2019年度の太陽光発電投資の動向【投資家サムライ大家】
こんにちは。サムライ大家です。
メガ発さんから「2019年度の太陽光発電投資の動向」というお題をいただきましたので、この貴重な機会に、私が普段から思っていること、感じていることをお伝えできればと思います。
2019年度になり、産業用(10kW以上)の太陽光発電所の売電単価がついに14円(税抜き)/kWhとなりましたね。2012年度の固定価格買取制度(fit制度)の開始時点では、売電単価が40円(税抜き)/kWhだったので、3分の1近くまで売電単価が下がったことになります。
果たして、いまの売電単価14円でも投資として成立するのか。そういった疑問もあるかと思います。この問いに対しては「問題なく投資を継続できる」というのが私の回答になります。
目次
施工業者は事業継続
私は2019年に入ってからも多くの太陽光施工業者にアプローチし続けています。直近の数ヶ月の間に十数社ほど回りました。その際、施工業者の社長さん又は社員さんから話を伺ったところ、2019年度も事業を継続するという業者がほとんどでした。
ただ、「来年度(2020年度)以降、さらに売電単価が下がったときはどうでしょうか?」と質問したところ、「問題なく事業を継続します」と答えた業者が多かったのですが、中には「継続するかどうか未定」と答えた業者も若干ですがいました。売電単価の低下に伴い、そろそろ採算が合わないなと判断する施工業者も出始めている状況なのかもしれません。
売電単価14円だと関東で表面利回り10%は厳しくなってきた?
私の勝手な心証ですが、今後も事業を継続すると答えていたのは、関東以外に本社がある施工業者さんが多かったように思います。理由は、関東以外は土地が圧倒的に安いからでしょうか。いまの関東の土地値では、魅力的な利回りの発電所を作ることは段々難しくなってきたように思います。
例えば、九州、四国、北海道などで、土地を格安で仕入れることができる施工業者がいますが、そうした業者は売電単価14円でも表面利回り10%~12%で案件を提供しています。「売電単価が12円になっても全く問題ありません」と言っていた施工業者の社長さんもいらっしゃいました。
一方、関東では売電単価14円だと、表面利回り10%くらいが精一杯という感じになってきたように思います。関東の土地は、太陽光用地としての売却にこだわらずとも、その他の用途としても売却できる可能性があるので、これ以上、土地値が下がりにくくなっているのかもしれません。
地主さんにとって、太陽光用地として高値(坪1万円程度)で売却できた時代は数年前に終わりました。個人的には、表面利回り11%以上の売電単価14円の関東案件を見つけるのは相当厳しくなってしまったと感じています。表面利回り11%にするには坪単価3000円~4000円くらいが目安となりますが、太陽光発電に向いたそのような条件の土地を見つけるのは大変です。
2019年度の後半になれば、設備価格の下落が追い付いてきて、利回りが向上する可能性もあります。とはいえ、ここ数年の間は毎年3円ずつの売電単価の低下だったのが、今年度は2018年度の売電単価18円から一気に4円も下がってしまって14円になったので、吸収するまでに多少時間がかかるかもしれません。
2019年度は過積載率がさらに高まる傾向に
売電単価14円になってから感じていることですが、過積載の程度がますます強くなっているように思います。
過積載とは、トラックなどで荷物を積みすぎといった意味で使われる用語ですが、太陽光発電の分野では、パワーコンディショナーの容量に対して太陽光パネル容量が過度に積載された状態を意味する用語です。
固定価格買取制度(fit制度)が開始した当初は、パワーコンディショナー49.5kWに対して太陽光パネル50kW(過積載率101%)といった組み合わせの低圧(50kW未満)太陽光発電所が主流でした。なお、パワーコンディショナーの容量と、太陽光パネルの容量とのどちらかが50kW未満であれば低圧の発電所となります。
この過積載率は年々高くなる傾向にあります。それは、過積載にすることで、太陽光パネルの増加に比例して、ある程度売電収入をアップさせることができるからです。パワーコンディショナーも、昔は過積載を想定していなかったのですが、いまでは過積載仕様を前提に改良が進んでいます。
ここ数年の間に、パワーコンディショナー49.5kWに対して太陽光パネル100kWを超えるような、過積載率200%以上の太陽光発電所が普通に販売されるようになりました。いわゆるスーパー過積載と呼ばれる発電所です。
そして、それが2019年度に入ってからは、パワーコンディショナー49.5kWに対して太陽光パネル110kW~130kW(過積載率222%~262%)の太陽光発電所が見られるようになってきました。
過積載率があまりに高くなりすぎると、発電しても売電できず、ロスが多く発生してしまいます。過積載率の上昇により今後どこまで利回りをアップし続けることができるか分かりませんが、いずれ限界がくるでしょう。
過積載について詳しくはこちら
パワコンよりも容量の多いパネルを設置する「過積載」太陽光発電とは?
