太陽光発電の設置費用、相場はいくらくらい?
資産運用や遊休地の活用を目的に太陽光発電を勧められたり、検討されたことのある方は多いのではないでしょうか。
しかし太陽光発電は、売電価格が下がったからもう収益化できないと思っていませんか。
ズバリ言いましょう。太陽光発電はまだまだ収益化することができます!
今回はその収益化の内容を、設置費用やその他のコスト、そしてどのくらいの利回りになるのか順を追って詳しく解説していきます。
目次
太陽光発電の設置費用・システム費用・物件価格?
(経済産業省資源エネルギー庁「太陽光発電について」2018年11月)
太陽光発電の費用をインターネットで調べてみると、いろいろな言葉が出てきます。設置費用やシステム費用、物件価格などなど。。。
いったいこの言葉の違いはなんだろうと、混乱した方も多いのではないでしょうか。
結論から言ってしまうと、設置費用・システム費用・物件価格はほぼ同じ意味を指します。
土地以外の太陽光発電を設置するためにかかる全ての初期費用が設置費用に当たります。 土地を所有している方で太陽光発電の設置を検討されている方はこちらが指標になります。
一方で、物件価格は「土地付き太陽光発電」でよく見られる表現です。
土地と太陽光発電システムがセットで販売されるため、設置費用と土地代の合計価格を指します。 そのため太陽光発電と土地を併せて検討されている方は、こちらの物件価格を参照することになります。
太陽光発電システム費用は太陽光発電にかかる設備、パネルやパワコンや架台などのみをイメージしがちですが、経済産業省のコスト動向に関する資料では「太陽光発電設備のシステム費用(太陽光パネル、パワコン、架台、工事費を含む)」となっています。 また、経済産業省の定期報告データでは土地代に関して、土地を購入する場合の土地購入費はシステム費用の「その他」の費目として、土地を賃借する場合の土地賃借料は運転維持費の「土地等賃借料」の費目として計上しているため、設備費用、工事費、土地代も含まれることから物件価格とほぼ同じものになると考えて良いでしょう。
太陽光発電の設置費用の内訳はどういったものが含まれる?
「設置費用」と一口に言っても、どんなものが含まれているのかよくわからないですよね。どんなものが含まれているかわからないと価格を見ても適正かどうかを判断できません。 投資採算性を重視する上で、投資費用にあたる設置費用はIRRを考える上でも非常に重要なので、どういったものがあるかしっかり把握していきましょう。
太陽光発電の設置費用は、大きく以下の3つに分けられます。
- 設備一式
- 工事費用
- 手続き費用
1つ1つどういったものか、見ていきましょう。
設備一式(主に10kW以上50kW未満)
太陽光発電システムを構成する設備一式の費用です。 太陽光発電システム本体を構成する設備と、それ以外の補助的な設備があります。
構成設備は太陽光発電を稼働させるために必須な設備で、太陽光発電パネルやパワーコンディショナー・ケーブル類・架台などがあります。 こちらは、まさに太陽光発電そのものなのでイメージしやすい方が多いでしょう。
一方で、それ以外の補助的な設備は少しピンと来ない方もいるかも知れません。 たとえば、パワーコンディショナや接続箱などの電気機器をまとめて格納する接続箱や集電箱という倉庫のようなものがあります。
電気機器は屋外に設置されるため、つねに電気機器の大敵である雨や風、砂などにさらされます。 集電箱に格納することで風雨や砂埃から電気機器の劣化を防ぎ、長く使うことができます。
またその他にも、人や動物の侵入を防ぐためのフェンスや、雑草の影による発電低下や架台の劣化防止のための除草シートなどもあります。
このように補助的な設備は太陽光発電を設置する環境や設備維持の方針によって必要性が変わります。必須ではないものの太陽光発電設備の長期的な維持を考えると、とても重要な設備です。
(※フェンスは改正FIT方の施行により必須になりました。)
一般的な太陽光発電設備
- 太陽光パネル・・・太陽の光エネルギーから電気を作り出す装置。使用する原料により様々な種類あり。
- 架台・・・太陽パネルを取り付ける台。
- 接続箱・・・太陽電池からの複数の配線を一つにまとめるための箱。
- パワーコンディショナー・・・太陽電池により作り出された直流の電気を、交流に変換する装置。
工事費用
読んで字のごとく工事にかかる費用です。
ただ一口に工事と言っても、太陽光発電の組み立て工事から電気工事・土地の造成費などさまざまな工事があります。
それぞれ専門の工事業者がおり各々に費用がかかりますが、たいてい工事費用として一括りにされている場合が多いです。※造成とは土地をならす、きれいにする工事のことです。
最初から学校のグラウンドのようにきれいな土地は少なく、たいてい傾斜があったり木があったり、凹凸があったりします。 そういった土地に太陽光発電を設置するためには、土地をならしたり場合によっては基礎を打つ必要があります。
手続き費用
太陽光発電を設置するためには、さまざまな手続き・申請が必要となり、それに掛かる費用です。
たとえば、資源エネルギー庁への新規認定申請や、電力会社への系統連系申請、各自治体への補助金申請などがあります。 申請には専門知識が必要で、且つ種類も多いため一般的に個人でおこなうにはかなり難しい手続きです。
ですが安心してください。 このような手続きは、販売店や設置業者が代行で申請してくれます。 もちろん、自分で調べて申請することも可能ですが申請方法の変更も頻繁で内容も複雑なため、あまりおすすめしません。
また、申請が遅れてしまうと工事の工期にも影響を与えてしまいます。いち早く稼働させ収益をあげるためには、やはり専門業者にお任せするのが安心です。
どうすれば設置費用を安くすることができる?
