはまだ成長中の技術でメンテナンスなどのノウハウが十分確立していない分野だからです。ただし、20年間まじめに発電をし続け、向こう側まで泳ぎきれたらそれなりに儲かります、という制度です。

泳ぎきれなかった場合は?

泳ぎきれず途中で沈んだ場合は、そこから先は当然、kWhに対する対価はもらえません。倒産したり発電所を閉鎖した場合、途中で沈んだ人は借金を抱えてかわいそうですが、実はkWhの対価を賦課金として支払っている電力消費者(国民)にとっては、そのオーナーや発電所に対してそれ以上払う必要はないのでダメージはないんですよ。

確かに再エネ賦課金は抑えられますよね。

ですからFITはとても発電事業者に厳しい制度だと認識した方がよいです。むしろ、さまざまなリスクがあるからこそFIT買取価格が市場価格よりも高く設定されているのです。

そこを甘くみて「太陽光発電投資は必ず儲かる」と喧伝する人がいるようですが、そのようなことを言う人が出ないように、ぜひ御社でも啓発して下さい。

そうですね。いまおっしゃられた部分について例えば、太陽光発電事業者でいまだフェンスを設置していないですとか、メンテナンスの委託すらしてないですとか、このような発電所は日本にまだたくさんあります。

国は目標として2030年までに再エネの電源比率を22~24%に押し上げるといっていますが、世間の方に認めてもらうためにも健全な再生可能エネルギーを創っていくべきだと思うんです。

なので日本で健全な再生可能エネルギーをwebを通じて創っていくというのは弊社の使命だと考えています。

おっしゃるとおりです。太陽光発電投資はほったらかしでお金が入ってくるほど楽な商売ではないです。それこそ2019年の台風15号、台風19号で被害を受けた発電所も結構ありますよね。

出力抑制という最初のお題にもどると、今お伝えしたような事故やトラブルのリスクと比較すると、冒頭の出力抑制のリスクは実はそれほど深刻なリスクではなくて、より大きなリスクは他にも多々あるんですね。それを忘れて出力抑制がけしからん!と騒ぐのは本末転倒です。

なるほど。

それこそ台風で太陽光パネルがめくれて人身事故を起こしてしまった場合、損害賠償額はとてつもなく大きな額になります。発電事業者で保険に加入しているから大丈夫と思われている方もいるかもしれませんが、それはモラルハザードです。

設計や施工、メンテナンスに瑕疵があれば保険がおりない可能性もありますし、保険がおりたとしても翌年から保険料は倍近くになりランニングコストはどんどん上昇します。

確かに保険にだけ入っておけば大丈夫という発電事業者の方は多いかもしれませんね。

だとすれば問題です。そういったオーナーは、運よく10年くらいで損益分界点を迎えたとしても、そのあとで事故やトラブルを起こした場合、急転直下で赤字転落する可能性は十分にあります。

したがって、太陽光発電所のオーナーは正しい情報を常にインプットして、メンテナンスに対して適切に投資をする必要があります。また発電所用の土地や中古物件を紹介する側もちゃんと適切なリスク情報を収集してオーナーに伝えないと、訴訟問題に発展するケースも考えられます。

新規参入産業だけあって、ノウハウが十分蓄積されていないため、思わぬところにさまざまなリスクがあるわけです。

この事故事例は経済産業省の事故ワーキング(新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ)で取り上げられていたものですね。

はい。そもそも山を削って斜面で太陽光発電事業をやること自体がリスクが高いと思います。法律上、大丈夫だからといって無理に開発を進めると、土砂流出や法面崩落など大きな事故を発生させてしまうリスクも増えます。

保険がおりて復旧できたとしても、適切な設計強度を計算しなおしたら現状復旧ではなく新設扱いになってしまうためFIT認定を取り直さなければならず、買取価格が安くなってしまうといったような可能性もあります。

一度このような状態に陥ったら、たとえ保険がおりたとしても、発電所の寿命期間で採算が取れなくなる可能性も出てきます。

良いことが全くないですね。

同じ発電所で事故やトラブルが多発すると保険の引き受け手がなくなるという事態もあり得ることで、そうなると無保険でやらないといけなるのでますます火の車です。そういう問題があと数年で顕在化してくる可能性があります。

保険があるから事故があっても大丈夫と安易に思っている人は、そもそも太陽光発電をはじめ再エネへの投資はやめた方がいいです。そんなに簡単なものではありません。

当初はメンテナンスフリーと謳われていましたが、全くそうではなかったですね。

全くです。太陽光発電の投資や運用をするのであれば、ビジネスとして徹して下さい。ビジネスをやるからには資金回収して儲けることは悪いことではありません。そのかわり、来たるべきリスクに対してきちんと対策をしてしっかり情報収集を行うことです。

投資するなら発電所を我が子のようにかわいがるべし

ところで、太陽光発電所を所有しているオーナーさんが何回発電所に足を運んだことがあるのか、これについては御社で調査されたことはありますか?

