太陽光発電の売電価格はどのように決まる?なぜ下がる?徹底解説
太陽光発電投資の物件を選定する中でも重要な項目である「売電価格(買取価格)」。 2012年に固定価格買取制度が始まって以来、毎年3~5円程度下落を続けています。
ここでは「そもそも売電価格は何を基に決めているのか?」また「なぜ毎年下落するのか」をみてみたいと思います。
2019年度の売電価格に関して
2019年度の売電価格は14円!太陽光発電における売電価格の推移と今後
目次
売電価格?買取価格?売電単価?買取単価?FIT単価?調達価格?
固定価格買取制度における、電力会社が買い取る際の1kWhあたりの単価は様々な呼び方がありますが、どれも同じものを指しています。
- 電力会社からみた場合は電気の買い手目線:買取価格・買取単価
- 発電事業者からみた場合は売り手目線:売電価格・売電単価
- 固定価格買取制度(FIT)によって決められる単価:FIT単価
- 調達価格等算定委員会の意見を聴き経済産業大臣が定める:調達価格
売電価格は月間や年間など、一定期間売電した総収益を指す場合もありますが、多くの場合は単価のことを指して使われます。
誰が売電価格を決めるの?
太陽光発電・バイオマス・風力発電など再生可能エネルギー源の種別や、大型・小型などの規模、設置形態に応じて関係大臣(農林水産大臣、国土交通大臣、環境大臣、消費者問題担当大臣)に協議や意見聴取を行うとともに、調達価格等算定委員会の意見を聴き、経済産業大臣が決定します。
売電価格はどう決まる?
再生可能エネルギー特措法によって定められた固定価格買取制度が始まった当初は、売電価格を高単価に設定することで太陽光発電の導入を促す役割がありました。 では、そもそもこの単価がどのように決められているのかみてみましょう。
固定価格買取制度についての詳細
固定価格買取制度(FIT制度)とはどんな制度?太陽光発電とはどんな関係?
10kW以上と1000kW以上の太陽光発電システム設置費用の差額から決定
2016年度における太陽光発電の売電価格に関して議論する「調達価格等算定委員会(第21回)」の資料によると、売電価格は”効率的に事業を実施した案件の水準を採用するため、最新期の1,000kW以上のシステム費用(設置費用)の中央値を採用し、翌年度の買取価格(売電価格)を決定”とあります。
少々分かりづらいので、平成24年から平成27年の設置費用の中央値推移をグラフ化した下記引用画像をご覧ください。
システム費用の想定値とそれぞれの年の10kW以上の分布図
2012年は上位5~6%、2013年は上位9%、2014年は上位19~20%、2015年は上位29%に相当。青線:10kW以上全体の太陽光発電システム設置費用の中央値
赤線:1000kW以上の太陽光発電システム設置費用の中央値(出典:経済産業省「資料1 前回のご指摘事項について」)
太陽光発電のシステム費用・設置費用は規模が大きくなるにつれてパネル・パワコン・架台などの大量仕入れなどにより価格を抑えることができます。 そのため大規模な太陽光発電(1,000kW以上)の設置費用を効率化された費用とみなし、これを目標値とするように売電価格の調整がされてきました。
- 太陽光パネル
- パワコン
- 架台
- 工事費
- その他(接続費用2%、諸経費・業者利益含む)
※個人で太陽光発電事業を開始する場合、土地の仕入れ・資金調達・電力会社、経産省への申請などを自分で行う必要があります。 そのため多くの方は土地と太陽光発電所がセットになった土地付き太陽光発電所を購入されると思います。 このことから、本記事で出てくる太陽光発電システム設置費用(システム費用)は「土地付き太陽光発電の物件価格」と置き換えて考えても問題がないと思います。
土地付き太陽光発電について詳しく
土地付き太陽光発電とはどんな投資?特徴とメリット・デメリットを徹底解説!
