太陽光パネル・モジュールの廃棄に関して【台風・自然災害】
今年2018年は豪雨や台風が多く、太陽光発電所でパネルが飛ばされたり崩れたりする例が多くあったようです。 飛ばされたパネルや崩れた発電所の中にはそのまま放置されているものもあるという話を聞くのは残念なことです。
被害に遭われたオーナーは早急に対処することが望まれますが、どう対処するのかよくわからないこともあるでしょう。 特にパネルの処理が分かりにくいかもしれませんので、少し調べてみました。
太陽光パネルの材料
今の太陽光パネルには処理が難しい材料は含まれていないと思います。
海外の太陽光パネルの中にはカドミウムを使ったものもありますが(米国、ファーストソーラー製)、これは日本には輸入されていません。日本にある太陽光パネルで処理に一番問題になりそうなのは、内部配線に使われているハンダに鉛が含まれているかどうかでしょう。
昔は殆どの電気製品に鉛入りのハンダが使われていましたので、鉛が含まれているとしても処理方法は確立しているだろうと思います。また、太陽電池も最近は鉛フリーのものが出てきているようで、その場合の処理は容易ですが、鉛が含まれているかどうかはメーカーに確認しなければなりません。
他に半導体や電極材料に添加される物質はごく微量なので環境に影響を与えるほどとは思えません。このように、太陽光パネルに技術的に処理困難なものはそれほど含まれていると思われませんが、パネルの廃棄方法はまだ確定していませんので、メーカーや産業廃棄処理御者と相談しながら処分しなければならないと思われます。
太陽光パネル廃棄の技術開発状況
太陽光パネルには複雑な材料が含まれていないとはいえ、廃棄にコストをかけられませんから低コスト処理技術の開発が必要になります。
それに向けた技術開発にNEDOが2015年に取り組んだ例がありました(「太陽電池リサイクル」の採算性、低コスト化するプロジェクトが始動)。
5つの研究開発テーマが採択されており、まだどのような技術が有望なのか分かりませんが、この技術開発でNEDOが掲げた開発目標は「パネル分解処理コスト5円/W」となっています。
おそらく将来的にはこれぐらいのコストでパネル処理できるだろうと見られますが、実際には発電所の解体や運搬の費用や管理費も必要ですし、太陽光発電所全体の廃棄となると他の機材の処理も必要となり、もっと高くなります。とは言え、将来の廃棄費用を想定する場合に、上記の目標コストは参考になります。
JPEA発表の太陽光パネル廃棄処理業者
今年は豪雨や台風により使えなくなったパネルが予想外に多く発生している可能性があります。
太陽光発電協会(JPEA)では被害に遭ったオーナーがパネル処理に困っている場合に備えて、パネルの廃棄処理業者の一覧を発表しました(パネル処理業者 下表)。
JPEAの報告ではこれらの業者は「適正にリサイクルできる」となっていますので、パネル処理に困っている方はこれらの業者に相談すると良いでしょう。
(A) (B) (C) 中間処理業者の名称(注1)(注2) 連絡先 ホームページリンク 連絡先所在地: 処理施設が連絡先またはその近隣の都道府県以外にある場合は( )内に処理施設所在地を示す TEL番号 1 ㈱マテック 石狩支店 北海道石狩市 0133-60-2000 http://www.matec-inc.co.jp/ 2 ㈱青南商事 青森県弘前市 0172-35-1413 http://www.seinan-group.co.jp 3 ㈱環境保全サービス 岩手県奥州市 0197-25-7522 http://www.khs.ne.jp/ 4 ㈱環境開発公社エムシーエム 宮城県大崎市 0229-29-2228 http://www.kk-mcm.co.jp 5 ㈱エーシー 山形県米沢市 0238-27-0070 http://www.ac-ce.com 6 日曹金属化学㈱ 東京都台東区 (福島県) 03-5688-6383 http://www.nmcc.co.jp 7 水海道産業㈱ 茨城県常総市 0297-22-0077 http://www.mitsukaido.net/ 8 ㈱浜田 東京都港区 03-6459-1352 https://www.kkhamada.com/ 9 東芝環境ソリューション㈱ 神奈川県横浜市 045-510-6833 http://www.toshiba-tesc.co.jp/index_j.htm 10 ㈱エコネコル 静岡県富士宮市 0544-58-5800 http://www.econecol.co.jp/ 11 ハリタ金属㈱ 富山県高岡市 0766-64-3516 http://www.harita.co.jp/ 12 リサイクルテック・ジャパン㈱ 