やはり、かかる費用は少しでも抑えたい!というのが人情ですよね。また、利回りを上げるためにも設置費用を安くすることは非常に重要な要素です。
ズバリ、設置費用を安くするためには複数の販売店から「相見積り」をとって比較することが重要になります!
同じメーカーの太陽光発電パネルを使う場合でも、購入する販売店が違うと、規模にもよりますが費用に差が生じます。 相見積りをとらなければ、高額な設置費用のまま設置してしまい、結果として利回りが低い投資になってしまいます。
さて、実際に「相見積り」をとって比較をする際には、注意しなければいけない点があります。
それは、太陽光発電のシステム容量(kW)です。
システム容量は、太陽光発電の発電パワーだと思ってください。つまり、システム容量のkW数が大きければ大きいほど発電量も比例して大きくなります。
同じ土地に太陽光発電を設置する場合でも、太陽光発電パネルや設置する架台の種類や条件でシステム容量が変わってきます。
たいてい、このシステム容量がマチマチで、単純に比較するのが難しい事が多いです。そんな場合は、kW単価(システム単価とも言われます)で比較しましょう。
システム単価での比較
たとえば、[A:4.0kWで200万円]と[B:4.5kWで220万円]の、2物件で比較してみましょう。
ただ単純に比較すると、AのほうがBよりも20万円安いことになります。 しかし、kW単価で比較するとAが50万円/kW、Bが48.9万円/kWと、Bのほうが安くなります。
つまり、BはAよりも「割安」であることがわかります。 このようにkW単価で比較することでどちらがより「割安」でお得かを検討できるんです。
実はこのkW単価は太陽光発電の価格の指標となっており、「相場の価格」を経済産業省の調達価格等算定委員会で毎年調査・公開しています。
この「相場」も、実際の見積り価格と比較をしてディスカウント交渉の材料にしましょう。
経済産業省 調達価格等算定委員会
平成 30 年度以降の調達価格等に関する意見(案)そのほか、設置費用の詳細な内訳を出すように依頼して、設備費用や工事費用の内訳で比較して交渉するのも効果的です。
設置費用以外に気をつけたいこと
少し設置費用からは話がそれますが、販売店を決める際には会社の経営状況も判断材料の1つにしましょう。
太陽光発電は、10年以上の長期運用を続けるため、維持メンテナンスも重要です。購入した会社が倒産してしまうと、その後のアフターサービスを受けられなくなってしまう恐れがあります。
そのため維持メンテナンスやアフターサービスの観点からも、購入する販売店の経営の健全性も合わせて確認しましょう。
設置費用以外のランニングコストも計算しましょう
太陽光発電は、10年以上の長期運用していく資産になります。そのため、初期にかかる設置費用だけではなく、設備の維持・メンテナンスにランニングコストがかかります。 もちろん、ランニングコストも利回りを算出する際に、無視できない費用です。
それでは、ランニングコストには、どのようなものがあるのかを見ていきましょう。
修繕費
まずは、故障・劣化した設備の修理・交換にかかる費用です。
太陽光発電パネルやパワーコンディショナーなどの電気機器が、最も故障・劣化しやすい設備です。
特にパナーコンディショナーは、基本的に10年すぎると1度は交換が必要になります。費用はだいたい1台あたり、20万円〜40万円ほどです。
また、設備の劣化はもちろんのことながら、長期運用すればするほど自然災害や盗難などのトラブルに巻き込まれるリスクも高くなります。
そのような、トラブルへのリスクヘッジとして、さまざまなサービスが展開されています。
保守・管理
たとえば、太陽光発電所が正常に発電しているかを確認する遠隔監視システムがあります。発電量に異常を感知すると自動的に警告、サービスマンが駆けつけて点検を行ってくれます。
また、発電量が低下しないようにドローン点検サービスや太陽光発電パネルの清掃サービスもあります。パネルの汚れ、ヒビやワレなどをいち早く発見し対処することで安定した発電量をキープできます。
