「大胆な投資促進税制」による蓄電池の優遇措置【2026年度(令和8年度)】生産・導入別に解説
公開日:2026/02/03 | | カテゴリ:系統用蓄電池・蓄電池投資に関して
2026年度(令和8年度)税制改正で注目される「大胆な投資促進税制( 特定生産性向上設備等投資促進税制)」は、国の経済安全保障やグリーン・トランスフォーメーション(GX)を推進する重要な施策です。
この記事では、蓄電池に関連する税優遇措置について、生産する側の「生産者」と、導入・設置する側の「導入者」それぞれの視点から解説します。
生産量に応じた新しい税額控除や、中小企業が活用できる即時償却など、自社の状況に合わせた最適な制度選択のポイントを明らかにします。
目次
2026年度(令和8年度)税制改正の目玉「大胆な投資促進税制( 特定生産性向上設備等投資促進税制)」とは
「大胆な投資促進税制( 特定生産性向上設備等投資促進税制)」とは、経済安全保障上重要な製品の国内生産を促すために新設された「戦略分野国内生産促進税制」などを指す通称です。
従来の設備投資に対する一度きりの減税とは異なり、製品の生産・販売量に応じて長期間にわたり税額控除を受けられる点が大きな特徴です。
この制度は、蓄電池のような戦略分野への国内投資を活性化させ、サプライチェーンの強靭化と産業競争力の向上を目指すものであり、企業の立場によって適用される制度が異なります。
蓄電池の国内投資を後押しする国の新しい税優遇制度
この税優遇制度は、特定の国や地域に生産が集中している戦略上重要な物資の供給網を、国内に確保することを主な目的としています。
特に蓄電池は、電気自動車(EV)の普及や再生可能エネルギーの安定供給に不可欠であり、経済安全保障と脱炭素化の両面から極めて重要な製品と位置づけられています。
そのため、国は従来の設備投資減税から一歩踏み込み、生産・販売量に連動した税額控除という形で、企業の継続的な国内生産を強力に後押しするインセンティブを設計しました。
これにより、初期投資だけでなく、量産化後の事業運営コストの負担軽減も図られます。
生産者向け・導入者向けで適用される制度が異なる
「大胆な投資促進税制( 特定生産性向上設備等投資促進税制)」という言葉は、複数の制度を内包しており、企業の立場によって利用するべき制度は異なります。
蓄電池を国内で製造する「生産者」が対象となるのは、新たに創設された「戦略分野国内生産促進税制」です。
この制度は、生産量に応じて税額が控除される仕組みが特徴です。
一方、自社工場やオフィスに蓄電池を設置する「導入者」は、既存の「中小企業経営強化税制」や「カーボンニュートラル(CN)投資促進税制」を活用することになります。
これらは、設備の取得価額に対して即時償却や税額控除を適用するもので、初期投資の負担を軽減する効果があります。
【生産者向け】戦略分野国内生産促進税制で受けられる蓄電池への優遇措置

蓄電池を国内で生産する事業者向けに新設された「戦略分野国内生産促進税制」は、これまでの税制とは一線を画す画期的な優遇措置です。
この制度の最大の特徴は、設備投資額ではなく、対象製品の生産・販売量に応じて、事業適応計画の認定から最大10年間という長期にわたって法人税の税額控除が受けられる点にあります。
ここでは、制度の具体的な仕組みや対象となる蓄電池の品目、そして適用を受けるために必要な手続きについて詳しく解説します。
生産・販売量に応じて法人税が最大10年間控除される仕組み
本制度では、対象となる蓄電池の生産・販売数量に、国が定めた単位あたりの控除単価を乗じた金額が、法人税額から直接控除されます。
つまり、生産すればするほど減税メリットが大きくなる仕組みです。
控除期間は、事業適応計画が認定された日から10年以内の事業年度とされており、長期的な生産計画を税制面から支援します。
ただし、無制限に控除が認められるわけではなく、各事業年度における控除額の上限は、原則としてその年度の法人税額の40%と定められています。
これにより、大規模な生産を行う企業は、継続的に大きな税負担軽減効果を享受できます。
税制優遇の対象となる蓄電池の具体的な品目
税制優遇の対象となるのは、産業競争力強化法で定められた「特定重要物資」に該当する蓄電池です。
具体的には、電気自動車(EV)に搭載される高性能なリチウムイオン蓄電池や、再生可能エネルギーの出力変動を吸収するための電力系統用大型蓄電池などが想定されています。
ただし、あらゆる蓄電池が自動的に対象となるわけではありません。
国のエネルギー政策や産業戦略に基づき、サプライチェーンの強靭化に特に貢献すると認められる製品が指定されます。
自社で生産する蓄電池が対象品目に該当するかどうかは、経済産業省が公表する最新情報を確認する必要があります。
事業適応計画の認定を受けるための申請手続き
税制優遇を受けるためには、まず事業者が生産計画や投資計画などを詳細に記した「事業適応計画」を作成し、主務大臣(蓄電池の場合は経済産業大臣)の認定を受けなくてはなりません。
この計画書には、生産する製品の仕様、目標とする生産量、設備の導入計画、資金調達の方法、そして国内サプライチェーン強化への貢献度などを具体的に記述します。
審査では、計画の実現可能性や革新性、政策目標への合致度などが厳しく評価されます。
認定を得るには、国の戦略に沿った質の高い事業計画が求められるため、申請準備は慎重に進めることが重要です。
制度が適用される期間は2027年3月31日まで
戦略分野国内生産促進税制は恒久的な制度ではなく、時限措置として設けられています。
この税制優遇の適用を受けるためには、2027年3月31日までの期間内に事業適応計画の認定を取得することが必須条件です。