愛知県名古屋市 052-355-9888 http://www.r-t-j.co.jp 13 ㈱浜田 大阪府高槻市 072-686-3500 https://www.kkhamada.com/ 14 平林金属㈱ 岡山県岡山市 086-246-0011 http://www.hirakin.co.jp/ 15 ㈱スナダ 広島県東広島市 082-433-6110 http://www.e-sunada.com 16 金城産業㈱ 愛媛県松山市 089-972-3300 http://www.eco-kaneshiro.com 17 ㈱リサイクルテック 福岡県北九州市 093-752-5322 https://www.shinryo-gr.com/recycle-tech.html 18 九州北清㈱ 宮崎県小林市 0984-24-1170 http://www.k-hokusei.co.jp 19 廃ガラスリサイクル事業協同組合* 岩手県奥州市 0197-51-1281 http://www.glassrecycle.ne.jp 20 ガラス再資源化協議会* 東京都港区 03-5775-1600 http://www.grcj.jp 21 ㈱啓愛社* 東京都千代田区 03-6206-8116 http://www.keiaisha.co.jp/index.html 22 PVテクノサイクル㈱* 東京都大田区 03-5755-1515 http://www.pvtechno.info (注1)中間処理業者の名称は, 原則として連絡先または処理施設の住所の順, 北から南, 東から西の順に記載する。
(注2)名称の後に*があるものは, リサイクル率が一定程度であると自己宣言した業者を紹介しようとする団体・会社(引用:JPEA「適正処理(リサイクル)の可能な産業廃棄物中間処理業者名 一覧表」2018/9更新)
※なお、上記一覧は事業者から提供があった情報を記載しているため、JPEAでは内容について一切の責任を負わないとしていますので、自己責任で判断するよう注意してください。
ざっくりと廃棄費用をシミュレーション
では、実際にどれくらいの費用、どんな手続が必要なのかをネクストーエナジー社出資の合同会社アールツーソリューション社の情報を例にみてみたいと思います。
- 契約等:1~2ヶ月前に産業廃棄物処理委託契約を締結
- およその費用:1枚2,000円~3,000円程度(メーカー、枚数、型式によって異なる)
また、廃棄パネルの主原料となるガラスはそのままガラス原料へ、アルミフレームはアルミ製品の原料となります。
産業用太陽光パネルの場合は大きいもので1枚:300W、小さいもので1枚:220W程度なので、ざっくり1Wあたり10円程度の廃棄費用がかかると考えてよいでしょう。 これを基に計算すると、50kW低圧太陽光発電所で過積載が無い場合で50,000W * 10円 = 50万円程度の廃棄費用になり、運搬費用などもかかることから発電所を1基まるごと廃棄すると考えると、2018年の現時点ではこれ以上の費用がかかるのではないでしょうか。
(参考:アールツーソリューショ「よくある質問」)
廃棄パネル処理の課題
パネル処理の最大の問題は、まだ処理量が少ないという点にあると思います。
太陽光パネルは強化ガラスと樹脂で太陽電池セルを強固に封止して作られていますので、処理にはそれなりの装置が必要です。しかし現状では処理量が少ないため設備投資が難しく、どうしてもコストがかかってしまいます。
また、パネルの廃棄処理費用についてはオーナーが負担するものですが、状況によってはオーナーが負担できず放置する恐れもあります。経産省はオーナーにパネル処理費用を確実に準備させるために、太陽光発電の運用定期報告で廃棄処理費用の準備計画について報告することを義務付けました。
これと同時に第3者により廃棄費用を積み立てるようなシステムづくりについての検討も始めたようですが、どのようなシステムができるのかは未定でこれからの課題となっています。
終わりに
パネル廃棄量は産業用FITが満期を迎える2040年頃から急に増えてくることが予想されます。処理量が増えるとコストの問題などは解決されるので、それまでに技術面や資金面の問題が整理されていくと見られます。
ただ、まだかなり先の話であるため具体的な形にはなっておらず、今のところ先行きが見えない状況です。今年の台風被害のように予定外に発生してしまった廃棄パネルについては、多少余分にコスト負担して産業廃棄物として取り扱うしかないと見られます。
コラムニストさんの見解も御覧ください
太陽光パネルの廃棄はどうなるか
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