太陽光発電の「家庭用」と「産業用」の違いとは?
太陽光発電投資を検討されている方の中には「家庭用と産業用の太陽光発電は何が違うのか?」と疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。この2つでは売電期間や売電価格などが異なります。このページでは家庭用と産業用にどのような違いがあるのかを解説していきます。
ちなみに、「家庭用」の太陽光発電は「住宅用」とも言われますが、どちらも同じものだと考えてもらって大丈夫です。
まずは家庭用と産業用の最も大きな違いである、出力について見ていきましょう。
家庭用と産業用の出力の違い
太陽光発電の家庭用と産業用の大きな違いは、太陽光システムの出力になります。
家庭用
家庭用発電システムは一般家庭の屋根に設置し、出力は10kW未満です。
産業用
産業用太陽光発電は工場の空き地などの遊休地や工場屋上に設置され出力は10kW以上のものです。
電気の使い方
次に大きな違いとしては、太陽光発電システムにより発電された電気の使い方になります。
家庭用
家庭用発電システムの場合、太陽光発電システムで発電された電気は、まず家庭で消費されます。その余った余剰分を一般の電力系統へ流し、その分を買い取りして貰います。(余剰買取と言います)
産業用
産業用太陽光発電システムは、発電した電気はすべて一般の電力系統へ流し、その分を買い取りして貰います。(全量買取と言います)
家庭用(余剰買取)と産業用(全量買取)の違いは10kW以上か10kW未満
産業用という呼ばれ方から、「一般住宅では全量売電はできないの?」と思われる方も多いようですが、設置容量が10kW以上になると一般住宅でも全量買取制度の対象になります。反対に店舗や事務所などの事業所であっても、10kW未満の設置容量であれば10年間の余剰買取制度が適用されます。発電した電力を全部売る=産業用、一部、全部家庭で利用する=家庭用と覚えておくとよいでしょう。
買取価格(売電価格)と買取期間
買取価格(売電価格)と買取価格(売電価格)を保証する期間ついても家庭用と産業用では違いがあります。
家庭用
平成28年度で太陽光発電のみ設置された余剰買取の場合は、出力制御機能がある場合は33円、出力制御機能がない場合は31円です。太陽光発電と燃料電池などが併設されている余剰買取の場合(ダブル発電)は、出力制御機能がある場合は27円、出力制御機能がない場合は25円となっています。なおこの買取期間は、設備の種類に関わらず10年となっています。
10kW未満 | ||||
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余剰買取 | ダブル発電・余剰買取 | |||
出力制御対応機器 設置義務なし | 出力制御対応機器 設置義務あり※ | 出力制御対応機器 設置義務なし | 出力制御対応機器 設置義務あり※ |
|
調達価格 | 31円 | 33円 | 25円 | 27円 |
調達期間 | 10年間 | 10年間 |
産業用
平成28年度で24円+税で買取期間は、20年となっています。
10kW以上 | |
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調達価格 | 24円+税 |
調達期間 | 20年間 |
家庭用太陽光発電の場合、タブル発電かどうかで買取価格(売電価格)が変わりますが、ところでダブル発電とは何でしょうか?
家庭用のダブル発電とは?
