2019年度の売電価格は14円!太陽光発電における売電価格の推移と今後
目次
そもそも売電価格って何?
売電価格とは、太陽光発電システムで創った電気を、電力会社が買い取る時の価格のことを指しています。
ここでは、売電価格がどのようにして決まっているのかや、「住宅用」と「産業用」の違いについて解説していきます。
売電価格はいつどうやって決まるの?
売電価格は「固定価格買取制度(FIT)」という制度によって決められています。「固定価格買取制度(FIT)」とは、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が買い取りを行うことを義務付ける制度です。
この「固定価格買取制度(FIT)」に従い、売電価格は経済産業省(資源エネルギー庁)によって、毎年の年度末(3月末)までに決定されています。
「固定価格買取制度(FIT)」について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
固定価格買取制度(FIT制度)とはどんな制度?太陽光発電とはどんな関係?
「住宅用」と「産業用」で異なる売電価格
売電価格が決定する仕組みについては理解できたと思いますが、実は売電価格は「住宅用」太陽光発電と「産業用」太陽光発電などの区分によって異なります。
「住宅用」太陽光発電の売電価格
「住宅用」太陽光発電とは、10kW未満の太陽光発電システムのことで、主に住宅の屋根に太陽光パネルを取り付けるのが主流です。「住宅用」の売電価格は、「産業用」に比べて高額に設定されていますが、固定価格買取期間が10年間と産業用よりも10年短いのが特徴です。
ちなみに、2018年度の「住宅用」太陽光発電の売電価格は「26円/28円(出力制御あり)」となっています。
「産業用」太陽光発電の売電価格
「産業用」太陽光発電とは、10kW以上500kW未満の太陽光発電システムのことです。設置方法はシステムの規模にもよりますが、広い土地の地面に架台を建て、その上に太陽光パネルを設置するのが一般的です。(2018年度までは、10kW以上2000kW未満が「産業用」太陽光発電でしたが、2019年度から変更となりました。)
なお、「産業用」の売電価格は、2018年度の場合で「18円」と「住宅用」よりも10円近く低く設定されていますが、そのぶん固定価格買取期間が20年と長く設定されています。
「ダブル発電」の売電価格
「ダブル発電」とは、太陽光発電に加えてエネファームやエコウィルといった創エネ機器を設置したシステムのことです。
文字通り、太陽光発電と創エネ機器のダブルで発電します。2018年度の売電価格は、「25円/27円(出力制御あり」と住宅用よりも1円安く設定されています。
「ダブル発電」となるのは、太陽光発電が10kW未満の場合のみです。太陽光発電が10kW以上の場合に、ダブル発電対象の機器を併設してもダブル発電にはなりません。
ダブル発電の発電量と売電量の関係
ダブル発電では、創エネ機器で発電した電気が優先的に自家消費に利用され、足りない部分を太陽光発電で補う形になります。その上で自家消費されずに余った電気が売電されます。
例えば、太陽光発電のみであれば1日100の発電量のうち40が自家消費され、余った60が売電されるシステムがあったとします。
このシステムに1日に20発電する創エネ機器を加えて、ダブル発電にしたときを考えてみましょう。すると、発電量は100+20で120と創エネ機器の分だけ増えて、自家消費は40のまま変わりません。
売電量は80となるため、太陽光発電のみの場合と比べると創エネ機器の発電量20の分だけ増えることになります。このことを「押し上げ効果」と言います。
蓄電池や電気自動車も、「押し上げ効果」の設定をONにしているとダブル発電となります。
このように、ダブル発電では売電量が増えるため、2018年度までは「住宅用」よりも買取価格が低く設定されていました。しかしながら、2019年度は「住宅用」と同額となりました。