いえ、今まで一度もないですね。

これはぜひ実施して下さい。太陽光発電所の所有者自らが行かなくてもいいのですが、メンテナンス委託した業者さんに毎日のように現地を確認していただかないとマズいですよね。少なくとも監視カメラをつけるなど、専門の近くの業者さんに委託するなどして管理してほしいです。

そうですね。トラブルの要因は色々ありますが日本は自然災害大国ですしね。

太陽光発電所は「発電所」です。場合によっては危険物です。太陽光パネルは燃えるんですよ。日本国内でも2019年9月の台風15号の影響で千葉県にある水上式の太陽光発電所が燃えていましたよね。

メディアでも報道されていましたね。

ちょっとしたメンテナンス不足や施工ミス、経年劣化などで大きな事故を及ぼす可能性があります。それは自身が保有している発電所の損害だけではなくて、社会的な損失を引き起こす可能性があります。一度事故が起こると、別のまじめにやられている事業者もとばっちりを受けてしまいますよね。

太陽光発電全体のイメージが悪くなりますよね。

あそこの太陽光発電所が燃えたけど、あんたの所の発電所は本当に大丈夫なのかなど、真面目にやっている発電事業者にも周辺住民の方々から苦情が来ることになりかないですよね。

太陽光発電所へ足を運ばずメンテナンスを軽視するとか、リスクをリスクとして認識しないとか、あるいは情報収集もせずになんとなくリスクを過剰に認識してしまうというビジネスマインドに徹していない方は太陽光発電に投資をする資格はないと思います。

おっしゃるとおりでそのような方は太陽光発電に投資をする資格はないと私も思います。

太陽光発電に投資をするからには太陽光発電所を我が子のように育てていく必要があると私は思います。毎日毎日太陽光発電所をかわいがって見てあげる方に太陽光発電投資をやっていただきたいですね。単なる気持ちの問題ではなくて、ビジネスに徹するとしたらそれぐらいの配慮がないとリスクに対応できないからです。

御社もそれをつなぐお役目でしたら、買い手と売り手でマッチング(売買契約)成立した後に、太陽光発電所の保守点検等はどうされているかとか、フェンス・看板の設置や住民トラブル等がないかなどの確認を取られた方がいいと思います。

そうですね。

ところがやはり、メンテナンスもろくに実施しないとか、事故やトラブルは起こすという再エネが多いと、高い賦課金を払っているのにけしからん、と国民からお叱りを受けてしまう産業になってしまいますよね。

多くの国民や発電事業者でさえも「FITがあるから濡れ手で粟で儲かる」と誤解しており、FITの根本理念が日本全体で十分理解されていないかもしれません。

我々のようなサービスを提供する側の人間でもFITを誤解している人は多数いると思います。

前述の経産省の事故ワーキングでも太陽光の事故例がいろいろ紹介されていますが、トラブルが起きてから三か月も気がつかなかったなど、他の発電事業では考えられないケースも見られています。

発電事業者側の自損事故で自分だけ損をすれば自業自得に過ぎませんが、このようなケースは近隣の住民など公衆安全に影響を及ぼす甚大な事故に発展しかねず、これは発電事業者としてありえない姿勢です。

ありえないですね。

そういう事業者やオーナーは早く市場から退場してほしいと思います。センサやモニタリングで監視し、何か事故やトラブルがあれば真っ先に駆け付けるといった体制があると良いですが、残念ながら日本のFIT法では発電所の監視装置の義務化までは盛り込まれず、義務化されていないためそのような装置を設置しない事業者やオーナーも多いです。

