火力発電のコストは高い?原子力・太陽光と比較【2030年最新試算】
| カテゴリ:太陽光発電投資の基礎知識
火力発電のコストは、他の電源と比較して高い水準にあり、特に燃料価格の動向に大きく左右されます。
経済産業省が2021年7月に発表した試算によると、2030年時点の発電コストは、原子力発電が11円台後半以上であるのに対し、LNG火力は10円台後半~14円台前半、石炭火力は13円台後半~22円台前半と試算されています。
この記事では、石炭や天然ガスといった燃料の種類によるコストの違い、価格の変動要因、そして家庭の電気代に与える影響まで、具体的なデータを交えて解説します。
目次
【2030年最新試算】火力発電は他の電源より高い?安い?
2030年時点の国の試算によると、火力発電のコストは他の主要な電源と比較して、必ずしも安いとは言えない状況です。
特に事業用の太陽光発電はコスト低下が進み、最も安い電源となる可能性があります。
一方で、原子力発電も安定して稼働すれば比較的安価な電源とされます。
火力発電は、燃料費に加え、将来的に二酸化炭素対策の費用が上乗せされるため、相対的にコストが高くなる傾向にあります。
主要な電源別の発電コストを一覧で比較
2030年時点の発電コストの試算(1kWhあたり)では、電源ごとに大きな差が見込まれています。
国の発電コスト検証ワーキンググループの報告によると、事業用太陽光は8.2円〜11.8円と最も安価になる可能性があります。
次いで原子力が11.7円以上、陸上風力が9.9円〜17.2円です。
一方、LNG(天然ガス)火力は13.7円、石炭火力は13.6円〜22.4円と試算されています。
従来安価とされた大規模な水力発電は11.0円で、火力発電は再生可能エネルギーや原子力と比べて同等か、より高くなる見通しです。
火力発電の種類(石炭・LNG・石油)によるコストの違い
火力発電のコストは、使用する燃料によって大きく異なります。
石炭は燃料単価が比較的安く、発電コストを抑えやすい利点がありますが、二酸化炭素の排出量が多いという課題を抱えています。
LNG(液化天然ガス)は、石炭に比べて二酸化炭素の排出量が少ないクリーンな燃料ですが、価格が国際的なガス市場の影響を受けやすく変動が激しいです。
石油は主に、他の燃料が不足した場合などに使われる調整用の電源であり、燃料単価が非常に高いため、発電コストも他の火力発電所に比べて最も高くなります。
火力発電のコストを構成する3つの主要な内訳

火力発電のコストは、主に3つの要素から構成されています。
最も大きな割合を占めるのが、石炭や液化天然ガスなどの「燃料費」です。
次に、発電所の建設や維持管理にかかる「資本費」と「運転維持費」があります。
そして最後に、環境対策として今後重要性が増す、二酸化炭素(CO2)の排出に対応するための「社会的費用(CO2対策費用)」が挙げられます。
これらの内訳を理解することで、なぜコストが変動するのかが明らかになります。
大部分を占める燃料費(石炭・液化天然ガスなど)
火力発電のコストの内訳で最も大きなウェイトを占めるのが燃料費です。
石炭や液化天然ガス(LNG)、石油といった燃料の価格は、発電コストに直接影響を与えます。
日本はこれらの化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っているため、国際市場における価格変動や産出国の情勢、為替レートの動きが、そのまま燃料の調達コストに反映されます。
特に近年の世界的なエネルギー需要の増加や地政学リスクは、燃料価格を高騰させ、発電コストを押し上げる大きな要因となっています。
設備の維持・管理に必要な資本費と運転維持費
火力発電所のコストには、燃料費以外に資本費と運転維持費も含まれます。
資本費とは、発電所を建設するために必要な土地の取得費用やタービン、ボイラーといった主要な設備の設置にかかる初期投資のことです。
一度建設すれば数十年稼働しますが、その投資額は巨額にのぼります。
一方、運転維持費は、発電所を安全に稼働させ続けるための人件費や設備の修繕費、定期的なメンテナンス費用などを指します。
これらの費用は、発電所の規模や稼働率によって変動します。
今後増加が見込まれる二酸化炭素(CO2)対策費用
火力発電のコストを考える上で、今後は二酸化炭素(CO2)対策費用が重要な要素となります。
これは発電時に排出されるCO2による気候変動への影響を、コストとして負担する考え方に基づくものです。
具体的には、排出されるCO2の量に応じて課税される「炭素税」や、企業間で排出量の枠を売買する「排出量取引制度」などが挙げられます。
これらの制度が本格的に導入されると、CO2排出量の削減が難しい石炭火力発電などを中心に、発電コストが大幅に増加する可能性があります。
なぜ火力発電のコストは変動する?価格を左右する3つの要因