「500kW以上」太陽光発電の売電価格
500kW以上の太陽光発電は、入札制度によって売電価格が決まります。この入札制度は、2016年に発表された改正FITで導入されました。
これまで3回の入札が行われており、制度に関する詳細情報や実施情報は「一般社団法人 低炭素投資促進機構(GIO)」で確認することができます。
産業用太陽光発電における売電価格の推移
産業用太陽光発電における固定価格買取制度(FIT)は、2012年にはじまりました。
2012年から2017年までの売電価格の推移は以下の通りです。
- 2012年度:40円/kWh
- 2013年度:36円/kWh
- 2014年度:32円/kWh
- 2015年度(~6月30日):29円/kWh
- 2015年度(7月1日~):27円/kWh
- 2016年度:24円/kWh
- 2017年度:21円/kWh
- 2018年度:18円/kWh
ご覧の通り、売電価格は年々下がり続けています。次の項目では、その理由について説明していきます。
売電価格が年々下がり続ける理由
売電価格が年々下がり続ける理由には、「太陽光発電の設置費用が低下したこと」と、「太陽光発電が十分に普及したこと」の2つがあります。
太陽光発電の設置費用が低下
売電価格と一緒に、太陽光発電の設置にかかるコストも、年々低下傾向にあります。具体的には、太陽光パネルやパワーコンディショナーなどの設備費用が下がることで、2012年当時は1kWあたり40万円代だったシステム費用も、2018年では20万円代まで値下がりしています。
太陽光発電が十分に普及
売電価格が下落し続けるもうひとつの理由が、太陽光発電がすでに十分に普及したことにあります。そもそも、固定価格買取制度(FIT)は太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーを普及するのが目的でした。太陽光発電の普及により、FITの当初の目的は達成しつつありますので、政府は段階的に売電価格を引き下げている状態なのです。
2019年度の売電価格は14円
さて、気になる2019年度の売電価格ですが、2019年度:18円/kWhとなっており、2018年度と比べると「4円/kWh」下がっていることがわかると思います。
売電価格に関して更に詳しく
太陽光発電の売電価格はどのように決まる?なぜ下がる?徹底解説
売電価格18円と14円の収益性を比較
売電価格は2018年度が「18円」と2019年度が「14円」とお伝えしました。それでは、それぞれの売電価格でどの程度収益に違いがでるのでしょうか?
ここでは、システム容量が49.9kWの太陽光発電システムを設置した場合の、簡単な収益シミュレーションをご紹介していきます。
20年間で約400万円の差が出る
それでは、1kWあたりの年間発電量を1,000kWhとして、シミュレーションを行っていきます。
2018年度に太陽光発電を設置した場合の収益目安
- 1年間:売電価格18円/kWh×49,900kWh=898,200円
- 20年間:898,200円×20=17,964,000円
2019年度に太陽光発電を設置した場合の収益目安
- 1年間:売電価格14円/kWh×49,900kWh=698,600円
- 20年間:698,600円×20=13,972,000円
上記の通り、2018年度と2019年度の太陽光発電では、20年間で約400万円ほど収益に差が出る結果となりました。ただし、2018年度から2019年度にかけて設置費用も同時に値下がりしているため、実際の収益差はもう少し縮まります。
2020年度の売電価格はまだ未定
来年2020年度の売電価格は、現在のところまだ未定となっています。2019年度末には発表される見込みですが、2019年度の売電価格「14円」から下がることは間違いないでしょう。
太陽光発電は2019年度内の設置がお得!
