東京海上日動火災保険株式会社から「保険加入努力義務化に備えた新保険」が登場~基本補償(廃棄費用+施設賠償責任)が50kW発電所のケースで約1.7万円/年~
- 著者名:
- サムライ大家
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こんにちは。サムライ大家です。
東京海上日動火災保険株式会社さんから「廃棄費用と賠償責任がセットになった新しい保険」がリリースされました!
保険加入努力義務化に備える保険
資源エネルギー庁の事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)によると、
「出力 10kW 以上の太陽光発電設備の場合、災害等による発電事業途中での修繕や撤去及び処分に備え、火災保険や地震保険等に加入するように努めること。」
と記載され、保険(火災保険、地震保険等)への加入努力義務が明示されました。
ガイドラインには「高圧・特別高圧の大規模な太陽光発電設備では損害保険や賠償保険への加入率が高いのに対し、低圧の太陽光発電設備においては加入率が低いことが報告されている。」とも記載されています。
確かに、低圧太陽光では動産保険くらいしか加入していない人も多そうです。今回の東京海上さんの新保険は、この保険加入努力義務化に備える保険といえます。
第三者への賠償保険に廃棄費用が付いて発電出力50KWで約1.7万円の安い保険
保険でカバーされる対象は、(1)廃棄費用、(2)施設賠償責任の2つです。
※オプションで(3)サイバーリスク特約
ウェブサイトによれば、50kW発電所のモデルケースで13,100円(山口県)~21,750円(三重県、大阪府)でした。第三者への賠償保険に廃棄費用がセットされており、エリアによってバラつきはありますが、発電出力50KWで約1.7万円の安い保険です。
以下はウェブサイトからの抜粋です。
後述する通り、過積載発電所は、パネルではなくパワコン容量を設備容量とすればよいみたいなので、ほぼモデルケース通りの保険料と考えてよさそうです。つまり、上記一覧の金額くらいが保険料と考えてよいものと思われます。
廃棄費用の保険詳細
この保険の最大の特徴は、大多数の事業者が加入していない地震の補償もカバーしている点です。地震に起因する廃棄費用を保険で手配している事業者はほとんどいないでしょうから、将来の大きな地震に対する備えとして有効かもしれません。
ウェブサイトによれば、廃棄費用について、
自然災害、地震等の発生により、事業者が発電事業の廃止または規模の縮小のために、太陽光発電設備の撤去にあたり負担する費用を補償します。
損害を被ったシステムのみならず、損害を被っていないシステムの廃棄費用についても支払限度額を上限にお支払いします。
地震以外が原因⇒設備容量1kwあたり1万円(MAX1000万円)
地震が原因⇒1kwあたり2千円(MAX200万円)
と記載されています。
50kW発電所の場合、地震以外が原因で廃棄(つまり発電設備を撤去)する場合、50万円ほどが保険で賄えることになります。そして、50kW発電所の場合、地震が原因で廃棄する場合、20万円ほどが保険で賄えることになります。
どのような保険かというと、台風、洪水、地震などにより、設備の一部又は全部を廃棄するときに支払われる保険です。復旧(修理)費用のための保険ではなく、文字通り「(一部又は全部の)廃棄」のための保険です。
以下、ウェブサイトの「よくあるご質問」を見て気になったところを抜粋します。
「Q11.過積載の場合は、設備容量はどうすればよいですか?
A11. 過積載の場合はパワコンの出力でご申告ください。」
⇒低圧過積載の場合でも例えばパワコンが49.5kWなら49.5kWでよいみたいです(念のため、東京海上日動あんしんコンサルティング株式会社(TAC)さんに電話で直接確認してみました)。
そうすると、パネル100kWの低圧過積載発電所の場合でも保険料は少なくて済みそうです。低圧発電所だと、ウェブサイトの都道府県ごとの50kWのモデルケースの金額くらいが目安になりますね。ただ、廃棄の際にもらえるのは49.5万円になります。
「Q23.太陽光発電システムとはどの設備まで含まれますか?
A23. 太陽光発電モジュール、パワーコンディショナー、蓄電池、接続箱、架台、表示器、フェンスまたはこれらに類するもの一式をいい、これらのものの付属品または付属配線を含みます。」
⇒基本的にシステム全体が補償の対象みたいです。これは心強いですね。
「Q24.修理費用は対象とならないのですか?
A24. 廃棄費用に特化した保険となりますので修理費用は対象外となります。修理費用を補償する保険をご希望の場合は、火災保険のご加入をご検討ください。」
⇒修理費用は対象外!結構重要な注意点だと思います。
「Q25.台風により太陽光パネルが壊れてしまったので、壊れた部分を廃棄して新しい設備に入れ替えます。この場合、壊れた設備の廃棄費用は対象となりますか?