たしかにFIT法には盛り込まれていないですね。

法令ではそういうところまではあまり厳しくしていない現状ですが、それはやらなくてもよいと言っているわけではありません。

もし東京都にお住まいの投資家さんで地方の太陽光発電所を購入したとしたら、何か発電所にトラブルが起きたときにほったらかしにするのではなくて、地元のメンテナンス業者と契約して発電所を定期的に巡回するなどの適切な監視やメンテナンスシステムが必要です。その方が地域にお金が落ちる仕組みができ、地域経済にも貢献します。

発電所がある地域の方と、良い関係性を構築する事は大切ですね。

それをしなければ、ますます事故リスクは高まる上、そこの地域に十分お金が落ちないとなると、地元の人にとってはよそ者の迷惑設備としてしか映らないわけです。

何も良い事をもたらさない迷惑な設備でしかないですね。

このような関係だと、とても負の循環になってしまいます。地元との共生を考えず、周辺住民とトラブルが発生する可能性があがるのもリスクですし、事故も想定しておかないとリスクが増大します。

そのリスクをきちんと認識し、適切にリスクを軽減させ対応できる人が本来、勝ち抜けるというわけです。リスクに対応できない人は早く負けて、さっさとお金をすって退場して下さい。というのが私の考えです。

仰る通りだと思います。

FITの良いところというのは、固定価格で買い取ることです。ようするに事故やトラブルなど不測の自体がなければ最終的には儲かるという制度です。

そうすることによって、事業や投資の予測が立てやすくなります。これに尽きます。ただ、事業予測がしやすいだけで、そのまま放ったらかしで発電所を運用しても必ずうまくいくというわけじゃないんですよね。

手を抜けば抜くほど、当初の予測通りにはならず、事業として成立しなくなる可能性が高くなります。仮に損益分界点を迎えたからといって安心はできないです。

先ほどもお伝えしましたが、それまでの収入を全てすってしまうような事故が出てくるかもしれないですよね。

損益分岐点をむかえたからといって、油断をしてはいけないですね。

規制緩和という点では、電力自由化や再エネの市場参入がありましたが、それに対して、現在事故が多くなってきているので、規制が強化されつつあるのが現状です。

事故は絶えないですよね。

なので、再エネ発電所に対して、これこれの装置を付けて下さい、あるいはこれこれの対策をやって下さいといったような規制強化が進んでいるんですよ。

そのような装置や対策は一時的にコスト上昇になってしまうかもしれませんが、結果的に事故やトラブルを減らし発電所の寿命を延ばすことができるので、長い目で見ればトータルの発電コストを下げることができる可能性もあります。

事故やトラブルの防止という観点からは、リスクに気を配らないダメな再生可能エネルギー発電所はどんどん退場した方が地球のためになりますよね。

なるほど。

先ほどから厳しい意見を申し上げてますが、最初から悪意を持って太陽光発電事業に投資をされている方は少ないと思います。

たしかにそうですね。

なので、リスクについてあまり意識していない事業者やオーナーが、なにかの拍子でこのままではダメだと気付いていただければ、優良な太陽光発電市場が徐々に確立されていくと思うんですね。

そうですね。いまお話頂いた事は弊社の使命といいますか、正しい情報を太陽光発電投資されたオーナー様に発信して、健全な市場を確立していければと思っています。

如何に情報を収集して対策を練って勝ち続けていけるかが重要です。そこで勝ち抜いた人は儲けてもいいですし、ズルをして儲けたわけではないので、最終的に地球環境のためにありがとうと色々な方に言ってもらえる仕事になると思います。

情報収集の大切さを痛感します。

勝ち残るためには情報収集が命

技術的なリスクとしては事故が挙げられますが、当初の主題の出力抑制の話は法務リスクに相当します。技術や法務の専門家がいないとリスク対応は難しいですよね。これはどんな優秀な人だって社長さん1人だけではできません。

一人じゃ対応できることが限られてきますよね。

この分野に詳しい弁護士と顧問契約とか、メンテナンスの外部委託をするとか、あるいは高い年収で優秀な人材を雇用するなどして、リスクヘッジしていくのが大切だと思います。

特に政策変更というのはとても早いスピードで変わります。それは予見できないからではなくて、それでも予見をしていかないといけないのが本来のビジネスです。

予見するにはやはり情報収集が必要ですね。

それができない企業はやはり市場から脱落していくわけです。それを一個人のオーナーだけできるでしょうか?ということになります。

例えば手元に小金があるからといって金融取引を個人が一人でやろうとするみたいなもので、相当な腕前のデイトレーダーでもなければ、個人で市場取引は片手間ではできないですよね。

