【10kW以上50kW未満の低圧】と【50kW以上の高圧】太陽光発電どちらが良い?

2012年から固定価格買取制度が始まり、日本でも太陽光発電に関するニュースを耳にする機会が年々多くなっています。 一般的にニュースなどで取り上げられる太陽光発電は大規模なものが多く、そうしたものは高圧太陽光発電と呼ばれます。それに対し、個人でも投資対象となるものの多くは低圧太陽光発電と呼ばれるものが主流になっています。
目次
50kW未満の低圧連系で設置すると、高圧連系と比べてかかる費用が少ない
高圧の太陽光発電システムと低圧の太陽光発電システムでは必要コストが変わってきます。 設置容量でコストが変わるのはあたりまえですが、高圧の場合ですと高圧受電設備のキュービクルの設置が必要になり、また『自家用電気工作物』として分類されますので経済産業省への届け出や法定定期点検が必要になります。 この法定定期点検は電気主任技術者によって行なわなければいけないため、ここでもコストがかかります。
50kW未満の太陽光発電システムは「低圧連系」に区分されます。低圧連系で設置することで必要となる設備・人件費・検討費用が少なくなり初期コストを抑えることができます。
高圧の設備を設置するなら
基本的に太陽光発電システムは設置容量に比例して得られるメリットが大きくなります。しかし、高圧の太陽光発電設備を設置するのであれば、ある程度の規模が大きくなければメリットは小さくなります。
例えば100kW未満であれば、わざわざ高圧にするよりも2基の低圧太陽光発電システムとして接続する、もしくは1基の過積載低圧太陽光発電システムとした方がコストが安い場合があります。
逆に200kW以上であれば、低圧に区分けして行なうよりも高圧で接続したほうが、低圧一基ごとに必要な機器を設置する必要がないのでコストが安く済みます。
状況によって異なってきますので、あらかじめ販売会社や施工会社に問い合わせておくとより正確な情報を得ることができます。
太陽光発電の「低圧」「高圧」区分の違いはこちらをご覧ください。
太陽光発電の低圧と高圧ってどう違う?それぞれの特徴を解説
50kW以上高圧連系と50kW未満低圧連系を比較
20年後の収益はどうなる?売電収入で比較
ここでは極端な例で具体的に比較してみます。 50kW以上の高圧発電所を「50.1kW」の発電出力、50kW未満の低圧発電所を「49.98kW」の発電出力として計算してみます。
比較 | 50kW以上 | 50kW未満 |
---|---|---|
設置kw数 | 50.1kW | 49.98kW |
年間発電量 (1kWあたり1,000kWhで計算) | 50,100kWh | 49,980kWh |
1年間の売電額 (1kWhあたり37.8円で計算) | 1,893,780円 | 1,889,244円 |
20年間の売電額 (1kWhあたり37.8円で計算) | 37,875,600円 | 37,784,880円 |
20年間の売電収入額は、50.1kWで設置した方が90,720円多くなります。
20年後の利益はどうなる?
次に設置コスト等を含めた20年後の利益がどうなるかみてみましょう。設置費用は1kWあたり30万円として計算しています。
設置容量 | 50kW以上 | 50kW未満 |
---|---|---|
設置費用 (1kWあたり30万円として計算) | 15,030,000円 | 14,994,000円 |
キュービクル費用 | 1,000,000円 | 必要なし |
電気主任技術者による定期点検費用 (月額2万円として計算) | 240,000円 | 必要なし |
電力会社との接続検討費用 | 210,000円 | 必要なし |
合計金額 | 16,480,000円 | 14,994,000円 |
初期投資の回収にかかる期間 | 8.7年 | 7.9年 |
20年後の想定利益 | 21,395,600円 | 22,790,880円 |
差額 | - | 50.1kWと比べて 1,395,280円のプラス |
結果は49.98kWの方が100万円以上のプラス収益となりました。
今回は極端な事例を取り上げさせていただいたため、このような結果となりましたが、70kWクラスの設置であっても、キュービクルの費用による負担は大きく、50kW未満の方が収益としてはプラスとなる場合があります。また、仮にキュービクルが壊れたり修理しなければならなくなった場合はかなりの減益となってしまうでしょう。
全てのケースに当てはまるわけではありませんが、低圧連系で設置する場合はパワコンが住宅用の単相2線式となります。 現状、産業用のパワコンについては保証が1年となっていることが多く、10年保証のつく住宅用は有利です。 故障に関しても複数のパワコンを接続している方がリスクの分散ができます。
高圧連系は損なの?
一概に損とはいえませんが、100kWクラスの設置であれば、50kW未満の低圧連系を2つ設置する方が初期コストを抑えられるため、高圧で100kWを設置するよりは収益の増加が見込めます。 高圧連系で設置をする場合は、200kWクラスでの設置が一つの目安となるでしょう。
リスク分散
土地付き太陽光発電システムの大半は低圧の太陽光発電設備になります。 土地付きの場合ですと高圧で一箇所に太陽光発電システムを設置するよりも、複数箇所に低圧の太陽光発電を所有した方がリスクを分散できるというメリットがあります。
高圧の太陽光発電設備をご検討の方は、低圧の土地付き太陽光発電設備を複数設置・購入することをリスク分散のために考えてもいいかもしれません。
みなし高圧系統連系
『みなし高圧』とは、50kW以上の太陽光発電システムを区分けして低圧として導入することを言います。基本的に50kW未満の太陽光発電は低圧連系、50kW以上は高圧連系となります。
例えば、100kWの太陽光発電システムを導入しようとする時に100kWを1基で導入すると高圧案件となってしまいますが、2基に分けて導入することにより低圧として太陽光発電事業行なうことができます。
【※重要】低圧連系案件の分割禁止
平成26年4月1日に固定価格買取制度の運用ルールに変更があり、50kW未満の低圧連系案件の分割禁止の内容が盛りこまれました。つまり、広い土地に太陽光発電システムを設置する場合に区分けして低圧連系の発電設備を複数設置することが出来なくなりました。
大規模設備の分割対策のための認定基準の追加及び具体的な審査基準について(いわゆる「低圧分割」対策)【施行規則第8条関係】以下のような事情にかんがみ、意図的な安全規制等の回避、事業者間の不公平性や社会的非効率性の発生を防ぐため、一の場所において設置される再生可能エネルギー発電設備を複数の小規模設備に分割しようとする場合には、認定を受けることができないよう認定要件を追加することとします。
具体的な審査基準は、①認定申請者が実質的に同一であること、②認定に係る場所が地理的に近接していること、③認定申請や工事が同時期又は近接した時期に行われること、の3つの要件を満たす場合を分割案件とします。ただし、分割による安全規制等法規制の回避の有無、事業者間の不公平性や社会的非効2 率性の発生などの観点から、実質的に評価し、分割案件に該当しないとすることがあります
なお、本措置は、施行日(平成26年4月1日)以降に申請を受け付ける全ての再生可能エネルギー発電設備の認定に適用します。
引用元:イーガブ パブリックコメント