売電価格が下がる理由と推移について
売電価格の下がる(下げる)大きな目的は、コストが効率化された適正な市場を形成するためといえます。
固定価格買取制度が始まった当初は市場ができておらず、相場感もわからないため高コストの太陽光発電所も多く設置され、平成24年(2012年)は10kW以上と1000kW以上太陽光発電の設置費用中央値の差額は大きく開いていました。
しかし、年度を経て普及が進むことで市場が形成され市場原理が働き、大きく分散していた10kW以上全体の太陽光発電システム設置費用は低廉化し、10kW以上と1000kW以上の中央値の差額が2012年度には13.1万円/kWだったものが、2015年度には3.8万円/kWまで縮まりました。
平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | |
---|---|---|---|---|
10kW以上のシステム設置費用 中央値(万円/kW) |
43 | 39 | 35 | 33 |
1000kW以上のシステム設置費用 中央値(万円/kW) |
29.9 | 29.4 | 30 | 29.2 |
中央値の差額(万円/kW) | 13.1 | 9.6 | 5.0 | 3.8 |
システム設置費用想定値(万円/kW) | 32.5 | 28.0 | 27.5 | 29.0 |
この様に大規模な太陽光発電所の設置費用を目標とし売電単価を下げることで、10kW以上全体の太陽光発電設置費用を下げることを主導していたことがわかります。
なぜ売電価格が下がるのか?2016年度に議論されていた予想価格を参考に更に詳しく
上述したように、売電価格は太陽光発電所の設置費用・コストと連動し、低価格化を先導するように決定しています。
売電価格の現状維持では、”コスト削減の促進”が図れず、また、大幅な価格下落は”持続的な導入量の確保”が困難になるとみられており、太陽光発電の導入量と目標値を鑑みて決定されます。
以下は平成27年に平成28年度の価格を決める際に議論されていた内容です。詳しくみてみましょう。
1-1.10kW以上の太陽光発電のシステム費用水準に関する分析
(出典:経済産業省「資料1 前回のご指摘事項について」)
先程の表1)に設置費用中央値の推移に売電価格を加えたものをみてみましょう。
平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | |
---|---|---|---|---|
10kW以上のシステム設置費用 中央値(万円/kW) |
43 | 39 | 35 | 33 |
1000kW以上のシステム設置費用 中央値(万円/kW) |
29.9 | 29.4 | 30 | 29.2 |
中央値の差額(万円/kW) | 13.1 | 9.6 | 5.0 | 3.8 |
システム設置費用想定値(万円/kW) | 32.5 | 28.0 | 27.5 | 29.0 |
売電単価 | 40円 | 36円 | 32円 | 29円(6月まで)・27円(7月から) |
このようにしてみると、平成24年から平成26年までは10kW以上の中央値が4万円/kWずつ下落、1000kW以上の設置費用との差額も概ね4万円/kW程度下落、それにあわせるように売電価格も4円ずつ下がっています。 また、平成26年から平成27年にかけては中央値の差額が下げ幅が狭まったため、売電価格の下落もそれに併せたように2段階の下落になっています。
平成27年度はシステム設置費用想定値を29.0万円/kWとしていました。 この「システム設置費用想定値:29.0万円/kW」は前年である平成26年度で見た場合、10kW以上全体の上位19~20%の水準になりますが、導入が進んだ結果、10kW以上全体の29%に相当する水準にまでコスト低廉化が進みました。
平成27年度までは10kW以上全体と1,000kW以上の設置費用中央値差額が広かったため1,000kW以上の設置費用中央値を目標とすることできました。しかし、中央値差額が狭まったことでトップランナーな価格ではなくなったため、目標値のたて方を変更し1,000kW以上の上位15~35%にあたる3点を設置費用の想定値(目標)と設定しました。
- 1000kW以上の上位35%、10kW以上全体の20%相当…26.8万円/kW
- 1000kW以上の上位25%、10kW以上全体の15%相当…25.1万円/kW
- 1000kW以上の上位15%、10kW以上全体の9%相当…23.2万円/kW
こうして目標値を設定し、システム設置費用(物件価格)の低廉化を推し進めるとともに、太陽光発電の導入量が停滞しないように売電単価が決定されるため、年度毎に下落してという仕組みになっています。
2016年以降の売電価格推移はどうなったか?
上では、平成27年度までの推移を説明しましたが、今度は平成30年度 調達価格等算定委員会「平成 30 年度以降の調達価格等に関する意見(案)」を参考に、2016年以降どの様に変化したかをみてみましょう。
上記資料によると、2017年に設置された太陽光発電所の設置費用は
- 10kW以上全体:平均値30.0万円(前年比-1.6万円/kW)・中央値29.8万円(前年比-1.6万円/kW)
- 1,000kW以上:平均値27.7万円(前年比-1.3万円/kW)・中央値27.2万円(前年比-0.9万円/kW)
このことを踏まえ上記表2)に2016年度以降のものを加えたものが下記になります。
平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
10kW以上のシステム設置費用 中央値(万円/kW) |
43 | 39 | 35 | 33 | 31.2 | 29.8 | – |
1000kW以上のシステム設置費用 中央値(万円/kW) |
29.9 | 29.4 | 30 | 29.2 | 28.1 | 27.2 | – |
中央値の差額(万円/kW) | 13.1 | 9.6 | 5.0 | 3.8 | 3.1 | 2.6 | – |
システム設置費用想定値(万円/kW) | 32.5 | 28.0 | 27.5 | 29.0 | – | 24.4 (2016年設置1,000kW以上案件の上位25%水準) |
22.1 |
売電単価 | 40円 | 36円 | 32円 | 29円(6月まで) 27円(7月から) |
24円 | 21円 | 18円 |
表をみても分かる通り、中央値の差額は下落幅こそ狭まったものの下落傾向にあり、50kW~1,000kWまでの設置費用が大型の太陽光発電(1,000kW)以上の設置費用へ近づき、コスト効率化がなされていることを表しているといえます。
2017年の平均設置費用はなんと…
また、2017年設置案件では
- 50kW以上500kW未満の平均値:25.9万円/kW
- 500kW以上1,000kW未満の平均値:25.5万円/kW
- 1,000kW以上の平均値:27.7万円/kW
このように、1,000kW以上よりも50kW以上1,000kW未満の設置費用のほうが平均値で安くなるという結果になりました。
10kW 以上の太陽光発電のシステム費用の推移
(引用:経済産業省 資源エネルギー庁「コストダウンの加速化について」)
海外の売電価格はどうなの?