A25. 発電規模の縮小または発電事業の廃止を目的とした太陽光発電システムの撤去ではないため、入れ替えの廃棄費用は対象となりません。」
⇒設備の一部又は全部の撤去だけが対象のようです。入れ替えは復旧費用に該当するからダメということでしょう。
20年経過前に廃棄するケースは、よほど復旧が難しい場合(例えば土砂崩れでパネルごと流され、再設置できる平坦な土地が無いなどの状況)が想定されます。
通常は復旧して事業継続したいですし、継続できなれば投資として大きな損切りをせざるを得ません。
どうしても廃棄せざるを得ない不運に巻き込まれてしまった場合に備えた保険と言えそうです。
施設賠償責任の保険詳細
同じくウェブサイトによれば、施設賠償責任について、
太陽光発電設備の欠陥や、施設の内外で行われる仕事の遂行に起因して生じた対人・対物事故について、被保険者が負担する法律上の損害賠償責任を補償します。
対人・対物事故が発生した際に支出した初期対応費用や、事故発生時の収集や事業継続のための費用もお支払いします。
施設賠償責任:1億円(1名/1事故)
初期対応費用:1,000万円(1事故)
身体障害見舞費用(1名):10万円
風災見舞金(1名または1被害世帯もしくは1被害法人):10万円
※1事故につき20万円
事業継続対応費用:1,000万円(1事故・保険期間中)
(うち再発防止コンサルティング等費用は1事故につき500万円)
事故例
●風災
施設の不備が原因で、太陽光パネルが飛散し、他者の自動車に衝突してしまった。大型台風により太陽光パネルが飛散し、隣家の人をケガをさせてしまった。損害賠償責任は発生しなかったが、相手に見舞金を支払った。
●土砂崩れ
発電所の土砂崩れにより、近隣の道路をふさいでしまったことについて損害賠償責任の発生に加えて、再発防止策を求められ、コンサルティングを依頼した。
●管理上の過失
敷地内の草刈りをしていたところ、小石が敷地外に飛んでしまい、近くに停めてあった他人の自動車にぶつかって傷をつけてしまった。
と記載されています。
同様に、ウェブサイトの「よくあるご質問」を見て気になったところを抜粋します。
「Q28.太陽発電設備のある敷地にて、草刈り作業を行っていたところ、小石が飛んで通行人が怪我をした場合は補償対象となりますか?
A28. 太陽光発電事業に起因する賠償責任となりますので、対象となります。また、賠償請求を受けて、訴訟や示談交渉において弁護士等に相談した争訟費用も補償の対象となります。(ただし、争訟費用は保険会社の事前同意が必要となります。)」
⇒草刈りでの事故も補償対象とは、手厚い内容です。
「Q29.施設賠償責任保険における「事業継続対応費用」とは何ですか。
A29. 被保険者に補償対象となる事故が発生した場合に、広報対応や再発防止のためのコンサルティング費用、信頼回復広告等の対策を打つために必要な費用のことです。」
⇒確かに「事業継続対応費用1,000万円」との記載を見ても何のことやらでした。個人の太陽光投資家にとってはあまり関係なさそうです。
「Q30.被害者との示談交渉は保険会社が行ってくれるのですか。
A30. 示談交渉サービスはありませんので、原則、保険会社の助言をもとに、被保険者様にて被害者様との交渉を行っていただく必要があります。」
⇒示談は自分で頑張るしかない…。
「Q31.大型台風により、太陽光発電モジュールが近隣住民の自動車にぶつかってしまったためお見舞金を支払ったのですが、風災見舞金の対象となりますか?
A31. 風災見舞金は、他人の建物または屋外設備装置を壊してしまった場合が支払いの対象となります。そのため、他人の自動車のみの損害は風災見舞金の対象外となります。」
⇒パネルが飛んで建物または屋外設備装置を壊してしまったケースが支払いの対象です。周囲に住宅がある発電所、特に近くに自動車が随時駐車しているような発電所だと台風のときなどに心配になりますが、その自動車にパネルが飛んでぶつかっても対象外ということなのでしょう。
アレ?ちょっと待てよ。ウェブサイトには、
「施設の不備が原因で、太陽光パネルが飛散し、他者の自動車に衝突してしまった。」
が事例として挙げられていたはず。
記載が矛盾してない?