もうお気づきだと思いますが、2020年度も売電価格はさらに下がる見込みですので、2019年度中に設置したほうがよりお得ということになります。
具体的には、上記で紹介した2018年度と2019年度の収益比較のように、約400万円程度は収益に差がつくのではないかと予想されます。
また、固定価格買取制度(FIT)の終了を受けて、それ以上に売電価格が下る可能性もあります。
設置を検討されている方は、早めに行動を起こしましょう。
2019年度の売電価格を確保するためのポイント
2019年度の売電価格を確保して、より良い条件で太陽光発電を導入するために必要な手続きと注意点をまとめました。
太陽光発電で売電をするためには、「電力会社」と「経済産業省(国)」へ以下の2つの手続きが必要です。
- 系統連系申請
- 事業計画認定申請
手続きには順序があり、系統連系の申請を終えてからでなければ事業計画認定の申請ができません。
それぞれ内容を確認しましょう。
系統連系申請
電力会社の設備と、太陽光発電の設備を接続するために必要な手続きです。
電力会社の送配電網に接続することを「系統連系」と言うことから、系統連系申請と言います。電力会社と電力の受給を行うことになりますので、「電力受給契約」とも言われます。
事業計画認定申請
経済産業省に、太陽光発電設備の設置を認可してもらうために必要な手続きです。FIT法改正前は、「設備認定」という制度で運用されていました。
これまでは、系統連系申請と並行して事業計画認定の申請を行うことができました。しかし、2018年11月からルールが変更され、申請時に電力会社から発行される接続契約書が必須となりました。そのため、系統連系申請が完了するまで事業計画認定の申請をすることができません。
以前のように並行して進められていたときと比べると、1ヶ月程度の時間がかかるようになりました。
この2つの手続きが完了してはじめて、売電価格を確保することができます。正式な通知は、経済産業省から送付される事業計画認定通知書でなされます。通知書にある認定日を基準に、売電価格が決まります。
手続きをスムーズに進めるための注意点
売電価格を確実に確保するためにも、手続きはスムーズに進めていきたいです。そのために注意すべき点は、以下の4つあります。
- 申請が複雑
- 申請に時間がかかる
- 運転開始の期限
- 認定前に支払いが発生
1つずつ詳しく見ていきましょう。
申請が複雑
「設備認定」から改正FIT法によって「事業計画認定」に変更されたことに伴い、申請に必要な書類も多くなっています。
これまで「設備認定」で慣れていた業者の方も、制度変更と書類の増加によって申請に不備が出ることもあります。申請不備で認定が遅れてしまうと、売電価格の確保ができなくなる恐れがあります。
審査に時間がかかる
上記の申請の複雑化によって、影響を受けたのは業者側だけではありませんでした。
認定側も変更された書類の確認や申請不備による再審査で、以前よりも審査に時間がかかっています。実際に2018年3月に申請された案件が、通常1〜2ヶ月で審査が終わるところ、4ヶ月以上と大幅な遅延していました。申請を始めてから設置までは、少なくとも6ヶ月は見ておいたほうが良いでしょう。
運転開始の期限
すべての申請が完了して売電価格が確定してから、運転開始までの期限と超過時のペナルティが設定されています。
10kW未満の場合
期限:認定から1年以内
ペナルティ:認定失効
10kW以上の場合
期限:認定から3年以内
ペナルティ:売電価格の低減もしくは買取期間の短縮
以前、産業用で設備認定を取得するだけで発電設備を設置せずに放置される事案が増えた問題を受けて、対策としてこのようなルールが設けられています。
認定前に支払いが発生
2018年に、中部電力が工事費負担金の運用ルールを変更しました。
工事負担金とは、電力会社の送配電網と接続するためにかかる系統連系費用のことです。支払期日までに工事負担金を支払わなければ、せっかく認定された系統連系申請を取り消すと発表されました。
支払期限は、請求日から1ヶ月です。請求が来るタイミングは申請の進み具合にもよりますが、事業計画認定が認定される前の可能性が高いです。そうなると、設置できるかわからない状況で事前に支払いをする必要があります。
事業計画認定が認定されずに設置できない場合は、返金されるものとは思われますが、念の為に電力会社へ確認しておくことをおすすめします。また、今後は中部電力に習って他の電力会社も事前支払いとする可能性もあるため、管轄電力会社の状況を確認しましょう。
太陽光発電は年度末に申し込みが増加
太陽光発電の申込みは、年度末に増加する傾向にあります。その理由は、上記でご紹介してきた売電価格の低下が主な原因です。
産業用太陽光発電は1,000万円を超える高額な投資となりますので、どうせ設置するのであれば、少しでも売電価格が高く収益が上がりやすい条件で設置したいと思うのは当然のことです。
申し込みは2019年12月末〜2020年1月上旬までが目安
2019年度の売電価格「14円」の条件で太陽光発電を設置するためには、「事業計画認定」の提出期限日が例年通り設定されると思われます。
2019年4月現在、資源エネルギー庁からの発表はまだありません。そこで、参考として2018年度の事例を紹介します。
売電価格「18円」の条件で太陽光発電を設置するための「事業計画認定」提出期限日は、2019年1月11日(金)までと設定されていました。
ここから更に逆算して、2019年1月11日(金)までに「事業計画認定」を提出するためには、そのおよそ一週間程度前までに太陽光発電業者と契約しておく必要がありました。
「2019年度内に設置するつもりが、2020年度の売電価格になってしまった」といったことがないように、お申込みは余裕を持って行うようにしましょう。
いくらまで下がる?売電価格の今後
最後に、売電価格の今後について触れていきたいと思います。果たして、売電価格は今後も下がり続けていくのでしょうか?