なので、金融取引の場合は証券会社のように代行業者がいて、個人のお客様のアセット(資産)をお預かりしてうまく運用します、というシステムが発達しています。

それと全く同等、個人の太陽光オーナーのアセット(発電所)を預かってうまく運用するアグリゲーターや適切な助言をするコンサル会社が必要となってきます。協会や連盟のような団体に参加して情報収取やノウハウを共有するのもよいですね。

アライアンスを組むことが大切ですね。

そうです。御社もそういう立ち位置とまた少し違うかと思いますが、メンテナンスは大丈夫ですかとか、法的にこういった変更がありましたが対応していますか、などを御社も発信していただき、発電事業者は御社のような媒体から情報収集をしてその上で適切なリスク低減対策をして、健全に儲けていただきたいです。

弊社も色々な媒体から情報収集しております。

そういう情報収集に太陽光発電所のオーナーがお金をかけなかったり、価値を見出さないと、どんどんリスクが上がってしまいます。いまは大丈夫でしょ、と思っていても数年後にダメになっちゃう可能性は十分あります。

先を読むためにはやはり情報収集ですよね。そのような情報収集にはそれなりの専門家をおかないと対応は難しいと思います。

太陽光発電所のオーナー様も、そのような事を常に監視するのは現実的になかなか難しいですよね。

インターネットで無料の情報を収集する程度ではビジネスとしては全く対応できないでしょう。その先々をもっと読まなければいけない。

今回私がお伝えした以上の詳しい専門情報をコンサルタントや調査会社としてお仕事にしている方もいますし、発電事業者やオーナーはそのような専門情報に対して対価を払う習慣がないと太陽光発電をビジネスしてやっていけませんよね。

なるほど。

再生可能エネルギーは新しいテクノロジーなので、日本だけでなく世界中が試行錯誤しながら頑張っているわけです。そういった部分を中小企業やベンチャー企業が担って、大企業よりも政府よりも先に情報を取って提案をしていく…、くらいの気概がないと生き残れません。

会社の規模が小さかったとしてもそれは欠点ではなく、むしろ大きい会社や政府よりも意思決定が早いという点で利点だと思います。

弊社もITベンチャー企業なので意思決定は早いです。

小さいベンチャー企業は活きがいいんです。新参者の産業というのは、バンバン会社が潰れていって、でも新しいことにチャレンジしていった企業が生き残っていくものです。

ベンチャー企業というのは大企業が真似できないような技術力を持っていたり、政府が知らないような海外情報をいち早く持ってきたりという戦い方をするのが普通です。特に海外では。

そちらの方がビジネスとしてやりがいがありますよね。そのような人たちが勝っていく産業というのはむしろ健全で、なにも情報を取ろうとしない安穏とした人たちがラクして儲かっていく産業構造は、日本をダメにしていくでしょう。

繰り返しますがFIT制度は固定価格のおかげで予見性が高まるだけで、その他のリスクが軽減されるわけでは全くないのです。

そうですね。我々としても100%は難しいと思いますが、再生可能エネルギー特にまずは太陽光発電の市場を健全化できるように日々情報を発信していきます。

太陽光発電に投資をされる方はぜひ、単に設備や「もの」ではなくて、「しくみ」や情報・人材に対して投資をして頂きたいです。前述の通り、一人でやるには限界があるので、アライアンスを組む事が大切です。

何人かの個人あるいは小さい会社同士で情報を共有する、協会や連盟に加盟する、それで必要なときにお互いに協力をするといったことですね。

メガ発にも太陽光発電の事業者様から直接ご連絡をいただく事が多々あるのですが、メンテナンスのご相談も多数いただいていてます。そういった方には条件にマッチしたメンテナンス会社さんを紹介してマッチングさせる形でやらさせていただいています。

そうですね。それがもうビジネスとして成り立ちますよね。リスクテイクするというのはなんでも自分でやるというわけではなくて、必要なときにどれだけ専門家といち早くコンタクトをとれるかという人脈や情報ネットワークも大事です。いかにうまくアライアンスを組むかがリスクヘッジの手段になりますよね。

弊社としてもより良いサービスを提供できるよう引き続き情報収集を行っていきます。

やはり情報を取るというのはとてもビジネスになります。全ての小規模発電事業者はベンチャー企業として頑張ってもらいたいですね。

私も大学の授業などで若い学生さんに「行列のできるラーメン屋に並びたいですか?」と質問するのですが、行列をつくるラーメン屋さんが必ずしも美味いとは限らないですし、ましてや自分の好みに合うかは未知数ですよね。

だとしたら噂レベルのネットの評価とかに惑わされず自分で開拓した方がいいですし、その方が楽しいと思います。

同感です。

そもそも再生可能エネルギーをやる意義は?