疑問に思い、東京海上日動あんしんコンサルティング株式会社(TAC)さんに電話して確認してみました。
その回答は、
施設に不備があり、賠償責任が生じるケース⇒ぶつかった先が自動車でも施設賠償責任保険の対象になる。
施設に不備がなく、賠償責任は生じなかったけど、お見舞金くらい払ったほうがいいかなというケース⇒そのような時に、ぶつかった先が自動車だと風災見舞金の支給対象外になる。
このような切り分けで考えればよいとのことでした。なるほど、矛盾していませんでした。
ちなみに、東京海上日動火災保険株式会社さんによれば、保険業界の一般的な補償として、「見舞金は他人をケガさせた場合(対人事故)にのみ補償するもの」とのことです。
風災見舞金は、風災時に、他人の建物や物置等を壊した場合(対物事故)に見舞金を補償するものですので、
他人の自動車の損害は風災見舞金の対象外ということですね。
このような理解になるそうです。
あわせて、事例
「発電所の土砂崩れにより、近隣の道路をふさいでしまったことについて損害賠償責任の発生に加えて、再発防止策を求められ、コンサルティングを依頼した。」
についても、東京海上日動あんしんコンサルティング株式会社(TAC)さんにこんな質問をしてみました。
「土砂崩れ自体の復旧費用は保険の対象外ですか?」
回答「対象外です。」
残念。賠償責任保険なので、他人に対して与えた損害が対象であり、発電所の復旧までは対象にならないのというのはごもっともです。
やはりダメなのかぁと思ったのですが、
「ただし、流出した土砂で他人に影響があるような場合、土砂の撤去費用は対象になりえます」
とのことでした。これも復旧ではなく撤去ですが、少しは助けになる可能性もありそうです。
オプション:サイバーリスク特約
※ウェブサイトより拝借。
これはオプションです。こちらは都道府県に関わらず、一律6,000円。
ウェブサイトによれば、サイバーリスク特約について、
太陽光発電事業の遂行に起因して、不正アクセス等のサイバー攻撃を受けた場合や、情報の漏えいまたはそのおそれが生じた場合に、その対応のための費用や、実際に発生した情報漏えい等の被害についてなされた損害賠償請求に関する賠償金・争訟費用について補償します。
フォレンジック費用やコンサル費用も補償対象になります。
(フォレンジックって何だろうと思って調べてみたところ、どうやら「セキュリティ事故発生時に原因究明などのためにコンピュータに残された証拠を調査すること」のようです)
事故例
●不正アクセス
遠隔監視システムが何者かに不正アクセスされ、ネットワークを通じて他の電力会社の業務に支障をきたしてしまったため、損害賠償請求を受けた。
●出力制御システムへの不正アクセスのおそれがあったため、不正アクセスの有無について外部機関に調査を依頼した。
●不正アクセスの再発防止策として、コンサルティング会社に依頼して、外部機関による認証取得費用を負担した。
損害賠償責任:1億円(1請求・保険期間中)
サイバーセキュリティ事故対応費用:500万円(1事故・1請求・保険期間中)
などと記載されています。
ウェブサイトの「よくあるご質問」から抜粋します。
「Q32.サイバーリスク(特約)における「サイバーセキュリティ事故対応費用」とは何ですか。
A32. 不正アクセスのおそれがある場合の調査費用や、不正アクセスが確定した場合の原因・被害範囲の調査費用、事態終息に向けた対応、事態終息後の再発防止にかかる費用です。」
⇒情報セキュリティ会社などに支払う費用のようです。
「Q33.出力制御システムがサイバー攻撃を受けて、一般送配電事業者の事業を一部阻害したことで賠償責任を求められた場合、サイバーリスク(特約)の補償の対象となりますか?
A33. 太陽光発電事業に起因して他人の事業を阻害したことによって被る損害賠償責任となりますので、対象となります。」
⇒正直、そんなことで賠償責任を求められることがあるんだ…というのが感想です。
そもそも遠隔監視システムや出力制御システムがなければ、このオプションについてはあまり気にしなくてもよいかもしれません。出力制御システムは、最近のパワコンには付いていることが多いですが、昔のパワコンには付いてなかったものです。保険の加入対象になるのは、出力制御システムがある発電所の所有者、遠隔監視システムの利用者だと思われます。
九州では時々出力制御(出力抑制)が行われていますので、九州など出力制御の対象地域の発電所所有者は、このオプションも検討してみてもよいかもしれません。
ネット完結の簡単に申込みできる保険
ウェブサイトから申し込みできます。逆に、紙での加入手続きは受け付けてないみたいです。この辺りも安い保険料で商品を提供できる理由の一つかもしれませんね。
まとめ
東京海上日動火災保険株式会社さんの新保険が登場しました。
基本補償(廃棄費用+施設賠償責任)が、50kW発電所のケースで13,100円(山口県)~21,750円(三重県、大阪府)です。第三者への賠償保険に廃棄費用がセットされて発電出力50KWで年間約1.7万円の安い保険です。
オプションでサイバーリスク特約を加えると+6,000円ですがオプションを加えても年間約2.3万円で加入できる、もしもの時に備えた保険です。個人的には「施設賠償責任」の部分が魅力的に見えました。
そして、ウェブサイト経由で行うネット完結の簡単に申込みできる保険となっています。
ご自身の発電所の状況や周囲の環境を見て、加入を検討してみてください。
※なお、本コラムは「東京海上日動あんしんコンサルティング株式会社(TAC)」様に電話で確認した内容、「東京海上日動火災保険株式会社」様の捕捉説明を含めて記載しましたが、保険加入の際にはご自身で再度ご確認ください。
それではまた次回、よろしくお願いいたします。
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