太陽光発電の中古物件を売却・購入する際にかかる税務について
太陽光発電などの再生可能エネルギーを固定価額で買い取る、FIT法が開始されて5年。
買取価格(売電価格)の減少やFIT法の改正などさまざまな理由で、所有している太陽光発電所を売却する方がいる一方、中古の太陽光発電所を購入する方も増えつつあります。
そんな中、気になるのが税務や税金のことです。今回は、太陽光発電所の売却に際してどのような税務が発生するか、また、中古の太陽光発電所を購入する場合、どのような節税効果があるのかを解説します。
太陽光発電所の売却に関する税務
太陽光発電所を売却する場合、重要になるのが売却時点における太陽光発電所の価値です。売却時の価値より高く売ればその分利益が出て税金がかかり、低く売れば損が出ます。
「売却時の価値」とは、簡単に言うと
「購入した金額-売却時までに減少した価値」
です。
「売却時まで減少した価値」は、「減価償却費」を計算することで求めることができます。
そのため、まずは減価償却費の計算方法について理解する必要があります。
太陽光発電所の減価償却
太陽光発電所設備などの固定資産を購入したときは原則、購入金額全額を一括で経費にすることができません。
固定資産は購入した年だけでなく、その後も長い期間収益を生み続けるので、購入金額もそれに合わせて毎年少しずつ経費にしようというのが「減価償却」であり、この経費を「減価償却費」といいます。
減価償却費として経費に算入する年数のことを「耐用年数」といい、太陽光発電所設備の場合は通常17年です。
減価償却費の方法には定額法と定率法があります。
定額法は毎年同じ金額を減価償却費にする方法、定率法は1年目の減価償却費がいちばん大きく、以後少しずつ減価償却費の額が小さくなっていく方法です。通常、法人は定率法、個人は定額法で計算します。
太陽光発電所設備の場合、定額法と定率法のほかに特例として、購入した年に購入金額の全額を減価償却できる「即時償却(現在は廃止)」や、普通の減価償却にさらに購入価額の30%の減価償却費を上乗せできる「特別償却」などが認められています。これは、太陽光設備をできるだけ買いやすくし、普及させるために政府が行った政策の一環です。
法人が売却した場合の税務
法人は通常、その法人が生み出した利益をすべて合算したものに税金がかかります。
太陽光発電所の売却価格が「購入した金額-今までの減価償却費の累計」よりも高ければ売却益が出て、他の利益と売却益をプラスしたものに税金がかかります。逆に低ければ売却損が出て、他の利益から売却損をマイナスしたものに税金がかかります。
では、購入年度で即時償却や特別償却を使っている場合はどうなるのでしょうか。
即時償却や特別償却は、太陽光設備をできるだけ買いやすくし、普及させるための政府の政策なので、売却するからといって過去にさかのぼって即時償却や特別償却をなくすということはありません。
そのため、売却するときの価値がかなり低くなります。
とくに即時償却の場合は、全額減価償却をしているので、売却時の価値は0円となり、売却価額すべてが利益になります。購入したときに購入金額が全額経費、売却したときに売却金額が全額利益になり、購入時に得た節税効果は売却時点で相殺されてしまいます。
個人が売却した場合の税務
個人の場合も、税制上の特例を受けている場合と受けていない場合における税金の計算方法や、留意すべき点は法人と同じです。
個人が法人と異なるのは、累進課税といって所得が高ければ高いほど税率も高くなる点です。
所得税だけでも最大45%の税率になるので、売却益が多く出る場合は注意が必要です。
また、固定資産の売却は事業の所得と分けられて「譲渡所得」になります。
太陽光設備以外に事業に使った固定資産を売却した場合などは、計算が複雑になることもあるので、こちらも注意してください。
稼働済中古太陽光発電所を売却する際は複数の業者から査定を受けること
稼働済中古太陽光発電所を売却する際、あらかじめ税金の知識を持っておくことでキャピタルゲインを多く受け取ることが可能ですが、当然高値で査定会社から買い取ってもらうことも重要です。
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太陽光発電所の中古取得に関する税務
太陽光発電所の中古取得に関する税務は、売却の場合と違い、法人と個人で大きな違いはありません。
太陽光発電設備を中古で購入した場合も、購入年度で購入金額を全額経費にすることはできませんので複数年にわたって少しずつ経費にしていく必要があります。
新品購入と異なるところは、その年数が短いことです。
新品の場合は17年にわたって経費にしますが、中古取得の場合は、17年から前の所有者が使っていた期間(経過期間)を差し引いた年数で経費にしていきます。
厳密には、次の計算式で計算した年数で経費にします。
(17年-経過年数)+(経過年数×20%)
例えば10年経過している場合は、(17年-10年)+(10年×20%)=9年です。
では、新品と中古では購入1年目で経費になる金額がどれぐらい違うのか。以下の例で具体的に見ていきましょう。
購入した初年度の経費を比較
例)1,000万円の太陽光設備を購入。償却方法は定率法。1年間(12ヶ月)償却。
減価償却費は、耐用年数によってあらかじめ決められた償却率を使って計算します。
耐用年数ごとの償却率はこちらを参考にしてください。
■減価償却資産の償却率表
・新品取得の場合
耐用年数17年の場合、償却率は0.118となるので、経費となる金額は以下の通りになります。
1,000万円×0.118=118万円
・中古取得で10年経過のものを購入の場合
耐用年数9年(上記の計算式を参照)の場合、償却率は0.222となります。
同様に計算すると、以下のようになります。
1,000万円×0.222=222万円
同じ資金の場合、新品取得と中古取得では、中古取得の方が104万円も多く経費にすることができるので、節税効果が高いことがわかります。
ここ数年で太陽光発電の普及が進んだこともあり、今後は新品取得に認められている特別償却などの特例が徐々になくなっていく可能性が大いにあります。そのため、中古取得による節税を考えておいた方が良いでしょう。
また、初年度については定額法に比べて定率法のほうが経費になる金額が多くなります。基本的に法人は定率法ですが、個人でもあらかじめ税務署に届け出を出して、認められれば定率法にすることも可能です。一度検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
今後、世の中の流れとともに太陽光発電をめぐる政策にもさまざまな変化が起こる可能性があります。
そんな中、太陽光発電所の売却、中古取得が今まで以上に活発になることも予想されますので、太陽光発電所の売却、中古取得の税務をしっかり把握し、賢く節税しましょう。