太陽光発電の経費にはどんなものがある?メンテナンス費用は認められる?
太陽光発電所を所有している個人オーナーの方だと、
- メンテナンス費用
- 点検にかかる費用
- 機器の清掃費用
など、どこまでが経費として認められるのか気になるところ。今回は太陽光発電のメンテナンス費用がどこまで経費として認められるかについて、また他にどんなものが経費として計上できるのか解説していきます。
目次
基本的にどのような費用が経費として認められるのか?
太陽光発電の売電収益で認められる経費は、事業所得や雑所得に該当する必要経費が認められています。
太陽光発電によって得られる利益は、事業所得か雑所得のどちらかで確定申告を行います。太陽光発電が事業所得と雑所得のどちらに該当したとしても、【総収入金額-必要経費】という計算式で所得金額を計算する点では共通しています。
そして、どのような費用が必要経費として認められるかは、太陽光発電で利益を得るために直接かかった費用であるかことが基準になっており、所得税法第37条で定められています。
利益を得るために直接かかった費用であれば、経費計上できることが分かりました。それでは次に、具体的な費用が経費計上できるのかについて解説していきます。
メンテナンス費用や清掃費用、修理費用は経費として計上できるのか?
太陽光発電でかかる費用として、
- 定期点検・保守点検費用
- 修理にかかる費用
- 清掃にかかる費用
などがあります。それぞれの内容について経費計上できるのか、具体的に解説していきます。
定期点検・保守点検費用
定期点検費用は、経費計上することができます。定期点検をしなければ太陽光発電設備が故障する可能性が高くなってしまうからです。もし太陽光発電設備が故障してしまったら、利益を得ることができません。そのため、定期点検費用は経費計上することができるのです。
定期点検費用には、法令により点検が義務付けられているものと任意の点検がありますが、どちらの点検費用も経費計上することが可能です。
太陽光発電設備の定期点検や保守点検は、設置した業者が保安責任を持つのが基本原則となっています。太陽光発電設備の点検には、
- 太陽光発電設備を正しく機能させるため
- 事故を未然に防ぐため
という目的があります。これらの目的を実現させるには、発電設備に関する専門的な知識が必要になります。そのため、業者へ依頼した点検費用は経費計上することが可能です。
業者に依頼せず自分で点検をした場合でも、点検にかかった費用は経費計上することができます。一般社団法人 太陽光発電協会の太陽光発電システム保守点検ガイドラインによると点検内容には、
- 目視での点検
- 操作や測定による点検
の2種類があります。操作による点検内容には、
- 絶縁抵抗
- 接地抵抗
- 開放電圧
- 交流電圧
などがあり、それぞれの基準値を満たしているかを測定することになっています。そのため、もし自分で点検する場合は、測定するために必要な機器の購入費用なども経費計上することができるのです。
さらに、太陽光発電メンテナンス技士資格の取得費用も経費計上することができます。ただし、資格を取得したにもかかわらず自分で点検をせずに業者に依頼する場合は、資格取得費を経費計上することができません。上記の場合に経費計上することができる費用は、業者に依頼した点検費用だけとなります。
修理にかかる費用
太陽光発電設備の点検の結果、補修作業が必要になった場合の修理費用は、経費計上することができます。修理をしなければ発電設備を正しく動作させることができず、利益を得ることができなくなるからです。
自分で修理した場合は、交換する機器や部品などの購入費用を経費にすることができます。
清掃にかかる費用
太陽光発電設備のパネルを清掃する費用も、経費計上することができます。業者に依頼する場合は、その費用を経費計上することになります。自分で清掃する場合は、
- 水道料金
- 洗浄剤の購入費用
- 高圧洗浄機の購入費用
などを経費にすることが可能です。水道料金は家事使用分と一緒になっている場合は、家事使用分と太陽光発電設備清掃使用分とに分ける必要があります。
太陽光発電において他にどのような費用が経費として計上できるか?