「ダブル発電」とは住宅用太陽光を設置している家が家庭用燃料電池(エネファーム)や家庭用ガスコジェネ(エコウィル)などの自家発電設備等を併設していることを言います。
ダブル発電の買取価格(売電価格)が安いのはなぜか
先ほど説明したダブル発電を行うと、太陽光と自家発電設備等でガスを使って電気を発電することになります。自家発電設備等で発電された電気は自家消費され、太陽光で発電された電気は使わずに売電するため、売電する電気量は増える(押し上げ効果)ことになります。
下の画像のようなイメージです。
画像元:太陽光発電の買取制度について
固定価格買取制度では太陽光で発電された電気は買い取りの対象ですが、自家発電設備で発電された電気は対象ではありません。しかし、太陽光で発電された電気なのか、自家発電設備で発電された電気かを判断することが現状ではできないため、ダブル発電では買取価格(売電価格)が低くなっています。
そうすることによって、太陽光発電以外で発電された電気の売電を抑制しています。
補足
10kW以上の場合は買取期間は20年のままで全量か余剰か選ぶことができます。ただし系統連系の方法が異なるため、余剰から全量へ途中で変更することはできません。もし全量に変更したい場合は新たに契約し直すか、別の場所で10kW以上の太陽光発電を設置する必要があります。余剰か全量のどちらがよいのかは、設置前の段階で決めておきましょう。
補助金
家庭用
10kW未満までの家庭用太陽光発電システムは国、地方自治体等の補助金対象となる場合があります。お住いの地域で補助金が利用できるかどうかは下記をご覧ください。
産業用
産業用太陽光発電システム(10kW以上)の全量買取、つまり、投資用の太陽光発電システムについては利用できる補助金はありません。
ただし、売電が目的ではなく自家消費が目的の太陽光発電システムであれば、補助金が使える可能性があります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
自家消費型でも太陽光発電にはメリット多数あり
10kW以上は補助金がでない?
国からの補助金は9.99kW以下が対象となっているため、10kW以上の太陽光発電設備は補助金がもらえません。ただし補助金は国以外にも都道府県や市区町村でも支給されています。10kW以上の太陽光発電設備でも補助金がもらえる場合もあるので、住んでいる自治体の補助金情報は必ず確認しましょう。期間限定で交付される場合もあるので、こまめにチェックするとよいでしょう。
事業所や店舗向けの補助金が交付されている自治体もあります。それぞれ支給には要件があるので、事前に確認するようにしましょう。補助金の申請は面倒なものです。施工業者に相談して代行してくれるか確認してみましょう。
太陽電池モジュール相違点
家庭用太陽電池は「住宅の屋根に載せる」ということで設置方法、使用環境はほぼ同じなのに対し、産業用の場合には「ビルの屋上に載せるので風が強い」「沿岸地域に載せるので塩害対応が必要」など設置方法、使用環境が変わります。そのため家庭用はキット化されている場合が多く、産業用は、専用設計となる場合が多いです。
パワーコンディショナー相違点
家庭用太陽光発電用パワーコンディショナは通常2kW~5kW用です。10kW以上の産業用太陽光発電の場合には10kWのパワーコンディショナを使用するのが一般的です。100kWシステムであれば、10kWのパワーコンディショナを10台連結させます。
設置架台
家庭用
家庭用太陽光発電の設置架台は屋根に置くことが多いです。そのため太陽電池モジュールと同様に住宅の屋根材に合わせ、予め様々なパターンでキット化されています。
産業用
10kW以上の産業用太陽光発電の場合、屋根に取り付けるというケースは少なく、ビルの屋上や遊休地などに野立て設置するため、架台は全て特注品専用設計となる場合が多いです。
10kW以上の設置に必要な面積は?
1kWを設置するには10㎡程度の面積が必要です。一般的な個人住宅の屋根に載せることのできるモジュールの容量は4~5kW程度です。10kW以上の設置にはある程度の広さが必要です。屋根だけに載らない場合はカーポートや倉庫、庭などに併設して、合計10kW以上であれば全量買取制度の対象になります。実際にどのくらいの面積が必要になるのかは現地での調査が必要です。産業用の施工に対応している業者に見積もり依頼をするとよいでしょう。
まとめ
20年の全量売電は有利
国からの補助金がもらえないというデメリットはありますが、やはり20年間、全量で売電できるのは有利です。余剰売電の場合も10年の買取期間が終了した後、自分で発電した電力を利用することはできますが、20年に渡って全ての電力を買い取ってもらえるのは収益的にも魅力があります。
北面への設置やメーカーの規定を守らない施工は論外ですが、10kW以上を設置できる環境であれば20年間の全量売電を行うのがオススメです。