「2019年問題」とは?太陽光発電の売電期間が終了(卒FIT)したあとはどんな対策がある?
太陽光発電の「2019年問題」という言葉が、昨年末あたりから方々で飛び交っています。しかし、10kW以上の産業用太陽光発電のみを行っている事業者にはほとんど無関係の話だということに気付きます。
それでも固定価格買取制度を初めに経験した方の売電期間は2019年の10月いっぱいで切れますし、政府も何らかの対策を講じているようです。この記事では、間近に迫った太陽光の「2019年問題」の本質と対策についてまとめています。
目次
そもそも「2019年問題」とは何なのか?
「2019年問題」とは、太陽光発電の売電期間が終了した後、余剰電力の取り扱いについてどのように対処すれば良いかという問題です。
ただこの問題については、2009年に余剰電力買取制度が始まり、2012年に固定価格買取制度( Feed-In Tariff:「FIT制度」)に制度を統一した際、10年間(10kW以上のシステムは20年間)で売電期間が終了すると決まっていたため、今更取り立てて騒ぐような問題ではないといえます。
2019年には何が起こる?
また2019年に起こるのは、2009年に余剰電力買取制度を使い、自宅に太陽光パネルを設置した方の売電期間が予定通り10月いっぱいで終了することです。予定していた期間が動いたり、早まったりしたわけではありません。
2019年に売電期間を終える第一陣のユーザーの売電価格は、48円/kWhと非常に高いものでしたが、この制度は実にうまく売電価格と太陽光発電システムの価格が、共に安くなっていったことが分かります。そのため売電価格が高くても安くても、売電(買取)額に関係なく、太陽光発電システムの初期費用を回収できたのです。
こうした制度の成功は、太陽光発電がほかの再生可能エネルギーの中でも、自宅に導入しやすいエネルギーだったことが関係しています。いまでは当たり前ですが、バイオマスや地中熱利用のシステムが太陽光発電ほどに広まらなかったのは(そして結果的に普及価格にならなかったことも)何となく理解できるでしょう。
2019年の売電価格は?
太陽光発電の固定価格買取は現在も進行中です。2019年度の売電額は、2019年1月9日(水)開催の調達価格等算定委員会で発表された情報(委員長案)では、太陽光発電は以下の通りとなっています。
(引用:2019.1.9発表 経産省HP「平成31年度(2019年度)以降の調達価格及び調達期間についての委員長案」)
これを見ますと2018年比で、期間は変わらず10年間。売電価格は1円から2円下落。1kWh当たり24円〜26円に落ち着いたことになります。
そしてこれが、2019年、新たに太陽光発電を始める方が、余剰電力を売電できる単価(予定)ということです。
これでもシミュレーションしてみると、標準的な家庭用のシステムなら、10年前後で初期費用を回収できる計算が成立します。固定価格買取は国の制度ですが、良くできた素晴らしい制度です。
「出力制御」「ダブル発電」とは
またこの表を見ますと「出力制御」「ダブル発電」という文言があります。知っている方もいるでしょうが、一応簡単に言葉の意味について触れておきましょう。
出力制御とは
「出力制御」とは、電力の供給量が需用量を超えて電気が余る場合に取られる方法で、電力会社が発電設備の出力を調整します。この仕組みを「出力制御」といいます。
「出力制御」は太陽光発電設備にも及び、「出力制御」が掛かると売電もできなくなります。しかし「出力制御」の実施には順番が決まっており、家庭用の標準的なシステムで「出力制御」が及ぶことはまずありません。
ダブル発電とは
「ダブル発電」とは、太陽光発電の売電量を押し上げする仕組みのこと。蓄電池・エネファームなどの蓄エネ・創エネ機器を太陽光と併用する場合に「ダブル発電」という言葉が使われます。
例えば夜間に蓄電池で溜めた電気を昼間に使用すると、太陽光発電で発電した電気を使わずに済みます。そこで使わずに済んだ電力は売電され、結果的に売電量が増えることになります。「ダブル発電」は、純粋に太陽光発電だけで発電したわけではありません。
本当の「2019年問題」とは
この章の最後に、本当の「2019年問題」について少し考えてみましょう。
2011年、余剰電力買取制度のさなかに、東日本大震災が勃発したことは記憶に新しい方も多いでしょう。そしてこの出来事以降、私たちの電気料金は、現在まで格段に上昇を続けています。
(太陽光発電設備を入れている家庭は、この電気料金のじわじわとした値上りに、さほど気付いていないかもしれません)