もしよければ、リスクという観点からもう少し俯瞰的なお話をしましょうか?

宜しくお願いします。

再エネに対する投資はゲームだと考えてよいと思います。もちろん、遊びのゲームではなく、個人の人生や地球の未来を賭けた真剣勝負です。

ゲームを進めるには、ちゃんと情報収集して技術部隊も法務部隊もそろえます。これを一人で全部やるのは大変なので、ネットゲームでギルドに参加したり他のプレーヤーとパーティを組むのと同様、協会や連盟に加入してアライアンスを組んだり各分野の専門家に外部委託をしたり、適度にリスク分散します。

そして、ルールを守ってズルをせずにきれいにゲームプレイして正しく儲けるのが一番いいですよね。

太陽光発電投資をゲームに例えるとわかりやすい気がします。

自分だけ何もしないでラクして儲けるのはズルなんですよ。当事者はラクで良いかもしれないですが、誰か他のプレーヤーに迷惑かける可能性が高いですよね。

このようにズルして儲けることは、経済学的には「外部性」と言います。特に負の外部性(外部不経済)として発生する「外部コスト」は、市場価格に反映されていない「隠れたコスト」になります。

なるほど。

これまで石炭や原子力などいわゆる従来型発電はこの外部コストが多いので、このようなやり方ではもうダメで、将来人類に甚大な脅威を与えるというのはわかりますよね。

この負の外部性が顕在化したものが「気候変動問題」です。放置していたら人類全体のリスクになります。ゆえにそのリスクを回避するために外部性を是正する必要があり、そのために再生可能エネルギーをやりましょう、という話を国連やIEA(国際エネルギー機関)などさまざまな国際機関が言ってるわけですよ。

FITという制度も、従来のやり方だと市場が歪むため、その歪みを是正するために新規技術を支援する制度なのです。その時流の中で、太陽光に携わっている人がズルしてラクして儲けましょうなんて言ったら、これはもう真逆の話になります。

それでは最終的に従来型発電となんら変わらなくなりますね。

図 なぜ世界中で再エネが促進されるのか?(出典:安田氏講演資料)

図 なぜ世界中で再エネが促進されるのか?(出典:安田氏講演資料)

そうです。再生可能エネルギーがズルしてラクして儲けたら、国民からお叱りを受けてしまうけしからん産業になってしまうわけです。

そうならないように、太陽光業界は正しく汗をかいてリスクを取りながら普及促進していかなければならないのです。しっかりとリスクを管理して正しい商売をしていくということです。

やはりちゃんと太陽光発電事業をやられている方が、ちゃんとしていない発電所の事故を受けて、さらに世間的に太陽光業界自体がダメだという認識をされてますます負のスパイラルに陥っていきますよね。

そうなんですよ。日本における再生可能エネルギーは新参者ですから、一部の不届き者が事故を起こしただけでも世間から見る目が厳しくなります。

いま太陽光発電に対する世間のあたりはそういう状況だということを理解していただいた上で、やはり太陽光発電投資をはじめ発電事業者には清く正しくやっていただく必要があります。それが再生可能エネルギーの理念ですから。

清く正しく、ですね。

ダーティーにやる再生可能エネルギーは、再生可能エネルギーの本来の意義に反しています。ダーティーというのは汚いことをやるというだけじゃなくて、不作為で何もしないでラクして儲けるといったこともです。

法に触れなければなんでもよいという言い訳は許されず、少しでも負の外部性を減らす努力をしなければいけないのです。

そうですね。

あとリスクについて申し上げたいのですが、リスクはちゃんと日本産業規格(JIS)に定義されているんですよ。

といいますと?

