太陽光発電所のパワコン交換について
FIT制度も10年以上が経過し、メガ発にもパワコン交換に関するお問い合わせをいただくことが多くなってきたので、パワコン交換について書いていきます。
本記事では主に低圧太陽光発電所の「パワコン交換」を中心にご案内させていただきます。
パワコン交換はそもそも必要なのか?
結論から申し上げますと。イエスです。保証期間の前あたりでパワコンの交換を検討されるのがベターな選択です。
40円や36円の時代に太陽光発電所を購入された方はこんな言葉を聞いたことがあるかもしれません。
「太陽光発電所はメンテナンスフリーです。」
実際はどうでしょう。全くそんなことはないですよね・・・。1年程運営すればご理解いただけると思いますが、草刈りはもちろん、何かしらの故障を経験された方もいっらっしゃることでしょう。
そして、一番コストがかかるはずのパワコンに交換が必要といった案内もほぼなかったと思われます。パワコンの保証が10年というところは保証書から読み取れますが、10年前後でパワコンが故障する可能性が高く一度は交換が必要でさらにその交換に300万円前後の費用がかかるなんて・・・。
パワコンに交換が必要といった認識が広がりはじめたのは、SMA社が低圧向けに20年保証のパワコンを出し始めたあたりからと思われますが、そのSMA社も現在、低圧向けのパワコンは取り扱っておりません。
FIT単価24円、21円あたりから、パワコン交換も含めたシミュレーションを提示する事業者も出てきてはおりましたが、パワコンに交換が必要という共通認識が出てきたのは、本当にここ数年の話しだと感じています。
それくらいパワコン交換というものについて発電事業者もEPC事業者も無頓着だったことが伺えます。
実態として、パワコンは交換が必要で、費用もかかります。
パワコンの納期って実際どれくらいなの?
さて、パワコン交換について調べてたり、検討段階に入ってくると次に出てくるのが「パワコンの納期」問題です。
「半導体不足で~」「感染症で~」「円安で~」などの理由で最長で半年以上かかります!といった記事をみることもありますが、さすがに現状では半年といったことはほとんどないですが、それでも数ヶ月程度かかるのは普通です。
理由は3つ。
・業者の初期対応までの時間
・メーカーからの納期が数ヶ月かかるケースあり
・EPC事業者の工事可能日が数ヶ月先。
パワコン交換の納期についてですが、通常パワコンが故障した場合、以下のようなフローとなります。
※EPC業者もしくはメンテナンス業者に連絡されると思いますが、ここでは業者で統一。
①発電事業者が遠隔監視、目視等でパワコンの故障を認識
②発電事業者が業者に連絡
③業者が現場に赴きパワコンの故障を確認
④現場にて業者がメーカーに連絡し故障内容を確認
⑤故障が保証内のものであれば、修理もしくは交換
まず、③業者が現場に赴きパワコンの故障を確認
ここで時間がかかることがあります。優良業者でも現場に赴くまでに数日はかかります。遅い業者だと二週間程度かかることもあり、最悪のケースでは業者が倒産して連絡が取れないといったケースも想定されます。この場合はかなり時間がかかります。
また、業者が倒産していて他業者に依頼する場合は、基本的に駆けつけ費用が別途かかる、自社の工事ではない現場にはあまり行きたがらないといった実態も頭に入れておく必要があります。
次に、④現場にて業者がメーカーに連絡し故障内容を確認。ここで交換もしくは修理が必要なレベルの故障と判明した場合にメーカー対応となります。ただし、保証外の故障の場合は別途費用がかかる点には注意が必要です。
最後の⑤故障が保証内のものであれば、修理もしくは交換
ここで対応が早いメーカーであれば数週間程度で現場にて交換。もしくは業者にパワコンを送付して、業者が現場にて交換といった形となります。
対応が遅いメーカーの場合、1~2ヶ月程度かかるケースもあるようです。特に旧型のパワコンや、現在製造を中止しているメーカーの場合は遅くなるケースが多いと業者からの情報としてあがってきています。
あくまで目安ですが、パワコン交換の納期としては最短で1ヶ月程度、最長で4ヶ月程度と想定しておけばよいと思います。そして気をつけなければならないのは、基本的に故障している間の売電は補償されません。1台だとそれほど被害は大きくないかもしれませんが、全てのパワコンが故障してしまうと数ヶ月売電がゼロという最悪な状態もありえます。
そういった事態を防ぐためにも、保証期間前に新しいパワコンへの交換を検討しておくのがベターな選択です。
パワコン交換のメリット
特に40円や36円などFITが始まったばかりの頃のパワコンの返還効率は90~95%のものが主流でしたが、2024年現在、95~98%程度の高変換効率のパワコンがでてきています。
話を単純化すると、90%のパワコンから98%の変換効率のパワコンに入れ替えるとかなりの効果が期待できます。
もう一つメリットになりそうな点として、系統の組み換えを行って、さらに数%発電量を上げる取り組みを行っている事業者も出てきています。
正直、FIT初期の発電所は工事のレベルが低いものも多く見受けられます。そういった発電所はパワコン交換に加えて系統も組み替えることでかなりの売電アップが期待できます。
パワコン交換のデメリット
当然、費用面となります。一般的なパワコン交換では、単相で300万円、三相で350万円が一つの目安となり、非常に高い金額といえます。
とはいえ、10年前後で交換することが推奨されるため必要経費として折り込む必要があります。ここで重要なのがいかに費用を抑えて売電をアップさせるかとなります。単純にパワコン交換だけを行うよりも前述の系統組み換えなども行いながら、いかに早く回収できるかがポイントになってくるでしょう。
パワコン交換は保証期間を待ったほうがいいのか?
パワコンの保証期間は10年・15年のものが一般的です。保証期間内に保証内の故障であれば修理・交換対応となるため、「保証期間が終わってから」もしくは「保証が切れるタイミングと同時に」と考えられる方も多くいらっしゃるのが実状ですが、果たしてその選択で問題ないのでしょうか。
もし、保証が切れてしまってからパワコンの交換を行おうとすると、全て自費で対応する必要があり、更に故障している場合は売電をロスしてしまいます。そして失われた売電は戻ってきません。
正直な話、いずれにしろ交換を行うのであれば早い方が得策です。前述しましたが、単純にパワコン交換を行うだけでも数%程度の発電量アップが見込めます。
売電がアップすることを考慮すると、保証期間よりも前にパワコンを交換して、発電量が上がる状態で残りの期間に売電を行うのが最善策です。
パワコン交換のまとめ
最新の動向も交えながら、パワコン交換についてご案内させていただきました。まとめると費用はかかりますが、早めの交換を検討されるのがよいでしょう。メガ発のお客様のですと運転開始から7~8年で交換を検討されるケースが多く見受けられます。
簡単は決断ではないですが、いずれ交換するのであれば、早めに新しいパワコンに入れ替えることを検討してみましょう。
現在では信販会社を利用してローンでのパワコン交換も可能なので選択肢の一つとしてご検討ください。
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