本当の「2019年問題」は、売電期間が予定通り打ち切られることではありません。それより本当の問題は、増え続ける電気代や再エネ発電賦課金に誰も「ストップ」と叫ばないことです。これを機会に、上昇し続ける電気代や再エネ発電賦課金に疑問を持つことも必要です。
「2019年問題」の3つの対策
固定価格買取制度後の太陽光発電はこれから順次、毎年増えていきます。そのため今までの売電とは違う、何らかの対策が必要です。
これについては、政府も制度が終了したから「それで終わり」というわけではありません。経済産業省・資源エネルギー庁が「2019年問題」対策の一環として、ホームページ内に新しく専用ページを開設しました。各電力会社も4月から6月にかけて、新しい対策や方針をHP上で告知する予定です。
こうした状況を総合すると、売電に代わる新たな対策は、太陽光発電でつくった自前の電気を自家消費するという流れが、いまのところ濃厚ではないでしょうか。以下にその対策の一部を紹介しておきます。
現在の売電先の電力会社に売電を続ける
「現在の売電先の電力会社に売電を続ける」というと、制度終了後も電力会社は売電を受け入れてくれるのかと思うかもしれません。しかし多くの電力会社の見解では、これまでと同じスタイルで売電を受け入れる見込みは極めて少ない可能性のようです。
ただ新しい対策として、P2Pプラットフォーム事業による電力取引は、ある程度模索しているようです。
P2P電力取引とは、ブロックチェーン技術を使う仕組み電力取引に応用したもので、これが可能になれば太陽光発電を所有するすべての家庭に、余剰電力を収入に変えられるメリットがあります。
P2P電力取引は余剰電力を近隣の誰かに手軽に売れるので、蓄電池を持たない家庭でも簡単に売電が可能です。またP2P電力取引は再エネ賦課金の負担も減少します。そのため、ある意味では理想的な電力取引です。
日本の電力会社がP2P電力取引を扱えるようになるには、ある程度の時間が必要です。しかし東京電力と関西電力では、料金的な実証研究がすでに進んでいるようです。実現が待ち遠しい電力取引のひとつです。
新電力・PPSに売電先を変更する
また売電先を新電力(PPS)に変更することも、現在模索されています。有名なところでは、経済産業省・資源エネルギー庁の専用ページでも紹介されている、茨城県水戸市の「スマート電力」です。「スマート電力」の単価は10円ということです。
実質無料でつくりだされた電力が10円でも買取ってくれるのですから、立派な収益です。ただ、まだ名乗りを上げているのは1社だけですから、競争力という点ではこれからです。
ただし需要が増えていくと、売電先は増えるはずです。新電力の動きからも目が離せません。
卒FIT後に太陽光発電の電力を買い取る業者一覧
蓄電池を導入し自家消費型にシフトする
3つ目は政府も注目している自家消費型へのシフトです。また「Feed-In Tariff」を経験済みの諸外国でも、自家消費型への移行がもっとも注目されていました。
売電しても高くて10円か11円ですから、経済的観点からも自家消費への転換がいちばん濃厚です。
なお自家消費型にシフトする場合、必須ではありませんが、蓄電池を導入しておくと色々な応用が利きます。余裕があれば導入を検討してみれば良いでしょう。
蓄電池の導入を検討の方はこちらのサイトもご覧ください。
蓄電池の価格比較・無料見積もりサイト「エコ発蓄電池」エコキュート(ヒートポンプ給湯機)の昼間利用
また太陽光発電との相性が良いことでも知られているのが、エコキュート(ヒートポンプ給湯機)の昼間利用で、これも自家消費型の利用のひとつです
エコキュート(ヒートポンプ給湯機)は時間帯別電力契約などで、通常深夜にヒートポンプの仕組みを使ってお湯を効率良く沸かします。しかし太陽光発電を自家消費するのなら、日中から更に安い電気を使用して給湯できます。
これをAIの力を借り、HEMSなどで明日の天気までを予測すれば、より効率良く住宅の給湯をコントロールできます。
自家消費は最も原始的な太陽光の使い方ですが、電気代が高騰を続ける限り、自家消費がいちばん効果的な使い方であることは間違いありません。
まとめ
あらためて固定価格買取制度を追ってみますと、費用の負担など改善する余地は確かにありますが、太陽光発電システムを普及する価格に無事落ち着かせたことは変意義深いと感じています。
ただ売電期間が終了することで、再エネ機器の本当の実力が試されます。太陽光システムが、これからも適正な発展を遂げることを願っています。