NHKクローズアップ現代「中国が日本を飲み込む」

著者名:
Tomatosoup
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12月4日のクローズアップ現代で日本の再エネの現状が取り上げられていました(中国“再エネ”が日本を飲み込む!?)。番組では日本の再エネについて取り上げ、あまり知られていないような現状が判り易く説明されていました。NHKがこのような努力をしてくれたことを歓迎しています。

 

メガ発の読者の方々の中にもこの番組を見られた方は多くいると思いますが、皆さんはどのような感想を持たれたでしょうか。少し内容を見てみましょう。

 

まずタイトルが凄いですね。確かに太陽光分野での最近の中国による日本攻勢は凄まじく、「日本を飲み込む!?」という表現がピッタリだと思います。番組では、「中国は国策として再エネを推進し、それを背景に成長した太陽光発電業者が勢いに乗り、豊富な資金力をバックに日本の市場を食い荒らし始めた」というような説明でした。日本のパネルメーカーは中国の低価格攻勢で軒並み赤字、おまけにFIT発電事業にまで低価格攻勢で中国企業が進出してきています。現状をよく表したタイトルだと思います。

 

一方で日本はどうかと言うと、再エネ普及に陰りが見えている。その理由の一つに系統余裕度の問題があり、もう一つに高コスト構造があると説明していました。後者の高コストの問題は中国の低価格攻勢と関係するでしょうけれど、系統の問題は中国とはあまり関係が無いのではないかと思います。

 

まず系統余裕度の問題について。電力会社の「全ての発電所が100%出力した場合を考えると系統に再エネを入れる余裕が無い」という主張に対し、現状の(原発の動いていない)発電状態では下図のように系統の利用度はせいぜい20%なので再エネを入れる余裕は十分にあるという反論をNHKは取り上げていました。この反論は朝日新聞でも取り上げられたことがあり、私もこのブログで触れました(朝日新聞に掲載された東北電力の送電線空き容量の記事)ように、20%でどれぐらい余裕があるのかは議論が分かれるでしょうけれど、余裕があることは間違いなさそうですね。

 

ここからは私の想像ですが、電力会社は「再エネを入れない」と言いたいわけでなく、系統連系のためには「抑制条件を受け入れろ」と言いたいのではないでしょうか。抑制条件を受け入れても、実際には送電線はスカスカの状態ですからほとんど抑制が発生することは無いでしょう。実害はないと思います。

 

ただ、抑制条件を受け入れると銀行が融資を渋る可能性が高いので、再エネ普及を進め難くなる可能性があります。その点、中国は豊富な資金をバックに攻めることができますので有利になります。この辺りが問題なのですかね? 資金力で日本が負けているというのなら、ちょっと情けないですね。

 

一方の「日本の太陽光は高コストだ」という問題はあちらこちらから指摘されています。なぜ日本の太陽光は高いのでしょうね? 理由の一つにはFITによる売電の高値買取り補償があるため、太陽光発電の設備や工事はそれに向けてぎりぎり高い値段を設定できるという問題があります。ある意味、日本側に甘えがあったのではと思いますが、かつてはこれが太陽光発電普及のインセンティブの一つになっていたことは確かでした。しかし、ここに中国が価格破壊で乗り込んできている訳で、こうなると日本側も価格競争力をつけるしか仕方がありません。これは公正な価格競争でどう勝ち抜くかという問題で、別に中国がズルをしているということではありません。ある意味、中国は日本の太陽光のコストダウンに貢献しているとも言えます。番組では何を問題視しているのか良く判りませんでした。

 

上記の問題とは別に、私は海外の会社が日本でFITによる太陽光発電事業を行うことには釈然としません。FITは日本の電気需要家から再エネ普及のために広く集めたお金なので、これを海外に持ち出して欲しくないからです。日本で再投資してくれたら良いのですが、そこまでは管理できないでしょう。だからと言ってFITによる電力事業を日本の会社に限ると国際非難を浴びるかもしれませんね。このまま日本の市場をオープンにしておくしか仕方がないですかね。

 

で、 タイトルは良かったものの、中国問題をそんなに大きく取り上げなくても良かったのではないかと思います。系統の規制や高コストの問題は従来から言われてきたことで、その対策が進まないうちに中国の攻勢が始まったので、問題がより明らかになったというところでしょうか。一方で、日本ではFITによる太陽光発電のネガティブな面が注目されて、その対策に追われているうちに再エネ推進が手薄になってしまったような気がします。FIT見直しに早くケリをつけて、再び再エネ推進に取り組んで欲しいなと思いました。

 

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