先述してきた費用以外にも、以下のような費用を経費計上することができます。
- 不動産取得税
- 固定資産税
- 事業所税
不動産取得税
たとえば、太陽光発電事業を行うために土地を取得した場合は、不動産取得税を経費計上することができます。また土地にかかる固定資産税は経費として計上が可能となります。もともと所有していた土地を活用するために太陽光発電で収益を得ている場合は、土地の購入費用や不動産取得税がかかることはないため、これらの費用を経費計上することはありません。取得した土地の価格によっては、不動産取得税が課税されないことがあります。詳細はその土地を管轄している自治体にお問い合わせください。一方で土地賃貸の場合の年間の賃料は経費として計上することが可能です。
固定資産税
太陽光発電設備にかかる固定資産税も、経費計上することができます。新築太陽光発電の償却期間は17年、中古太陽光発電(稼働済太陽光発電)の場合は17年から前所有者が使っていた期間(経過期間)を差し引いた年数で経費にしていきます。中古太陽光発電の税務については以下の記事を参考にして下さい。
太陽光発電の中古物件を売却・購入する際にかかる税務について
太陽光発電の中古物件を売却・購入する際にかかる税務について
固定資産税は土地と建物だけでなく、償却資産にも課税されます。償却資産は使用することによって資産価値が減少する資産のことをいい、代表的なものとして
- 構築物
- 車両、運搬具
- 工具
- 器具、備品
- 機械、装置
といったものがあります。
太陽光発電設備は機械、装置に該当するため、償却資産として固定資産税を支払う必要があるのです。固定資産税は、年に4回納付するのが一般的です。国税ではなく地方自治体に納める地方税であるため、自治体によって納付時期や回数が異なる場合があります。
事業所税
太陽光発電を事業者として営んでいる場合は、事業所税も経費計上することができます。太陽光発電が事業所得として認められる場合は事業所税がかかりますが、その事業所税は経費計上することができるため、法人税や所得税を安くすることができます。
事業所得に認められている損益通算とは?
もし太陽光発電が事業所得として認められれば、損益通算というテクニックを使ってもっと節税することができます。損益通算とは、発生してしまった赤字を他の所得と合算することをいい、赤字分だけ税金負担を軽くすることができるようになります。たとえば、太陽光発電の初年度事業所得が赤字だったとします。他の事業が黒字なら、太陽光発電の赤字と合算することで、その事業の課税金額を減少させることができます。損益通算ができなければ、赤字が発生しても合算することができないため、黒字の事業の税金は赤字分だけ安くすることができないことになります。
事業所得と雑所得のボーダーラインは?
国税庁と資源エネルギー庁には、以下2つの見解があります。
- 給与所得者は、余剰売電でも全量売電でも雑所得に当てはまる(国税庁)
- 給与所得者でも一定の管理を行えば、事業所得に当てはまる(資源エネルギー庁)
給与所得者個人が事業所得で確定申告できるかは、税務署が総合的に判断することになります。太陽光発電設備が設置された住所地を管轄する税務署が実際に判断するため、確定申告前にあらかじめ確認しておくと安心です。自己の判断で事業所得として確定申告しても、否認されてしまう可能性があるからです。
経費として計上する際の注意点
経費として計上する際の注意点は、以下の2つがあります。
- 領収書の保存義務
- 経費計上する時期
領収書の保存義務
法人は7年、個人は5年の保存義務があります。確定申告をするときに領収書は添付する必要はありませんが、税務署から問い合わせがあった場合に提示できるようにしておかなければなりません。もし提示できなかった場合は、経費計上が否認される可能性があるからです。
経費計上する時期
太陽光発電にかかる費用を経費計上するのは、原則として既に支払ったものが当てはまります。しかし、固定資産税や不動産取得税は、翌年に第4期分が設定されていることがあります。その場合は、
- その年の経費にする
- 翌年の経費にする
のどちらを選んでも問題ありません。
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太陽光発電投資の売電収入は確定申告が必要?