蓄電池の台頭に期待
過積載率の上昇だけでは、いずれ利回りアップに限界がくると思われますが、打開策もあります。蓄電池との併用です。いまは蓄電池の価格が高すぎるので、なかなか採算が合わないようですが、少しずつ導入例が出始めています。スーパー過積載と蓄電池を併用することで、昼間に発電しすぎて売電できない分を蓄電池に蓄電し、蓄電された分を夜間に売電することで売電収入をアップ、利回りをアップさせることができる可能性があります。
将来的に蓄電池の価格が下がったら、もしかしたらパワーコンディショナーの容量49.5kWに対して太陽光パネルの容量200kW~300kWといった組み合わせの太陽光発電所も登場するかもしれません。もはや低圧の発電所というより、高圧の発電所の規模感ですが。
太陽光発電所は昼間しか発電しないので安定電源にならないとの指摘がありますが、今後、蓄電池の台頭により夜間も売電できるようになれば、24時間、安定的に電気を供給することも可能になるかもしれません。そうなれば太陽光発電に対する追い風になります。蓄電池の普及には期待しています。
売電単価14円時代の戦い方
施工業者の中には、自ら土地から地権者と交渉して取得する不動産事業部を持っているところがあります。そうした業者は、これまでに多くの土地を取得して太陽光発電のための権利を確保しています。これらの土地が商品化されるのは数年後だったりします。そのため、2019年度に売電単価14円となりましたが、現在、こうした14円の発電所に加えて、売電単価24円、21円、18円といった案件も次々と市場に投入されています。例えば24円の発電所を、いま表面利回り10%で市場に投入した場合、施工業者の利益は大きくなります。設備の調達コストが大幅に下がった分を利益に転換できるからです。
売電単価14円の発電所が、たとえ今は利回り10%に届かなくても、数年後の下がった調達コストで改めて見積りをし直すと、利回り11%の発電所を作れる可能性もあります。案件を仕込む施工業者と同じように、案件を少しだけ寝かせることで、利回りをアップさせるといった戦い方です。いますぐ結果が欲しい投資家の視点では、これは気長な方法に感じるかもしれませんが、こうした戦い方をすれば、売電単価14円ではもちろん、2020年度以降に売電単価がさらに下がったとしても、なんとかなると思います。
電力会社に支払う連系工事負担金
2019年度の太陽光発電投資の動向と直接関係するものではありませんが、ずっと気になっていることがあります。それが連系工事負担金です。連系工事負担金とは、電力会社の電力系統に発電所が接続するための工事のために、電力会社へ支払うお金です。
施工業者の努力により、太陽光発電設備の調達コストは年々下がってきました。それに伴い、売電単価が下がってきたのです。しかし、連系工事負担金は、ほとんど値下がりしていないのではと感じています。発電所の規模や周囲に電柱が立っているかといった様々な要因に影響されますが、だいたい数十万円~百万円の金額になります。発電所の総コストの中でもそれなりに大きなコストを占める項目です。太陽光発電設備の調達コストが下がり、1つの太陽光発電所の総額も下がっているなか、連系工事負担金はあまり変化していないように思います。
