ソーラーシェアリングの失敗事例と対策|普及しない根本的な問題点
| カテゴリ:太陽光発電投資の基礎知識
ソーラーシェアリングについて、農業と発電を両立させる画期的な仕組みとして注目されていますが、その一方で失敗事例も少なくありません。
普及が進まない背景には、営農の継続性や収支計画に関する根本的な問題点や課題が存在します。
この記事では、ソーラーシェアリングの具体的な失敗事例を分析し、リスクを回避して事業を成功に導くための対策を解説します。
問題点を正しく理解し、適切な計画を立てることが重要です。
目次
はじめに:ソーラーシェアリングとは農業と発電を両立させる仕組み
ソーラーシェアリングとは、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光パネルを設置し、農業を続けながら太陽光発電を行う取り組みです。
「営農型太陽光発電」とも呼ばれ、同じ土地で農業収入と売電収入の2つの収益を得られる可能性があります。
この仕組みは、作物の生育に必要な日光を確保しつつ、余剰の太陽光を発電に活用するという考え方に基づいています。
農業経営の安定化や耕作放棄地の有効活用、再生可能エネルギーの普及といった複数のメリットが期待されており、持続可能な農業の新しい形として注目されています。
ソーラーシェアリングが失敗に終わる2つの根本的な原因

ソーラーシェアリングが失敗する根本的な原因は、「営農の失敗」と「収支の失敗」の2つに大別されます。
営農の失敗は、太陽光パネルの影により作物の収穫量が基準値を下回り、事業継続に不可欠な一時転用許可が取り消されるリスクを指します。
一方、収支の失敗は、高額な初期費用に対して売電収入が想定通りに伸びず、投資回収が困難になるデメリットです。
これらの問題点は相互に関連しており、どちらか一方でも計画が崩れると事業全体が立ち行かなくなる可能性があります。
【営農の失敗】作物の収穫量が基準値を下回り許可が取り消される
ソーラーシェアリングにおける最大の失敗要因は、営農の継続が困難になることです。
太陽光パネルを設置することで生じる日照不足が作物の生育に影響を与え、収穫量が減少する問題があります。
制度上、ソーラーシェアリングを行う農地は、地域の平均収穫量に対して概ね2割以上の収量減少が認められないと定められています。
この基準を下回った場合、農地の一時転用許可が更新されず、設備の撤去を命じられる可能性があります。
このデメリットを回避するためには、日陰に強い作物の選定や栽培技術の工夫が不可欠です。
【収支の失敗】想定より売電収入が伸びず初期費用を回収できない
ソーラーシェアリングは、一般的な野立て太陽光発電と比較して架台を高く設計する必要があるため、初期費用が高額になる傾向があります。
この投資を売電収入と農業収入で回収する計画ですが、売電価格(FIT価格)の低下や、天候不順による発電量の変動リスクが存在します。
当初のシミュレーション通りに収入が伸びず、15年以上経過しても初期費用を回収できないケースも少なくありません。
また、ソーラーシェアリングは事業の不確実性から金融機関の融資審査が厳しくなる傾向もあり、資金調達の段階で計画が頓挫するリスクもあります。
【事例別】ソーラーシェアリングで実際に起きた5つの失敗パターン

ソーラーシェアリングの導入には、綿密な計画が不可欠です。
しかし、設計ミスによる作業効率の低下、不適切な作物選定による収穫量の激減、自然災害への備え不足、メンテナンスの怠慢、そして制度理解の欠如による事業撤退など、様々な失敗事例やトラブルが報告されています。
これらのニュースや事例から学ぶことで、同様の過ちを避け、より現実的で持続可能な事業計画を立てることが可能になります。
事例①:設計ミスで農業機械が使えず作業効率が大幅に悪化
ソーラーシェアリングの設計段階で、日常的な農作業の動線を軽視したために失敗するケースがあります。
例えば、支柱の間隔が狭すぎたり、架台の高さが不十分だったりすると、トラクターやコンバインといった大型の農業機械がスムーズに通行できなくなります。
これにより、手作業での範囲が増え、作業効率が大幅に悪化するトラブルが発生します。
結果として、人件費の増加や作業時間の長期化を招き、農業経営そのものを圧迫する問題に発展しかねません。
農業の実態に即した設計が極めて重要です。
事例②:パネルの影を考慮しない作物を選び収穫量が激減
太陽光パネルの設置による日照量の減少は避けられませんが、その影響を考慮せずに作物を選定した結果、収穫量が大幅に減少する失敗例は少なくありません。