カギを握るのは、2017年4月に法改正も行われた「固定価格買取制度(FIT)」です。
FIT制度自体が終了する可能性も
太陽光発電システムの売電価格に直接関わりのある「固定価格買取制度(FIT)」は、2017年4月に法改正が行われています(改正FIT法)。
改正FIT法の主な変更点としては、
- 「設備認定」から「事業計画認定」への変更
- メンテナンスの義務化
- 旧FIT法での設備認定が「みなし認定」扱いへ
が挙げられます。
特に重要なのは「旧FIT法での設備認定が「みなし認定」扱いへ」の部分で、売電価格が高い時代に設備認定だけ取得して発電をはじめていない事業者に対して、最悪の場合で認定取り消し(10kW未満の場合)といったペナルティが課せられるようになりました。
こうしたFIT法の改正がなぜ行われているかと言えば、現状で発生している問題に対する対策も勿論あるのですが、もっと長い目で見ると「固定価格買取制度(FIT)」自体を段階的に終了させるためと言えるかもしれません。
実際に、500kW以上(2018年度までは2,000kW)の大規模な太陽光発電システムでは、売電価格の決定に固定価格買取制度ではなく「入札制度」という方法が採用されています。500kW未満の産業用太陽光発電に関しても、「固定価格買取制度(FIT)」がいずれ終了する可能性があることは理解しておいたほうが良いと思います。
なお、「固定価格買取制度(FIT)」の今後について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
固定価格買取制度(FIT)の今後はどうなる?【2018年10月考察レポート】
固定価格買取期間の20年が過ぎた後は?
固定価格買取期間の終了は、10kW以上の産業用太陽光発電にとってはまだ先の話になりますが、10kW未満の住宅用太陽光発電ではすでにはじまっており、「2019年問題」という名前で騒がれています。また、最近ではFITが終了する方を「卒FIT」などと言った呼び方も一部でされるようになりました。
2012年から産業用太陽光発電の売電を始めた方でも、FITの終了を迎えるのは「2032年」です。そのため、産業用太陽光発電の「卒FIT」事業者が、その後どのような形になるかはまだ未知数な部分が多いのが現実です。
ただし、住宅用太陽光発電では、「卒FIT」した方の電気を電力会社や大手企業などが「8円」程度で買い取る動きも始まっています。こうした住宅用太陽光発電の「卒FIT」者に向けた取り組みなども、産業用太陽光発電のFITが終了した後の状況を予測する参考になるかもしれません。
固定価格買取制度(FIT)終了後の売電価格について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
固定価格買取制度終了後(20年後)は太陽光発電をどうする?売電価格は?
消費税が10%になると売電価格が上がる?!
政府は2019年10月に消費税を8%から10%に引き上げるという予定を発表しています。普通に考えれば消費税が上がるのは嬉しくないことですが、太陽光発電事業者にとっては嬉しいニュースになるかもしれません。
というのも、産業用太陽光発電の売電価格は「外税」計算のため、消費税がアップすればそのぶん売電価格が増えることになるからです。
とはいえ、元の売電価格が高いに越したことはありません。消費増税が予定通り行われた場合、「14円」で売電できる2019年度中に太陽光発電を設置すれば、2020年度から設置するよりもさらにお得と言えるでしょう。