JISの定義の大元は国際標準化機構(ISO)の規格なのですが、JIS Q 0073:2010(ISO Guide 73:2009)『リスクマネジメント –用語』によると、リスクとは「目的に対する不確かさの影響」とたった一行だけで定義されています。

ようするに、よくわからないことがあれば全部リスクになります。計算をして誤差が出るとかデータ欠損もリスクですし、予期しない自然災害や政策の変更も全てリスクです。

目的に対する不確かさの影響、ですか。

はい。しかもJIS/ISOによると、リスクとはネガティブな意味だけではなく、ポジティブな意味もあります。リスクの定義の注記に『好ましい方向および/又は好ましくない方向にかい(乖)離することをいう』とされています。

一般的には、リスクは悪いことにしか使わないですが、少なくともJIS/ISOの世界では両方の意味で使われます。

たしかにリスクという言葉はマイナスの表現でしか使ったことがないです。

IS/ISOの定義としては良いこともリスクなんですよ。ですから「リスクをチャンスにする」という発想はまさにそういうことで、不確かさを読めないと悪い方向にいきますが、それを読むことができるとビジネスになります。逆に言うと、リスクがないとビジネスにならないんですよね。

なるほど。

私が先ほどから「リスクを読めない人は早く退場して下さい」と申し上げており、冷たく感じる人もいるかと思いますが、正しくリスクを読める人が勝ち抜ける社会というのは正しい意味での競争市場の健全なあり方だと思っています。

もちろん、リスクを読んだ上でズルをして人を蹴落とすやり方は好ましくなく、それゆえそのようなズルは外部不経済として規制機関によって厳しく規制されるのが理想的です。

そのような理想的な市場のあり方は、人を蹴落とすわけではないので、最終的に貧しい人や将来の子供たちを救えることにもつながるんですよ。

なんか深いですね。

そうなんです。そのあり方であれば、たとえFIT単価が高い高いと世間に言われても、化石燃料を減らし大気汚染やCO2排出による自然災害の多発を減らすことにつながり、社会的便益を市民にもたらすので最終的には良かったねと言われると思います。

この「便益」という概念を無視してしまうと「FIT単価が高いじゃないか」「太陽光事業者は儲けてけしからん」で終わってしまうと思います。

何のために太陽光発電投資をするのか、それから太陽光に投資をしたからには何ができるのかというのを、実際に太陽光に投資をしたり所有・運用する皆さんご自身に改めてお考えいただきたいと思います。

色々と勉強させていただきました。ありがとうございます。

【番外編】いまノリに乗っているテスラについて

主題と全く異なる話になってしまうのですが、2019年10月15日に日経新聞でテスラがパワーウォールを2020年春頃に販売を開始するといったニュースがありました。

分野違いかもしれませんが、テスラ社のパワーウォールは日本にマッチするものなのでしょうか。また、最近みた記事で、欧州の中古車市場でBMWなどの大手会社を抜きテスラが快進撃を続けているそうです。

なのでこれらを踏まえ抽象的な質問になってしまいますが、そもそもテスラ社を安田さんはどう思われているかをお伺いしたいです。

ではまず良い方向からお答えします。ズバリ、テスラさんは商売が非常にうまいと思います。

とても魅力的に物を売ることが上手くて、これは日本企業も少なからず見習った方がいいと思います。例えば、経済学で『支払い意思額』という用語があるのですが、ご存知でしょうか?

支払い意思額…..聞いたことは少ししかありませんが、あるモノに対しその人はどのくらいの対価を払うかと言った意味合いでしょうか。

その名の通り、ある財や商品に対してどのくらいのコストを払いたいですか?ということを示す指標です。

例えば「ビール一杯にあなたはいくら払いたいですか?」とアンケートを取った時に、「ぼくは140円の発泡酒でいいや」という人もいるでしょうし、「クラフトビールに1,000円払ったとしても美味しければ満足」という人もいるわけです。

一方でビールを全く飲めない人にとって(例えば付き合い宴会などで)ビールに対してお金を払うことは罰金でマイナスの価値にしかなりません。ビールの味に対する満足度というのは人それぞれまたは時と場所によっても違いますよね。

ですから、あるモノに対して自分がどのくらいの対価を払いたいですかという指標が「支払い意思額」です。この点から言うとテスラ社は「テスラ」というブランドをうまく育てているので、多くの人がその商品に魅力を感じ、ついつい手を出してしまいます。