特に、トマトやナス、キュウリといった十分な日照を必要とする夏野菜は、パネル下での栽培には不向きです。
収穫量が地域の平均と比較して2割以上減少すると、農地の一時転用許可が取り消されるリスクがあります。
最新の研究では、日陰に強い作物の栽培データも蓄積されているため、専門家と相談し、その土地の環境やパネルの遮光率に適した作物を選ぶことが効果的な対策となります。
事例③:自然災害への備えが不十分で設備が倒壊・破損
ソーラーシェアリング設備は屋外に長期間設置されるため、台風や豪雪、地震といった自然災害のリスクに常に晒されています。
設計や施工が不十分な場合、強風でパネルが飛散したり、積雪の重みで架台が倒壊したりする可能性があります。
こうした設備破損は、売電収入の停止だけでなく、修復のための多額の費用負担に直結します。
事業計画の段階で、地域の気候特性を考慮した頑丈な設計を行うことはもちろん、万が一の事態に備えて動産保険に加入しておくことが、事業継続のリスクを管理する上で不可欠です。
事例④:設備のメンテナンスを怠った結果、発電効率が低下
太陽光パネルの表面に付着した土埃や鳥の糞、雑草の影などは、発電効率を低下させる直接的な原因となります。
ソーラーシェアリングは20年という長期間にわたる事業であり、定期的なメンテナンスを怠ると、想定していた売電収入を得られなくなります。
特に、農地では土埃が舞いやすく、パネルが汚れやすい環境にあります。
設備の洗浄や除草、機器の定期点検などを怠った結果、10年後には発電量が大幅に落ち込み、収支計画が狂ってしまうケースも見られます。
安定した発電量を維持するためには、適切な維持管理計画の策定と実行が欠かせません。
事例⑤:一時転用許可の更新条件を満たせず事業撤退へ
ソーラーシェアリングは、農地の一時転用許可を得て行われます。
この許可は原則3年(条件を満たせば最長10年)ごとに更新が必要で、その際に「営農が適切に継続されているか」が厳しく審査されます。
例えば、収穫量が基準を大幅に下回ったり、周辺農地への悪影響が認められたりした場合、許可が更新されず事業撤退を余儀なくされます。
一部の地域では、ソーラーシェアリングに反対する意見もあり、農業委員会との関係性も重要になります。
許可更新という制度上のハードルを越え続けるには、事業期間を通じて安定した農業生産を維持することが絶対条件です。
ソーラーシェアリングで失敗しないために押さえるべき5つの対策
ソーラーシェアリング事業を成功させるためには、失敗事例から学び、計画段階で周到な対策を講じることが重要です。
具体的には、日照条件に適した作物の選定、農業機械の利用を前提とした効率的な設備設計、売電と営農の両面から見た現実的な資金計画の策定、そして実績豊富な専門業者の選定が挙げられます。
さらに、農地法などの関連法規を正しく理解し、制度上の要件を着実に満たしていくことも、事業を長期的に継続させるための鍵となります。
これらの対策は、多くの成功事例に共通するポイントでもあります。
対策①:日陰に強い作物の選定と栽培計画を専門家と立てる
ソーラーシェアリングの成否は、太陽光パネルの影が作物の生育に与える影響をいかに管理するかにかかっています。
対策として最も重要なのは、日陰や半日陰の環境でも育ちやすい作物を選ぶことです。
ミョウガ、シソ、ミツバなどの陰性植物や、ホウレンソウ、ジャガイモ、サトイモといった半陰性植物が候補となります。
近年の研究により、様々な作物における遮光率と収穫量の関係についてのデータが蓄積されています。
農業の専門家や実績のある業者に相談し、地域の気候や土壌、設置するパネルの設計に合わせた最適な作物を選び、具体的な栽培計画を立てることが効果的です。
対策②:農業機械のサイズや動線を考慮した架台を設計する
ソーラーシェアリングの導入後も、効率的な農業を継続するためには、設備の設計段階で農業機械の利用を前提とすることが不可欠です。
実際に使用するトラクターやコンバインの車幅、高さ、回転半径などを正確に把握し、支柱の間隔や架台の高さを十分に確保する必要があります。
これを怠ると、機械が使えず手作業が増えたり、作業中に設備を破損させたりするトラブルにつながりかねません。
成功事例では、農作業の動線をシミュレーションし、機械がスムーズに移動・旋回できるレイアウトが採用されています。
施工業者と綿密に打ち合わせ、農業の実態に即した設計を行うことが重要です。
対策③:売電と営農の収益を組み合わせた現実的な資金計画を作成する
