【Q&A】ソーラーシェアリング【よくある質問】
目次
農地を持ってませんがソーラーシェアリングはできますか?
A:ソーラーシェアリングは営農型太陽光発電と呼ばれるため農業と太陽光発電を同時におこなう必要があります。しかし農地をもっていなくてもソーラーシェアリングに取り組むことは可能です。
関わる人と役割は「土地の所有者(地主):A」「農家(耕作者):B」「発電事業者:C」の3つが必要になります。 一番わかり易く一般的な形は「土地をもっている農家さん(A)が農業をおこないながら(B)発電事業をおこなう(C)」…①というパターンです。
しかしコレ以外のケースも考えられますのでそれぞれのケースを見てみましょう。
・「地主、農家、発電事業者がそれぞれ別の方」…②
・「地主の農家さんが農業をおこなっているが、発電事業は投資家など別の方がおこなう」…③
・「地主から借りた土地で農家さんが農業と発電事業をおこなう」…④
・「地主が発電事業をおこなう土地で他の方が農業のみを行う」…⑤
以上のケースが考えられます。少しややこしくなりましたので表にしてみてみましょう。
地主:A | 耕作者:B | 発電事業者:C | |
---|---|---|---|
① | 一郎さん | 一郎さん | 一郎さん |
② | 一郎さん | 二郎さん | 三郎さん |
③ | 一郎さん | 一郎さん | 三郎さん |
④ | 一郎さん | 二郎さん | 二郎さん |
⑤ | 一郎さん | 二郎さん | 一郎さん |
①④のケースの場合、農業での収入以外に安定した利益を得られるため、農業経営を安定化させることに繋がります。 例えば、跡継ぎ問題などで後を継がれる方が「興味はあるが農業経営の自信がない…」、そんな時に農業とは別の収益があることにより前向きに検討する材料となるのではないでしょうか。
また②③④の場合、発電事業者から土地賃貸料という形で地主が収入を得ることも出来ます。
太陽光パネルで日陰になるけどソーラーシェアリングに向いてる作物は?
植物には光合成に活かせる光の強度に限界点があり(光飽和点)それ以上、光量が増えても作物の成長に影響を及ぼさないとされています。このため、遮光率35%程度までのパネルによるソーラーシェアリングあれば、ほとんどの作物の栽培に問題がないとされています。
大量の太陽光が必要な作物を陽性植物、日陰を好む作物を陰性植物と言います。 ソーラーシェアリングに最も適しているのは「半陰性植物」と「陰性植物」です。 陰性植物例)にんじん、大根、なす、ぶどう、キャベツ、いちご、きのこ類
ソーラーシェアリングによる収穫実績のある作物
大豆・ホウレンソウ・とうもろこし・さつまいも・大麦・長ネギ・スイカ・じゃがいも・蕎麦・青梗菜・ブルーベリー・里芋・落花生・ブロッコリー・ぶどう・生姜・大根・きゅうり・いちじく・ミョウガ・カブ・かぼちゃ・ゆず・椎茸・小松菜・ナス・レモン・キャベツ・トマト・デコポン・米
農業振興地域、第一種農地では太陽光発電はできないと聞いたけど?
