太陽光発電の売電価格をキープした状態でパネル変更が可能に!?
【※2018年12月追記】
経済産業省資源エネルギー庁は、かねてより問題視されていた「太陽光発電の未可動案件」への新たな対応を、2018年12月5日に決定しました。
具体的には、期日までの系統連系工事着工申込み受領が行われない場合、売電価格が減額となります。
詳しく内容を見てみましょう
目次
そもそも未可動案件がもたらす問題とは?
国民負担の増大
既に国民負担が年間2.4兆円に達している中、これらが後々動き出すと、その時点から20年間FITによる買取りが行われるため、国民負担が更に増大し、それが事業者の過剰な利益となってしまう。
新規開発・コストダウンが進まない
事業者の立場としては、入札による新規案件の価格競争よりも、まずは高価格で残っている案件の発掘・開発を進めていくことが優先。これらが運転開始する又は諦めて撤退するなどして解消されないことには、新規開発への着手は後回しにならざるを得ない。
系統容量が押さえられてしまう
新規開発を進めたいが、系統がなかなか空いていない。最近は、「適地かどうか」よりも「系統が空いているかどうか」を入口にして開発地を探している。無理筋な未稼働案件が消えてくれれば、系統にも余裕が生まれ、新規開発の幅が広がる。
未可動案件の事業用太陽光発電への対応
- 2012~2014年度認定の事業用太陽光発電で、運転開始期限が設定されていないものが対象
- 以下の表の期日までに、送配電事業者によって系統連系工事着工申込みが不備なく受領されたものは従来の買取価格を維持
- 期日に間に合わなかったものは、系統連系工事着工申込みの受領日時点の2年前の買取価格を適用(2019年度受領⇒2017年度21円/KWh)
- 系統連系工事着工申込みから原則として1年の運転開始期限を設定
- 着工申込み前であれば、調達価格を維持したまま太陽光パネルを変更できる
- 大規模事業(2MW以上)や条例アセスメント対象事業に一定の猶予期間を確保
事業規模 | 提出期限 | 系統連系工事着工申込みの受領期限 | 運転開始期限※2 | |
---|---|---|---|---|
原則 | (2MW未満) | (2019/2/1) | 2019/3/31 | 2020/3/31 |
猶予 措置 |
2MW以上 | (2019/8末目途) | 2019/9/30 | 2020/9/30 |
条例アセス対象 | (2020/2末目途) | 2020/3/31 | 2020/12/31 |
(参考:資源エネルギー庁「既認定案件による国民負担の抑制に向けた対応(事業用太陽光発電の未稼働案件)
」)
(参考:資源エネルギー庁「FIT 制度における事業用太陽光発電の未稼働案件への新たな対応について
(修正点の概要)」)
また、12月10日には上記に合わせて「調達価格が変更される事業計画の変更整理表」が更新されていますので、以下も参考ください。
変更内容 | 対 象 者 | ||
---|---|---|---|
以下3つを全て満たす者 ①2015年4月1日から2017年3月31日ま でに認定を受けている ②2016年7月31日までに接続契約を締 結している ③運転開始前である |
左記の対象者以外(※4) | ||
発電出力の変更 | 出力の増加 | 変更あり | 変更あり |
出力の減少 (10kW以上かつ20%以上) |
変更あり | 変更なし | |
発電設備の型式の変更 | 太陽電池のメーカーの変更 | 変更あり | 変更なし |
太陽電池の種類の変更 | 変更あり | 変更なし | |
太陽電池の変換効率の低下 | 変更あり | 変更なし | |
太陽電池の合計出力の 変更 | 合計出力の増加 (3kW以上または3%以上) |
変更あり | 変更あり |
合計出力の減少 (20%以上) |
変更あり | 変更あり | |
接続契約締結日の変更 | 変更あり | 変更あり |
(参考:資源エネルギー庁「調達価格が変更される事業計画の変更整理表」)
売電価格を維持したまま太陽光パネルの変更が可能に
今回新たに運転開始期限が設定される事業については、既に運転開始期限が設定されている事業と同様、系統連系工事着工申込み前であれば太陽光パネルの変更を行っても売電価格が変更されない仕組みとし、更なるコストダウンを図れるようにします。
認定取得時の太陽光パネルは既に生産終了など、調達ができないものも多くあると思います。その場合、機器を変更する必要があり、そのための手続きも必要になります。期日は厳守のため注意が必要です。
【※追記終了】
売電価格維持でパネル変更が可能になる!?
システムの価格低下に伴い、国のFIT買取価格(売電価格)も下がる一方で、依然として高い売電価格の未稼働物件が多くあります。現制度ではこうした案件に対し、運転開始前のパネルメーカー変更はコスト構造の変化とみなし、変更した時点での売電価格が適用されておりました。
しかし、長期にわたり認定を空押さえしている案件では、パネルメーカーを変更せずとも実質コストの構造は大幅に変化しているようです。長期未稼働案件に対してパネル変更の規制をかけること自体にあまり意味をなしていないのが現状です。
今回の改正法案は、そうした未稼働物件の滞留を防止することが根底にありました。そこで新たに掲げられるFIT新制度では、売電価格を維持したパネル変更を認め、代わりに認定から運転開始までに「3年の期限」が設けられるようです。
購入者にとってもメリット有り?
パネル変更が可能になることで、発電事業者にとって具体的にどのようなメリットが考えられるのでしょうか。
①パネル再選定で利回りアップが可能に?
今までは設備認定時のパネルメーカーを使用しなければ売電価格が下がる事になっていましたが、FIT法改正後は売電価格を下げずに自分の好きなパネルを選び直せるようになるかもしれません。コストを抑え、変換効率の高いパネルを選定することにより、利回りアップも夢ではなくなるかもしれません。
②価格競争に拍車がかかり、さらに安くなるかも!
今回の改正法案はパネルメーカーにとって、新規案件獲得のチャンスになるとともに、顧客喪失のピンチでもあります。既に他社の未稼働案件に対して再見積もりをとるメーカーもいるようです。こうした動きが価格競争にさらなる拍車をかけることは十分に考えられます。今後のシステム価格の値下がりに期待です。
③連系までの期間が短縮される
今回の法案では、今までメーカーの在庫切れで遅延していたケースや、選択したパネルメーカーではバンカビリティ(銀行が融資をする際の信頼性の高さ)の取得ができずストップしていた案件に対し、メーカーを変えることで遅延なく対応可能になることが予想されます。これは、特に節税を目的に購入される方にとって大きなメリットではないでしょうか。
参考文献:荒川 源,月刊スマートハウス,PV JAPAN2016 増刊号,p.4-5,
現在までの大きな改正予定内容まとめ
来年度までに接続契約をしていない物件は認定取り消し
詳細⇒『2017年4月に認定大量取り消しの見込み。タイムリミットは2016年6月30日!』
今年8月以降、3年間以上の未稼働案件にペナルティの恐れあり
詳細⇒『8月がタイムリミット!未稼働の40円、36円物件にペナルティの可能性あり。』
2017年度からメンテナンス契約が必須条件に!?
詳細⇒『2017年度からメンテナンス契約が必須に!?早めの準備を!』
メガ発では引き続きFIT法改正に関する情報を発信していきます。