この期限内に認定さえ受ければ、その後の生産・販売活動に対して、計画開始から最大10年間にわたり税額控除が適用されます。
大規模な投資計画には策定から申請、審査、認定までに相応の時間を要するため、本制度の活用を検討している事業者は、この期限を念頭に置き、速やかに準備に着手することが求められます。
【導入者向け】蓄電池設置に活用できる税制優遇措置

蓄電池を自社の事業所に導入・設置する側の企業も、税制優遇を活用して投資負担を軽減することが可能です。
「生産者向け」のような新しい制度ではありませんが、既存の税制、特に中小企業を対象とした支援策が充実しています。
具体的には「中小企業経営強化税制」や「カーボンニュートラル投資促進税制」が主な選択肢となります。
これらの制度を利用することで、取得費用を一括で経費計上する即時償却や、法人税額を直接減らす税額控除といったメリットを享受できます。
中小企業経営強化税制で即時償却または税額控除を適用する方法
中小企業者が、経営力向上に資する設備として蓄電池を導入する際に活用できる代表的な制度です。
事前に「経営力向上計画」を作成し、国の認定を受けることで、取得した蓄電池の費用について「即時償却」または「10%の税額控除(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)」のいずれか有利な方を選択適用できます。
即時償却は、取得した年度の課税所得を大幅に圧縮できるため、利益が多く出ている場合に有効です。
一方、税額控除は算出された法人税額から直接差し引くため、安定した節税効果が見込めます。
どちらを選択するかは、企業の利益状況や財務戦略によって判断します。
脱炭素化を目指すならカーボンニュートラル投資促進税制
企業の脱炭素に向けた取り組みを支援する税制であり、2027年3月31日までの6年間の時限措置です。
再生可能エネルギー由来の電力を有効活用するための蓄電池は、この制度の対象となり得ます。
適用を受けるには、エネルギー利用の効率化や非化石エネルギーへの転換に関する「事業適応計画」を策定し、主務大臣の認定を受ける必要があります。
認定されると、取得価額の最大10%の税額控除、または50%の特別償却のいずれかを選択できます。
中小企業経営強化税制よりも優遇率が高いケースがありますが、計画認定の要件がより専門的になるため、脱炭素化への具体的な貢献度を示すことが求められます。
太陽光発電と同時設置で節税効果を高めるポイント
蓄電池は、自家消費型の太陽光発電設備と同時に導入することで、税制上のメリットをさらに高めることが可能です。
中小企業経営強化税制などの制度は、太陽光発電設備と蓄電池の両方を対象にできる場合があります。
両設備を同時に導入して一括で計画認定を受ければ、投資総額に対して即時償却や税額控除を適用できるため、個別に導入するよりも節税効果が大きくなります。
また、日中に発電した電力を蓄電池に貯めて夜間や悪天候時に使用することで、電気料金の削減と税負担の軽減を同時に実現し、企業のキャッシュフローを大きく改善させることが期待できます。
大胆な投資促進税制と蓄電池に関するよくある質問
ここまで、蓄電池の生産者と導入者、それぞれの立場から活用できる税制優遇措置を解説してきました。
しかし、実際の適用を検討する上では、より細かな疑問点が生じることがあります。
ここでは、対象者の範囲、中古品の扱い、そして補助金との関係性など、実務担当者から特に多く寄せられる質問について、Q&A形式で簡潔に回答します。
これにより、制度利用に関する不明点を解消し、より具体的な検討を進めるための一助とします。
Q. 個人事業主も税制優遇の対象になりますか?
青色申告を行っている個人事業主であれば、蓄電池の導入に「中小企業経営強化税制」を適用できます。
経営力向上計画の認定を受けることで、即時償却または税額控除のいずれかの優遇措置を選択可能です。
ただし、生産者向けの「戦略分野国内生産促進税制」は法人を対象とした制度であり、個人事業主は対象外となります。
Q. 中古の蓄電池を導入した場合も税制は適用されますか?
原則として、中古の蓄電池は税制優遇の対象にはなりません。
中小企業経営強化税制やカーボンニュートラル投資促進税制といった制度は、新品の設備を取得することを適用要件としています。
中古品や貸与品はこれらの要件を満たさないため、即時償却や税額控除を受けることはできませんので注意が必要です。
Q. 国や自治体の補助金と税制優遇は併用できますか?
原則として併用は可能ですが、税制優遇を計算する際の取得価額が変わる点に注意が必要です。
国や自治体から補助金の交付を受けて蓄電池を取得した場合、その補助金額を取得価額から差し引いた残額が、即時償却や税額控除の計算の基礎となります。
したがって、補助金と税制優遇を組み合わせることで、自己資金の負担を大きく軽減できます。
まとめ
2026年度(令和8年度)から本格化する大胆な投資促進税制は、蓄電池に関わる企業にとって大きな機会となります。
蓄電池を生産する企業は「戦略分野国内生産促進税制」を活用し、生産量に応じた最大10年間の税額控除を受けることが可能です。
一方、蓄電池を導入する企業は「中小企業経営強化税制」などを利用して、即時償却や税額控除により初期投資の負担を軽減できます。
生産者向けの制度は2027年3月末までに事業適応計画の認定を受ける必要があるため、早期の準備が不可欠です。
いずれの制度も計画認定などの手続きが伴うため、自社の事業戦略と照らし合わせ、専門家とも相談しながら活用を検討することが重要です。