太陽光発電の普及に関して、よくあげられる問題に売電価格の高さがあります。 固定価格買取制度が開始された当初、売電価格を高値にすることで太陽光発電の導入を促進する目的があったんですが、この価格が高すぎたという点で未だに批判されることが多くあります。
その際取り上げられるのが海外の売電価格との比較です。ここでは海外の売電価格がどう遷移したのか経済産業省の資料をみてみましょう。
日本と世界の調達価格の比較
(引用:経済産業省 資源エネルギー庁「平成 30 年度以降の調達価格等に関する意見(案)」)
上記は日本と海外の太陽光発電における売電価格の比較になっています。 これをみてもらうと、日本での制度開始当初40円という売電価格が他の国と比べても実はそこまで高くないことがわかりますね。 上図を参考に表にしてみました。(日本・ドイツ以外の売電価格が記入されていないので表からの概算値になります)
国名 | 制度開始年 | 経過年数 | 最高価格 | 最低価格 | 下落額 | 年あたりの下落額 (平均値) |
---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 2012 | 5年 | 40円 | 19.6円 | 20.4円 | 4.08円 |
ドイツ | 2000 | 18年 | 60.7円 | 8.3円 | 52.4円 | 2.91円 |
イギリス | 2010 | 8年 | 49円 | 8円 | 41円 | 5.12円 |
フランス | 2002 | 15年 | 19円 | 10円 | 9円 | 0.6円 |
イタリア | 2006 | 7年 | 55円 | 15円 | 40円 | 5.17円 |
スペイン | 1999 | 12年 | 26円 | 16円 | 10円 | 0.83円 |
表の6カ国中では日本が一番後発にあたりますが、再エネ先進国がFIT制度による再エネ導入で様々な問題点がすでに露見していたのに、効率的な制度設計をできなかったという点で批判されるのはわかる気がしますね。(例えば、ドイツはFIT導入後、再エネの電力が普及するにつれて再エネ賦課金の国民負担が増大していることが問題視されていました。)
売電価格の10年後・20年後は?将来的にどうなっていく?
売電価格の10年後・20年後(買取期間終了後)
10kW未満の太陽光発電では早い案件では、2019年に売電期間10年の満期を迎えます。 10kW以上の太陽光発電では売電期間が倍の20年となりますが、この2019年は売電期間が終了するはじめての年になり「2019年問題」としてニュースなどにもしばしば取り上げられます。
買取期間終了後の売電に関して
固定価格買取制度終了後(20年後)は太陽光発電をどうする?売電価格は?
2022年には売電価格が半額に?!
経済産業省では2022年から2024にかけて、売電価格の目標値を2018年現在の半額以下:8.5円/1kWhとしています。
この発電コスト1kWhあたり7円という費用は、現在、発電コストが安いといわれている火力発電の1kWhのものよりも低く、卸電力取引所JEPXで取引されているの1kWh単価(24時間平均)にも迫っており、再エネ以外の発電費用と変わらなくなることを意味しています。
(画像引用 「設備利用率と発電コストの相関関係(石炭・LNG火力)」 | 経済産業省「火力発電に係る昨今の状況」より)
売電価格が下がることは「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」の低下を意味していますので、固定価格買取制度の問題点であった国民負担の増大をこの時点でようやくクリアすることになります。
「再エネ賦課金」に関して詳しくはこちら
「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」や「回避可能費用」とは何なのか?
まとめ
太陽光発電事業の収益は、物件価格(ランニングコストも含む)と売電収入の割合を比較し利回りとして計算しています。 そのため売電価格が下がるとともに、太陽光発電所の設置費用(物件価格)を下げなければ、単純に利回りが悪化するため太陽光発電の普及が大きく鈍化することは明らかです。
太陽光発電の施工・販売会社、パネルやパワコンなどの部材メーカーにとってはもちろん、再生可能エネルギーの普及を目指す日本にとっても大きなデメリットとなるため、売電価格の調整は太陽光発電市場全体の低コスト化・高効率化させる大きな役割を担っているともいえます。
土地付き太陽光発電システムであれば、今からご自分の所有地に産業用太陽光発電システム導入するよりも高い売電価格の物件が全国各地で販売されています。
年度毎の売電価格物件も取り揃えておりますのでご覧ください。
40円の土地付き太陽光投資物件36円の土地付き太陽光投資物件
32円の土地付き太陽光投資物件
29円の土地付き太陽光投資物件
27円の土地付き太陽光投資物件
24円の土地付き太陽光投資物件
21円の土地付き太陽光投資物件
18円の土地付き太陽光投資物件