たとえ販売価格が99万円でも、テスラの商品をかっこいいと思っている方は、そのコストを支払ったとしても所有していること自体に満足と考える可能性が高いです。

テスラの商品を持っていることが一種のステータスですよね。

はい。環境破壊をしながら事業を展開しているブランドであれば、ブランドの価値だけを高め支払い意思額をつりあげるのは論外ですが、テスラは地球環境に貢献するという企業戦略を立てていますし、実際に電気自動車や蓄電池による系統制御で環境に貢献しています。

テスラは単にかっこいいだけのブランドではないのです。地球環境に貢献する企業を応援する人たちは支払い意思額も高いです。地球環境とテクノロジー的なカッコよさをうまく組み合わせています。

それ故、ただただ『戦略がうまい』の一言です。そして、日本の企業がどうしてテスラのような戦略展開をできないのか…、という話になりますね。

なるほど。

いま良い方向でお話しをさせていただきましたが、一方で悪い方向もあります。いまの日本の再エネ導入レベルでは、蓄電池って全く要らないんですよ。

全く要らないと?

はい。系統連系の技術的観点からは全く要りません。これを言うと驚いてしまう日本の方が多いのですが、ハッキリ言ってまだ日本には蓄電池導入は早いと思います。

先日、安田さんのTwitterを拝見しましたが、太陽電池の研究をされている櫻井さんも仰っていましたが、日本の再エネ導入率が25%~40%くらいにならない限り蓄電池は全く必要ないと言っていましたね。

まさにその通りです。再エネ比率が低い段階では、蓄電池のような高価な新規デバイスをわざわざ投入しなくても、既存のよりコストの安い手段(連系線活用や揚水活用など)で十分対応が可能なのです(下図参照)。

これは国際エネルギー機関(IEA)など多くの国際機関の報告書や学術論文で書かれている「世界的な常識」です。そのような状況で日本が蓄電池に邁進することは世界中の人から見たら「不思議の国ニッポン」なんです。

仮に例えば、日本が2030年までに再エネ電源比率を50%にしますよといった目標を立てていたとしたら、日本の蓄電池は世界からみても「すごい!」と評価されるでしょう。

再エネ導入率が50%近くになればいよいよ蓄電池の出番だからです。もし日本が高い再エネ導入目標を持って蓄電池技術を開発したとすれば、世界各国から見れば「日本は今から用意周到に手を打っているんだな」ととても魅力的かつ脅威に思われるでしょう。

しかし、日本の現在の公式発表によると2030年までに再エネは22%~24%にすると言っているに過ぎません。

図 蓄電池の選択は最後の手段(参考:IEA Wind Task 25: Recommended Practice RP18 (2018)より安田氏翻訳・加筆)

図 蓄電池の選択は最後の手段(参考:IEA Wind Task 25: Recommended Practice RP18 (2018)より安田氏翻訳・加筆)

しかし、日本の現在の公式発表によると2030年までに再エネは22%~24%にすると言っているに過ぎません。

パーセンテージにかなり差がありますね。

そうなのです。そして現時点では、太陽光と風力を足してもまだ全体の6%程度です。本来蓄電池が必要だといわれるレベルよりもずっと低い段階なのです。

なので世界からすると『えっ?なぜいま蓄電池が要るの?』という状況なのです。全く要らないのに国全体、産業界全体で必要だ必要だと言って余計なコストをかけているわけです。

ちなみに、いま再エネ導入で最も最先端を走っている国や地域はデンマークや南オーストラリア州です。その国や地域の発電電力量全体の40%がすでに再エネ(主に風力)で賄われています。

南オーストラリアにおいては2017年にテスラの産業用蓄電池PowerPack(パワーパック)を導入していますね。

はい。そこでテスラの電池の出番なのです。南オーストラリア州は電力系統の安定化のためにテスラの100MW/129MWh 大容量蓄電池システムを入れたので、日本でも「おお、すごい!」と言って話題になっていますが、南オーストラリアは風力発電の導入率がkWhベースで全体の40%あるんですよ。

一方で砂漠の国ですので水力はほとんどありません。そのレベルだから蓄電池が必要なのです。

なるほど。

例えていうなら、ネットゲームで南オーストラリアにLv.40の勇者がいて、その勇者が身に着けているプレートアーマーを、日本の初心者村から出たばかりのLv.6程度のプレーヤーがLv.40の勇者と同じ装備したがっているといったような感じです。

しかもLv.6では勇者のプレートアーマーは簡単には身に着けられないので、重課金して無理に身にまとっているような状態です。

最近のゲームは足りないレベルや強い装備を課金をすることで時間をかけずに手に入れることができますよね。(笑)

