不良太陽光パネルが発火するプロセス
- 著者名:
- Tomatosoup
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前回、住宅太陽光で発火事故が起こっているという消費者庁の報告を取り上げました。その続編として消費者庁から不良パネルの発火プロセスの詳細が報告されています(不良太陽光パネルは、こうして発火・延焼した)。詳細は記事に譲りますが、少し気になる点について触れます。
まず、報告の概略を説明しておきます。
住宅太陽光の火災事故の原因は、不良パネル原因の事故と、不良工事原因の事故の二つに分けられますが、この記事は不良パネルによる事故について書かれています。
不良パネルから発火に至るプロセスは記事で次の4段階に整理されています。
- 第一段階は、ハンダ不良などによるパネル内部の配線の高抵抗化。
- 第二段階は、バイパス回路の常時通電。ここからは専門的ですが、上記のような不良回路の電流をバイパスする回路がパネルには備わっています。
- 第三段階は、このバイパス回路の断線。
- 第四段階は、電流がバイパスできなくなったため、元の不良個所に高電圧が加わり、アーク放電や異常過熱が起こり発火に至る。
上記の第一段階はパネルが不良であることを意味しますが、私が問題だなと思うのは第三段階です。第一段階の不良を起こしてはならないのはもちろんですが、もし不良が発生してもバイパス回路で事故を防ぐようになっています。ところが事故を起こしているパネルは、このバイパス回路が機能しないことを示しています。
正確に言うと、バイパス回路は機能していた(第2段階)のですが、長時間機能させると発熱で断線してしまったようです。
メーカーの言い分は、「バイパス回路は常時作動することを想定していないので、責任は無い」だそうです。バイパス回路はパネルの一部に影がかかるなどの一時的なトラブルの回避しか考えていないとのことです。不良パネルのように常時電流が流れるトラブルが起こると、バイパス回路が焼き切れて発火に至ることはやむを得ないと主張しているようなものです。これだと、製造責任によるパネル不良で、パネルが発火することはやむを得ないということになり、ちょっと納得できませんね。
実際、JPEAやJEMAがこのトラブルに対しで出した声明では、パネルは発火することを前提に、パネルと屋根材との間に不燃物を入れることを推奨しています。これって、パネルメーカーを守り過ぎじゃぁないですか?
メーカーには不良時には発火することを前提にしたパネルを作るのではなくて、不良があっても発火しないようなパネルを作って欲しいですね。これは何も無理なことを言っているのではないと思っています。バイパス回路をちょっとしっかり作れば、このような発火を防ぐことはできるのですから。
それを説明すると・・・、
このバイパス回路の重要な素子はバイパスダイオードと言われ、パネルの出力線を出すところにあるジャンクションボックスとか端子ボックスとか言われているところに内蔵されています。昔はこのボックスがもっと大きかったのですが、最近のパネルはずいぶん小さくなり、しかもバイパスダイオードが封止されたようになっています。
最近の太陽電池セルは大型化していますので、電流も8Aぐらいになります。バイパスダイオードに常時この電流が流れるとかなり発熱するでしょう。しかし、ボックスが小さくて封止されたようになっているため、熱が逃げられず異常過熱することは十分に考えられます。昔のようなボックスだと、ダイオードに放熱フィンをつける余裕があり、熱の逃げるスペースもあったのですけれどね。
このボックスをもっと安全にするためにはボックスを大型化して熱余裕を持たせればよいだけなので、技術的には簡単なことです。確かに多少コストアップになるかもしれませんが、大したことは無いでしょう。そんなことから、私はメーカーに安全なボックス構造のパネルを作って欲しいと思っています。
これからはパネルの評価をする時にボックスの安全性も見た方が良さそうです。
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