農業振興地域は、市町村が策定する農業振興地域整備計画により相当期間(概ね10年以上)にわたり総合的に農業振興を図るとされた地域になります。このため太陽光発電のみならず農業以外の用途への利用自体が原則不許可になります。この他、甲種農地・第1種農地も同様に農業以外の利用が原則不許可です。つまりこれらの用地では農地転用が非常に困難であるということになります。
詳しくはこちらをご覧ください。
農地に野立て太陽光発電を設置するには『農地転用』の手続きが必要
しかし、2013年の農林水産省が出したソーラーシェアリングの指針により、一時転用による営農型太陽光発電・ソーラーシェアリングが広く認められるようになりました。
ソーラーシェアリングによる発電設備の設置に関しての一時転用は、太陽光パネルの支柱基礎部分について許可を得る必要があります。一時転用許可期間は3年間で、問題がない場合は再許可を受け継続することが可能です。(太陽光発電は買取期間が20年間になるため、六回の更新が必要になります。)
この他、一時転用の許可を得るためにはいくつかの条件があります。主なものは以下の通りです。
- 支柱部分が簡易な構造で容易に撤去できるもの
- 営農の適切な継続が確保できること
- 農地での単収が同地域における平均と比較して2割以上減少しないこと※
- 支柱の高さ・間隔等からみて農作業に必要な機械を効率的に利用できる空間が確保されていること
- 農地で生産された農作物の品質に著しい劣化がみられないこと
※台風や冷害等の天災など営農型発電設備の設置が原因といえない、やむを得ない事情による減少に関しては勘案される。
なお一時転用をおこなっても地目は変更されないため、固定資産税の上昇などの税制デメリットもありません。
耕作放棄地でもソーラーシェアリングは可能?
もちろん可能です。 耕作放棄地が農業振興地域や第1種農地の場合、他用途利用の農地転用が難しいため土地活用をおこなうことは非常に難しいですが、ソーラーシェアリングを利用することで営農以外の収入が確保出来るため、農地の再生が望めます。
営農型太陽光発電・ソーラーシェアリングは「作物の販売収入に加え、売電による収入が継続的に得られるため、農業者の収入拡大による農業経営のさらなる規模拡大や六次産業化の推進」を図ることを目的としているため、耕作放棄地を再生させることはソーラーシェアリングの目的の一つともいえます。
2017年3月に完成、落成式に小泉純一郎、細川護煕、菅直人の歴代3首相が列席し数多くのメディアでも取り上げられた「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」では、面積の半分以上が15年以上に渡って耕作放棄されていた農地であり、ソーラーシェアリングによる農地再生の代表的な例といえます。
市民エネルギーちば
匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所ソーラーシェアリングは土地付き太陽光発電とどう違うの?
大きな違いは営農が必要かどうかになります。ソーラーシェアリングはあくまで主役は営農であり、太陽光発電は農業経営の補助的な役割になります。そのため推奨される太陽光発電システムにも通常の土地付き太陽光発電とは異なる点がいくつかあります。
農地への日照は遮光率35%程度までなら問題がないとされていますが、農作物の成長に必要な日射量は確保する必要があります。 そのためパネル間の距離はパネル幅の2倍程度開けることが求められます。パネルの面積が広くなれば、それに比例して日の当たる場所と影になる場所の不均衡が大きくなるため、なるべく細身のパネルを用いることが望ましいとされています。
また、ソーラーシェアリングの一時転用許可を得るためには「支柱の高さ・間隔等からみて農作業に必要な機械等を効率的に利用できる空間が確保」される必要があります。そのためトラクター等の農業機械を利用する場合、2.5~3m程度の高さを確保することが多くなります。支柱の高さがある分パネルが風の影響を受けやすくなってしまいますが、細身のパネルにすることで風を受ける面積が小さくなり、強風時の影響が少なくなるというメリットもあります。
導入費用はどれくらいかかりますか?
太陽光発電設備であるパネルやパワーコンディショナー・架台などの部材価格は年々下落しています。そのため2013年の農林水産省の指針発表時よりもかなり導入価格は安くなっています。設置する場所、架台の高さ、ソーラーパネルの種類などでも費用が異なりますが、2018年現在で1kWあたりの導入コストは20万円前半~30万円程度になります。※
例えば50kWの発電設備を設置すると1,200~1,500万円程度の費用が掛かることになります。また、この規模の太陽光発電設備を遮光率30~35%になるように設置する場合、およそ1100~1300㎡の農地が必要になります。
※導入コストの他、保険やメンテナンス契約によってランニングコストが別途必要になる場合があります。
ソーラーシェアリングを始めたいけど、自己資金がない場合はどうしたらよい?