日本の蓄電池の場合は、重課金の割にレベルが大して上がらないのが問題です。この例え話を若い人たちにするとウケるんです(笑)。海外からすると『日本はヘンな国だな…』と思われているでしょう。

水素に関してもそうです。電力系統の運用の観点からすると、水素が必要になるのは再エネ導入率80%以上になってからです。

なので、再生可能エネルギーの普及を本気で進めている国は、2040年頃には再エネ導入率80%を狙っていて、そのために今から水素利用の開発を虎視眈々と狙っています。

一方で、日本はそんなプランを全く立てずに、ただ水素水素と言っているだけなのです。

なぜプランを組み立てもせずに日本は先走った事をしてしまうのでしょうか。おかしいですね…

まったくです。なぜなんでしょうかね。科学的根拠に基づいて意志決定する習慣が乏しいからかもしれませんね。これは政府や産業界だけの問題ではなく、国民全体の問題です。テスラ社の話に戻すと、テスラ社のバッテリーの中身というのは日本製や韓国製だったり、他の会社の製品を使っています。であれば、日本企業もそういう売り方をすればいいのではと思うのですがなかなか真似できないようですね…。

なぜ真似できないのですか?

どんなにデバイスの改良を頑張ったとしても、コモディティ化したら結局韓国や中国などにノウハウを持ってかれてより安価な商品で市場を奪われてしまいます。一方で、魅力的なプラットフォーム開発に力を入れないとこれらはみんなアメリカやドイツに全て持っていかれてしまっています。このままでは日本には何も残らないんでは…、と危惧しています。

日本のメーカーはデバイス開発という「ものづくり」にばかり熱心で、システム開発やプラットフォーム設計、さらには規格や規制・政策も含めた制度改革などの「しくみづくり」の議論が苦手なように見受けられます。

日本はテクノロジー開発の順番をすべからく間違えてるようで、要素技術開発だけを一生懸命取り組んだところで、コモディティ化してしまえば、前述のように新興国にもっていかれてしまう可能性も大です。

しかも再エネ政策とは大きなギャップがあり、国際的に見れば蓄電池が不要なレベルなのに蓄電池が流行るという、とてもガラパゴス的なことをやっています。

日本市場だけで小さく通用する技術だけでなく世界各国の人が利用してくれるような魅力的なコンセプトとかプラットフォームを作らないと、その分野は全て海外に持っていかれることになってしまいます。

もったいないですね。

そうなんですよ。最近では災害対策として蓄電池ブームになっているようですが、これもきちんと費用対効果を考えないと「不安商法」に便乗しただけ…になりかねません。ましてやきちんとした費用便益分析もしないで自治体が蓄電池に補助金を出してしまうなどはもっての外です。

蓄電池はさまざまな利用用途に使えるのでデバイスそのものに罪はないのですが、日本の蓄電池戦略は国際動向の流れから大きく乖離しており、このままのやり方では世界市場に生き残れるかとても心配です。蓄電池業界も太陽光業界も危機感を持った方がいいと思います。

なるほど。

結果的に日本には何も残りません…、となったら恐ろしいですよね。そうならないようにするためには、やはり再エネに携わる新規産業が研究開発にコストを投じて、テスラ社のようにかっこいい「しくみ」を作っていただきたいです。

日本企業には国際動向や長期戦略を見据え、きちんとした情報収集と理論武装でしっかり頑張っていただきたいですね。

本日はありがとうございました。

プロフィール

京都大学特任教授

安田陽

京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座 特任教授。博士(工学)。専門は風力発電の耐雷設計と系統連系問題。技術と経済・政策の間を繋ぐ仕事を担っている。また、エネルギー関連の書籍も多数執筆。2019年11月22日には『世界の再生可能エネルギーと電力システム 系統連系編』を出版。

インタビューを終えて

安田陽氏に取材してみて、私自身、出力抑制に対してリスク認識が甘かったと痛感しました。

出力抑制を実施する側がただ悪いではなく、なぜ出力抑制をしなければならないのかの制度設計をしっかり理解し、そして世界各国からみて日本はどのように見られているかなど、今後はもっと俯瞰して太陽光発電を取り巻く市場をはじめ、再生可能エネルギー全般の知識を深めていければと思いました。

メガ発では引き続き専門家やプロの方にインタビューを実施してまいります。

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