いくら太陽光発電設備の調達コストが下がっても、連系工事負担金の金額が変わらなければ、その影響(総コストに占める割合)が次第に大きくなっていきます。つまり、連系工事負担金を含めた発電所全体の総コストの削減が進みにくくなっており、そのため表面利回り10%の維持するのが大変になっているように思います。電力会社としては、連系工事負担金の徴収額を下げれば経営に影響しますので、当然下げたくはないでしょう。経済産業省の政策と電力会社の意図は必ずしもマッチしていないのかもしれません。投資家の立場としては、こちらも少しでも値下がりしてくれたら嬉しいのですが…。
太陽光設備の廃棄費用の強制的な積み立てが検討されている
太陽光発電はアメとムチの政策です。最初は、普及促進のために高い売電単価(アメ)が用意され、制約(ムチ)は特にありませんでした。それが、太陽光発電がある程度普及してきた今では、様々な制約(ムチ)を受けるようになっています。一部の電力会社の管内では、需給に応じて売電できなくなる出力制御(出力抑制)が行われるようになっています。また、法律の改正により、発電所が安全にしっかりと管理されるように、フェンスで発電所を囲むこと、メンテナンスをしっかり行うこと、太陽光発電事業者の情報を掲示した標識(看板)を設置することなどが義務化されました。
さらに、いま議論されているのが、固定価格買取期間(20年)経過後の設備撤去費用の積み立てです。将来、老朽化した太陽光発電所があちこちで放置されてしまうリスクを想定し、予め売電収入の一部を撤去費用として積み立てる必要があります。我々発電事業者が行う「定期報告」の中で、積み立てた費用の額を報告する欄があります。
ただ、今後は、売電収入の一部を外部機関が強制的に積み立てることも検討されています。どのような運用になるのかはまだ決まっていませんが、2019年度以降、そうした新たなムチが振るわれる可能性があります。
固定価格買取制度(fit制度)の未来
2012年7月1日に全量買取の固定価格買取制度(fit制度)が開始してから早くも7年になろうとしていますが、売電単価は順調に下落してきたように思います。途中で制度自体が終了してしまう可能性もあった中で、官僚が考えた政策は、これまでのところ上手く機能しています。制度が維持されたまま、あと数年ほど売電単価の下落に市場が耐えることができれば、売電単価10円を切ることも夢ではありません。
fit制度がその役目を果たし、自由競争の中で太陽光発電への投資が可能になれば、fit制度終了後も太陽光発電投資という投資分野は残っていくのではないでしょうか。そのとき、いま太陽光発電所に投資している人達は、固定価格買取期間である20年経過後に、同じ土地で太陽光発電設備へ再投資するという出口戦略も見えてくると思います。再投資がなされないと、せっかく増やした再生可能エネルギーの割合が数十年後、fit制度開始前の水準に戻ってしまうかもしれません。そうなってしまっては何のためのfit制度だったのかということになります。すべてはfit制度が上手く着地できるかどうかにかかっていますが、このまま順調に推移していけばfit制度の未来は明るいと思います。
今後も太陽光に投資するかどうか
毎年のように「もう太陽光は終わりだ」と言われてきました。私の記憶では、売電単価が36円から32円に下がった頃(2014年度)から言われ始めたように思います。それが、いまでは売電単価14円です。おそらくですが、今後も「太陽光は終わり」と言われ続けながら、実際には問題なく継続されていくのだと思います。
私は、もはや太陽光にどっぷりと浸かっていますし、これまでの経緯からして今後も問題なく投資できる環境が続くと思いますので、2019年度もまだまだ投資継続路線で突き進みたいと思っています。