【ソーラー税理士が語る】売却時期の違いで〇百万の差が!?稼働済中古太陽光発電所の売却時に掛かる税金と売る時に注意したい2つのこと
こんにちは。ソーラー税理士の鵜之沢です。
メガ発さんにコラムで登場させて頂くのは久々です。
2012年に固定価格買取制度が開始してから早9年、早い段階で太陽光への投資をしていた人からすると、20年のFIT期間の折り返し地点が近付いてきました。
私自身も一番最初の太陽光は2013年に購入し、税制メリット等も使いながら、初期投資分は既に回収しました。借入の残債は残っていますが、パワコンの寿命もそう長くはないでしょうし、高く売れるならば、売却してみてもいいかな?などと思っています。
そこで、今回は個人で太陽光を保有している方向けに、売却に関する注意点をいくつかまとめさせて頂きました。ご自身の状況によっては税制メリットを受けられる可能性がありますので、現状での売却予定がない方も是非ご覧下さい!!
売却時にかかってくる税金は?
太陽光発電設備を売却した際は主に以下の税額が発生します。
・所得税 (売却益-特別控除50万)×所得税率
※特別控除は年間で50万が上限です。
従って2物件譲渡したとしても100万控除できるわけではありません。また、所得税率は各個人の他の所得状況(給与所得や事業所得、不動産所得等)に応じて5%~45%となります。
・住民税(売却益-特別控除50万)×10%
・消費税売却価格(税抜金額)×10%
※消費税課税事業者の時のみ納税が必要となります。
売却にあたって、仲介手数料等の経費が発生した場合は、その経費の支払いに係る消費税は納税額から控除出来ます。
売却益の計算方法
所得税、住民税は「売却益-特別控除50万」に対して課税されます。この場合の売却益の計算方法は以下の通りです。
譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
一つ一つの要素について簡単に解説したいと思います。
譲渡価格
契約書における売買金額です。原則としては、消費税課税事業者の場合は税抜金額で、消費税免税事業者の場合は税込金額で計算します。
取得費
太陽光発電設備の簿価(取得価格から今までの減価償却費を控除した金額)です。確定申告書のうち、「減価償却費の計算」の下記の赤枠の部分を見れば昨年末時点の簿価がわかります。
譲渡費用
仲介手数料等の経費が発生していれば、譲渡費用として計算に含めて下さい。こちらも譲渡価格と同様に、消費税課税事業者の場合は税抜金額で、消費税免税事業者の場合は税込金額で計算します。
なお、所得税・住民税は売却「益」に対して課税されますが、売却「損」の場合は、当然に税金は発生しませんので念のためお伝えしておきます。
即時償却した方や定率法で減価償却している方必見!長期譲渡所得の効果とは?
過去に太陽光で即時償却した方や定率法で減価償却を実施し、税金の還付を受けている方にとっては、売電収入に対して費用計上出来る減価償却費がない(または少ない)ため、所得税の負担が大きくなりがちです。
即時償却や定率法は将来の減価償却費を先取りして費用計上しており、過去に還付を受けているので、現在の税負担が大きいのはやむを得ないでしょう。この税負担を減らすために売却を検討する方も多くいらっしゃいます。
ただ、今まで見てきた通り、売却益にも税金が発生します。特に即時償却した方は太陽光の簿価がゼロになっているでしょうから、譲渡価格にそのまま課税されてしまいます。
定率法で減価償却している方も、簿価はゼロまではいかなくとも、かなり小さい金額になっており、多額の売却益が発生するでしょう。
そういった方に特におすすめなのは長期譲渡所得を活用することです。長期譲渡所得とはざっくり言うと、「所有期間5年超の太陽光を譲渡した場合は、税負担が半分になる」というものです。
下記の計算結果に対して所得税、住民税が課税されます。
(売却益-特別控除50万)×1/2
税率を掛ける前の課税所得を1/2できるので、税負担が約半分となります。
なお、長期譲渡所得の条件である所有期間5年超ですが、不動産の譲渡の場合も長期譲渡所得の特例があり、要件としては譲渡した年の1/1時点での所有期間が5年超である必要があります。
ただ、太陽光については1/1時点ではなく、譲渡日時点での所有期間が5年超ならば、長期譲渡所得を適用できます。
消費税を納めないで済む方法とは?