土地付き太陽光発電投資と同じく、ソーラーシェアリングも多くの方が金融機関からの融資を受けて事業を開始しています。
太陽光発電投資は固定価格買取制度という国の制度によって、FTI単価と呼ばれる売電価格・20年間の買取期間が保証されています。そのため日本政策金融公庫をはじめ、地銀・信販会社によるローンなど様々な金融機関が融資をおこなっています。
しかし一般的な太陽光発電に比べて、ソーラーシェアリングの融資は通りにくい現状があります。
1つ目の理由は「一時転用の継続の不確定性」です。
ソーラーシェアリングは一時転用許可を申請し3年ごとの更新、年1回の報告義務があります。このため営農が厳しくなった場合に発電事業も中断してしまう恐れがあり、制度で保証された20年という買取期間が不確定なものになってしまいます。
2つ目の理由は、「太陽光発電の利回りが低くなる」ことです。
一般的な太陽光発電設備とは違い支柱などを必要とするため資材費が割高になり、1kW当たりの初期投資費用が大きくなります。そのため発電量による収入が一般的な土地付き太陽光発電と同じでも、初期投資額が大きくなることは利回りの低下を意味するため、理由①と合わせて金融機関が融資に慎重にならざるを得ませんでした。
しかし、ソーラーシェアリングの案件は年々増加しており、そうしたことを背景に日本政策金融公庫や信用金庫を中心に融資を引き受ける事例は増えてきています。
また、営農型の場合のみ太陽光発電事業に融資制度をもつJAなどの金融機関もあります。
発電設備による事故、感電とかは大丈夫?
ソーラーシェアリングも太陽光発電という意味では、他の住宅用や土地付き太陽光発電と違いはなく電気工作物としての危険性は変わりません。
洪水や豪雨による浸水や太陽光パネルの破損、接続しているケーブルの断線などがトラブル事例として考えられます。太陽光パネルは光があると発電してしまうため、触ると感電する恐れがあります。
発電設備(太陽光パネル、パワーコンディショナー、キュービクル、集電箱など)が水没や浸水した場合は近づいただけで感電する恐れがありますので、特に注意してください。
こうした状況になった場合は、周囲への注意喚起とともに最寄の産業保安監督部または経済産業省に連絡する様にしてください。また、やむを得ず復旧作業をおこなう場合は素手は避けるようにし、感電対策(ゴム手袋、ゴム長靴の使用等)などによって感電リスクを低減してください。
水が引いた後であっても集電箱内部やパワーコンディショナー内部に水分が残り感電するおそれがあります。また湿気や汚損により発火する可能性がありますので、復旧作業に当たっては十分な注意を払い電気火災防止に努めてください。
事後の補償に関しては自然災害補償がありますので、施工会社などに事前に相談しておいた方が安心です。
導入した後の注意点は?
守るべき制度・ルールは2点あります。
- 太陽光発電…「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」
- 農業…「農地の一時転用許可」
太陽光発電にかかる制度、固定価格買取制度は2017年の4月に改正され、太陽光発電設備の保守・点検が義務化されました。
固定価格買取制度創設により新規参入した発電事業者の中には専門的な知識が不足したまま事業を開始し、安全性の確保や発電能力の維持のための十分な対策が取られていないため、防災・環境上の懸念等をめぐり地域住民との関係が悪化する等、種々の問題が顕在化しました。こうしたことから今回の改正では「適切に点検・保守をおこない発電量の維持に努めること」が求められており、ソーラーシェアリングも例外ではありません。
メンテナンスに関しては施工会社に相談するか、もしくはメンテナンス専門業者に依頼するのが一般的です。
「農業振興地域、第一種農地では太陽光発電はできないと聞いたけど?」でも述べた様に、一時転用の許可は3年ごとに再許可を得る必要があります。再許可の条件は以下となります。
・農地での単収が同地域における平均と比較して2割以上減少しないこと。
・農地で生産された農作物の品質に著しい劣化がみられないこと。
また、年に一度収穫量を農業委員会に報告する義務がありますので、こちらも忘れない様にしましょう。