太陽光発電の安定した収益化のために、いま非常に注目されているサービスです。
保険・補償
さらに太陽光発電の設備を動産として、火災保険、動産保険、売電収入補償などの保険もあります。
近年、ゲリラ豪雨や台風など異常気象が増えているため、こういった保険もリスクヘッジとして検討すべきサービスの1つです。
このように、維持メンテナンスのサービスにもさまざまな種類があります。
維持メンテンナンスの方針や、設置する環境によっても有効なサービスは変わります。そのためコストとリスクを天秤にかけ、はずせないサービスを選び取っていきましょう。
2018年以降、10円台になった売電価格でも利益はあるの?
10kW以上の全量買取の売電価格は、固定価格買取制度がスタートした2012年時点では40円でした。しかし2018年にはなんと18円まで下がりました。実に当初の価格から50%以上も下がっています。
このように制度スタート時と比べて、「大きく売電価格が下がってしまったため、もう太陽光発電は収益が出なくなった」という記事を見かけることもあるかと思います。 しかし、少し考えてみてください。現在も太陽光発電の販売や設置をしている会社はたくさんあります。つまり、いまでも太陽光発電の需要はあるということです。
なぜ需要があるのか?もうお気づきでしょう。
そうです、太陽光発電はいまでも「十分に収益化することができる」からです。
では、なぜ売電価格が50%以上も下がったにもかかわらず「収益化することができる」のか、そのカラクリをお教えしましょう。
それは、太陽光発電の「設置費用も一緒に下がっている」からです。
つまり必要な投資額が下がっているので、リターンとなる売電価格が下がったいまでも十分収益化することができるのです。
実は売電価格は『設置費用の投資回収できること』を指標に決められています。
「どうすれば設置費用を安くすることができる?」の項目で述べた調達価格等算定委員会が、調査した設置費用を十分に回収できるように売電価格を設定しているのです。つまり、設置費用が年々下がっているからそれに合わせて売電価格も「下げて」いるのです。
収益化できるカラクリがわかったところで、投資回収の期間について述べましょう。
投資回収にかかる期間は、設置条件によって異なりますが、販売店のシミュレーションを参考に算出することができます。 シミュレーションには、ランニングコストが含まれていない場合もありますので、しっかり確認をしましょう。
多くの場合、10年~15年で設置費用を回収することができます。そして、投資回収後は、売電収益で利益を生み出し続けてくれます。
どの程度の利回りになるのか、実際に計算してみます。
たとえば、システム容量45kWの太陽光発電で考えてみましょう。
年間収益になる売電収益は、[ 売電価格(2018年は18円/kW)×年間発電量 ]で計算できます。
太陽光発電は、だいたい[ システム容量×1,000 ]が年間の発電量になりますので、45kWであれば45,000kWhです。
つまり、年間81万円の売電収益になります。
次に設置費用は、3の「どうすれば設置費用を安くすることができる?」の項目で述べた、調査結果から2017年で30万円/kW、つまり45kWで1,350万円です。
年間81万円の収益で、投資額は1,350万円なので、利回りは6.0%になります。
仮にランニングコストとして、経費率を10%で計算しても、5.5%の利回りです。
設置費用が2017年時点と高めの費用としているので、実際にはこれよりも利回りは良くなります。
どうですか、少し検討してみたくなってきませんか?
まとめ
太陽光発電の設置費用について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。設置費用を安くするためには、「相見積り」して「ディスカウント交渉」することが近道でした。
また太陽光発電の売電価格は年々下がっていますが、設置費用の相場も一緒に下がっているため太陽光発電はまだまだ十分収益化できることがわかりましたね。
遊休地がある方や資産運用を始めたいとお考えの方は、太陽光発電の設置を検討してみてはいかがでしょうか。