長期譲渡所得は所得税・住民税の節税方法ですが、消費税にも節税の方法があります。それは消費税の免税事業者(もしくは簡易課税)の期間中に譲渡するというものです。
要件:2年前の課税売上 | 消費税納税額 | 必要な届出 | インボイス発行 | |
---|---|---|---|---|
免税事業者 | 1,000万以下 | 消費税納税なし ※インボイス開始後は益税なし | 消費税課税事業者選択不適用届出書 | 不可 |
簡易課税 | 1,000万超5,000万以下 | 譲渡価格に係る消費税×40% | 消費税簡易課税制度選択届出書 | 可 |
原則課税 | 5,000万超 | 譲渡価格に係る消費税全額 | なし | 可 |
以下、それぞれの計算方法の簡単な説明です。
【免税事業者】
2年前の課税売上(売電収入)の金額が1,000万以下の場合になることができ、消費税の納税は不要となります。 消費税還付のためにあえて課税事業者となっている場合は、「課税事業者選択不適用届出書」の提出が必要になることがあります。
なお、消費税の納税が必要ない分、売却益の計算における「譲渡価格」は税込金額で計算する必要があり、所得税・住民税の負担が大きくなります。ただ、消費税の納税がなくなる方が圧倒的にメリットは大きいです。
【簡易課税】
1,000万超5,000万以下の場合は、消費税の納税は必要ですが、簡易課税を選択することによって譲渡価格に係る消費税の40%のみの納税でOKとなります。
例えば、2,000万の太陽光の譲渡を行う場合、以下のように納税額を減らすことができます。
原則課税(通常の計算方法)
2,000万×10%=200万の納税
簡易課税
2,000万×10%×40%=80万の納税
簡易課税の適用を受けたい場合には、前年末までに「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要となります。
【原則課税】
5,000万超となってしまうと、原則課税となり、譲渡価格に係る消費税の全額の納税となります。この場合は、特に節税策はなく、そのまま消費税を納めるしかありません。
※太陽光の消費税還付を受けてから3年間は、2年前の課税売上(売電収入)に関わらず、原則課税が強制適用となりますので、ご注意下さい。
税制メリット活用で〇百万オトクになる?税額計算の実例
これまで紹介した税制メリットを活用してどのくらいオトクになるのか?皆さん気になるところだと思います。以下の前提で実際に計算してみました。
所得税率45%(住民税と合わせると55%)の高額所得者が、即時償却済みの簿価ゼロの太陽光を譲渡価格2,000万(税抜)で譲渡した場合
【取得から5年以内の譲渡、消費税課税事業者の場合】
・所得税、住民税
(譲渡価格2,000万-特別控除50万)×55%=1,072万(端数切捨)
・消費税
2,000万×10%=200万
・合計税額
1,072.5万+200万=1,272万
【取得から5年超の譲渡、消費税免税事業者の場合】
・所得税、住民税
(譲渡価格2,200万-特別控除50万)×1/2×55%=591万(端数切捨)
※消費税課税事業者なので消費税の納税はありません。その代わり、譲渡価格が税込金額である2,200万となっています。
両者の差額は1,272万-591万=681万もあり、倍以上の開きがあります。いかに税制メリットを活用することで、税金を低く抑えられるかがわかるかと思います。
まとめ
売却時期を下記の通りとするだけで、税金が約半分となる可能性があります。
・取得から5年超
・消費税免税事業者の期間
特に即時償却した方や定率法で減価償却しているような、売却益が多く出る方は、税制上非常に有利になります。一度お持ちの稼動済中古太陽光発電所の一括査定をして頂き、その結果を基に、今後長期保有した場合の税負担と売却した場合の税負担を比べて検討して頂くのもよいかと思います。
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プロフィール
税理士法人ASC
鵜之沢 巧
早稲田大学卒。自らも太陽光発電への投資を行っており、その経験を踏まえソーラー税理士の発電応援サイトを運営。太陽光発電事業を営む法人・個人を多く持ち、償却や消費税還付等の太陽光発電投資を有利に進めるためのアドバイスを日々行っている。