ソーラーシェアリングの資金計画では、売電収入だけに依存せず、農業からの収益も現実的に見積もることが重要です。
初期投資は高額になりがちで、FIT制度の売電単価も年々低下しているため、売電収入だけで早期に投資を回収するのは難しくなっています。
栽培作物の市場価格や販路を事前に調査し、安定した農業収入の見込みを立てる必要があります。
その上で、金融機関からの融資を受ける際には、両方の収益を組み合わせた、実現可能性の高い事業計画を提示することが求められます。
不確実性を考慮し、余裕を持った返済計画を組むことが不可欠です。
対策④:ソーラーシェアリングの施工・運用実績が豊富な業者を選ぶ
ソーラーシェアリングは農業と発電という二つの専門知識を要するため、業者選びが事業の成否を大きく左右します。
太陽光発電設備の施工実績だけでなく、営農に関するノウハウを持ち、長期的な運用サポートまで見据えた提案ができる業者を選ぶことが重要です。
成功事例を多く持つ業者は、様々な条件下での最適な設備設計や作物選定の知見が豊富です。
業者を選定する際は、過去の施工事例の見学を依頼したり、導入後のサポート体制について具体的に確認したりすると良いでしょう。
複数の業者から見積もりや提案を受け、比較検討することが賢明です。
対策⑤:農地法や一時転用許可制度への理解を深めておく
ソーラーシェアリング事業は、農地法に基づく一時転用許可制度の上に成り立っています。
この制度を正しく理解していないと、許可が更新されずに事業が頓挫するリスクがあります。
許可の有効期間、更新時の審査基準(特に収穫量の要件)、地方自治体ごとの条例や農業委員会の意向などを事前に詳しく確認しておく必要があります。
制度に対する理解不足は、地域住民からの反対を招く一因ともなり得ます。
こうした法的な課題や手続きについて、行政書士などの専門家や、実績豊富なコンサルティング会社に相談し、適切な対応ができる体制を整えておくことが重要です。
ソーラーシェアリングに関するよくある質問
ソーラーシェアリングについて導入を検討する際、多くの人が同様の疑問を抱きます。
ここでは、特に質問の多い「失敗しにくい作物の選び方」、「初期費用と投資回収期間の目安」、そして「農地の一時転用許可が更新されない具体的なケース」という3つのポイントについて、簡潔に解説します。
これらの基本的な知識を押さえることは、事業計画の精度を高め、将来的なリスクを回避するために不可欠です。
ソーラーシェアリングで失敗しにくい作物はありますか?
日陰に強い作物が適しています。
例えば、ミョウガ、シソ、ミツバなどの香味野菜や、キクラゲなどのきのこ類は成功事例が多く報告されています。
また、ブルーベリーやサカキなども比較的日陰に強いとされています。
作物の光飽和点に関する研究も進んでおり、専門家と相談の上、地域の気候や土壌に合った作物を選ぶことが重要です。
初期費用はどのくらいかかり、何年くらいで回収できますか?
初期費用は設備の規模や設計によって変動しますが、50kW未満の産業用太陽光発電では、1kWあたり約30万円、総額で1,000万円から1,500万円程度が目安とされています。
投資回収期間は、売電価格や営農収益によって大きく変動しますが、自家消費型太陽光発電では10年から15年が一般的とされています。 また、産業用太陽光発電では8年から12年程度を回収の目安とする情報もあります。 ただし、これはあくまで目安であり、金融機関からの融資条件やメンテナンス費用も含めた詳細なシミュレーションが必要です。
農地の一時転用許可が更新できなくなるのは、どのような場合ですか?
主に、営農が適切に行われていないと判断された場合です。
具体的には、対象農地の収穫量が地域の平均収量の8割を下回った場合や、耕作放棄の状態になった場合です。
また、周辺の農地利用に悪影響を与えていると判断された場合もリスクとなります。
地域によっては反対意見が根強く、許可更新が難航するケースもあります。
まとめ
ソーラーシェアリングの普及には、営農の継続性と事業の収益性という2つの大きな課題が存在します。
失敗事例の多くは、太陽光パネルによる日照不足で作物の収量が基準値を下回ったり、高額な初期費用を売電収入だけでは回収しきれなかったりする点に起因します。
これらの課題を克服するには、日陰に強い作物の選定、農業機械の動線を考慮した設計、現実的な収支計画、そして農地法への深い理解が不可欠です。
これらの対策を講じることで、農業と発電の両立という本来の目的を達成できる可能性が高まります。