火力発電のコストは常に一定ではなく、様々な要因によって変動します。
特に大きな影響を与えるのが、燃料価格の高騰、為替レートの変動、国内外の政策動向の3つです。
日本の火力発電は燃料の多くを輸入に依存しているため、海外の動向に大きく左右される構造になっています。
これらの要因がどのようにコストの推移に影響を与えるのかを理解することが重要です。
要因①:国際情勢に影響される燃料価格の高騰
火力発電のコストが変動する最大の要因は、燃料である石炭や液化天然ガス(LNG)の国際価格です。
日本はこれらの化石燃料のほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。
そのため、産油・産ガス国の政情不安、世界的な景気拡大によるエネルギー需要の増加、あるいは大規模な紛争の発生といった国際情勢の変化が、燃料価格の高騰に直結します。
価格が高騰すれば、それに比例して発電コストも上昇するため、電力の安定供給と価格の安定化が難しくなります。
要因②:輸入に頼る日本ならではの為替レート(円安)の影響
化石燃料の輸入代金は、主に米ドルで決済されます。
そのため、為替レートの変動、特に円安が火力発電のコストを押し上げる大きな要因となります。
例えば、1ドル100円の時と150円の時では、同じ量の燃料を輸入しても、円建てでの支払額は1.5倍に膨れ上がります。
このように、円安が進行すると燃料の調達コストが増加し、それが発電コストに転嫁されます。
これは、エネルギー資源の多くを輸入に頼る日本特有の構造的な課題です。
要因③:脱炭素社会に向けた政策の動向
世界的に進む脱炭素化の流れも、火力発電のコストに影響を与えます。
二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するため、政府が炭素税を導入したり、排出量取引制度を強化したりする政策を打ち出すと、火力発電事業者の負担が増加します。
特にCO2排出量の多い石炭火力は、大きな影響を受けます。
こうした環境政策の動向という側面は、将来の火力発電コストを予測する上で無視できない要因となっており、事業者はクリーンな発電技術への移行を迫られることにもなります。
火力発電のコスト上昇が家庭の電気代に与える影響
火力発電のコスト上昇は、家庭の電気代に直接的な影響を及ぼします。
日本の発電量の多くを火力発電が占めているため、燃料価格が上がると、それが電気料金に反映される仕組みになっているからです。
特に「燃料費調整額」という項目を通じて、毎月の電気代は変動します。
このため、国際的なエネルギー価格の動向は、家計にとって無視できない問題であり、年間を通じて電気代を押し上げる要因となり得ます。
「燃料費調整額」として電気料金に上乗せされる仕組み
燃料費調整額とは、火力発電に用いる原油・液化天然ガス(LNG)・石炭の燃料価格の変動を、電気料金に反映させるための仕組みです。
電力会社は、発電した電気を送電網を通じて各家庭へ供給しますが、その際の燃料調達コストは為替や市場価格によって毎月変動します。
この変動分を迅速に料金に反映させるため、基準となる燃料価格よりも高くなれば電気料金に上乗せし、安くなれば差し引きます。
これにより、電力会社の経営を安定させると同時に、料金の透明性を確保しています。
火力発電コストの今後の見通しと将来予測

火力発電のコストは、今後も様々な要因によって変動することが予測されます。
短期的には、国際情勢に左右される燃料価格の動向が最大の不確定要素です。
長期的には、脱炭素化の流れを受け、アンモニアや水素といった次世代燃料の導入が進む一方で、再生可能エネルギーのコスト低下との競争が激化します。
これらの技術革新や政策の動向が、将来の火力発電の経済性を大きく左右する見込みです。
次世代技術(アンモニア・水素混焼)導入によるコストへの影響
火力発電の脱炭素化に向けた次世代技術として、アンモニアや水素を燃料に混ぜて燃焼させる「混焼」技術が注目されています。
これらの燃料は燃焼時に二酸化炭素を排出しないため、温室効果ガスの排出量を低減する効果が期待されます。
しかし、現状ではアンモニアや水素の製造・輸送コストが非常に高く、本格的に導入した場合、発電コストを大幅に押し上げる可能性があります。
技術開発によるコスト低減が今後の普及に向けた大きな課題となっています。
再生可能エネルギーのコスト低下が与えるインパクト
世界的に太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの発電コストは、技術革新や大量生産によって急速に低下しています。
特に事業用太陽光発電のコストは、すでに一部の火力発電よりも安価な水準に達しつつあります。
この傾向が続けば、火力発電の経済的な優位性は相対的に低下します。
電力市場において再生可能エネルギーとの価格競争が激化することで、火力発電はこれまでのようなベースロード電源としての役割から、出力の変動を調整する役割へと変化していく可能性があります。
火力発電のコストに関するよくある質問
ここでは、火力発電のコストに関して多くの人が抱く疑問について、簡潔にお答えします。
2030年時点で最も発電コストが安い電源は何ですか?
国の試算によれば、2030年時点で最も発電コストが安くなる可能性があるのは事業用太陽光です。
1kWhあたりのコストは8.2円~11.8円と見込まれており、原子力の11.7円以上やLNG火力の13.7円と比較しても競争力があります。
ただし、天候による出力変動を補うための追加コストなどを考慮する必要があります。
日本が火力発電に依存し続けるのはなぜですか?
天候に左右されず、24時間安定して電力を供給できるベースロード電源として重要な役割を担っているためです。
原子力発電所の再稼働が限定的で、再生可能エネルギーは出力が不安定という課題がある中、電力の安定供給を維持するために火力発電は不可欠です。
東日本大震災以降、停止した原発の代替としての役割も大きくなっています。
家庭の電気代が高くなるのは火力発電のコストが原因ですか?
主な原因の一つと言えます。
日本の電源構成の大部分を火力が占めるため、燃料の輸入価格高騰や円安によるコスト増が「燃料費調整額」を通じて電気代に直接反映されます。
ただし、再生可能エネルギーを普及させるための賦課金など、電気代が上昇する要因は火力発電のコストだけではありません。
まとめ
火力発電のコストは、燃料である石炭やLNGの国際価格、為替レート、そして環境政策の動向に大きく影響を受けます。
2030年の国の試算では、事業用太陽光や原子力のコストが相対的に低下する一方、火力発電はCO2対策費用の上乗せなどにより、必ずしも安い電源とは言えなくなります。
このコスト変動は燃料費調整額を通じて家庭の電気代に直接反映されるため、今後のエネルギー政策や次世代技術の動向を注視することが重要です。