土地付き分譲太陽光発電の基礎知識と現状

東日本大震災以降、脱原発の声が高まる中で注目を集めているのが再生可能エネルギー事業です。 その中でも特に注目されているのが太陽光発電システムで、個人でも始める事が比較的簡単に出来るため導入が進んでいます。 さらに2012年に政府が導入した固定価格買取制度で普及にさらに拍車がかかっています。
住宅用(10kW未満)の太陽光発電であれば、自宅の屋根に設置することができるため多くの方が導入することができますが、規模の大きいの産業用(10kW以上)の太陽光発電システムは土地を所有している方でなければ、設置することが難しいの現状でした。
しかし、近年では土地とシステムがセットになった分譲太陽光発電システムが増加しており、投資用や節税対策で購入する方が多くなっています。
目次
分譲太陽光発電とは
分譲太陽光発電は土地がなくても太陽光発電を始められることから、投資案件として注目を集めています。「分譲ソーラー」「土地付き太陽光発電」とも呼ばれています。
分譲太陽光発電は販売者が一括で購入または借り上げた土地に、太陽光発電を数~数十区画に分割して設置。設備と土地を複数の区画に分けて販売する方式です。分譲マンションを購入すると考えると分かりやすいかもしれないですね。土地は20年間の定期借地権、もしくは所有権付きでの販売となっています。個人でも法人でも購入は可能です。
分譲太陽光発電は、『土地』『補償』『メンテナンス』がセットとなって販売されているものが多く、実際の運営も管理する業者に任せることができるので、管理面での負担も少ないです。また、監視サービスを行う会社が一括で管理を行うので、故障などの対処もしやすいというメリットがあります。サービス内容は販売業者によって異なります。購入前に比較検討するようにしましょう。
予算さえ確保できれば誰でも手軽に始められるのが、分譲太陽光発電の人気が高い理由の一つとなっています。販売業者によってはソーラーローンなど、資金調達の相談に乗ってくれるところもあります。
1区画の分譲価格は50kW低圧で2000万円前後
分譲太陽光発電の1区画の料金は、50kW未満の低圧連系で2000万円前後が一般的です。土地代によって価格が変化します。
その他の費用としては、土地の所有権または借地権、接続検討費用、行政への諸手続き、メンテナンス費用などを含んでいます。50kWの設備を1つ設置するよりも、大きな発電設備を設置して区画分けすることでコストを削減しています。
1区画の敷地面積は700㎡程度
分譲ソーラー1区画の設置に必要な面積は700平米程度です。分譲販売のため、土地を確保する必要はありませんが、全量買取制度の開始以降、太陽光発電に適した土地は発電事業者の争奪戦になっています。 元々土地を所有していれば別ですが、素人が収益性の高い土地を探すのは時間も手間もかかります。
販売業者が太陽光発電に適した土地を分譲販売してくれるので、購入を検討している方は実績の多い、安心して任せられる販売業者を探すのに集中するとよいでしょう。
土地付き分譲太陽光発電の賃貸物件と売買物件のメリット・デメリット
『土地付き』『分譲型』と呼ばれる太陽光発電システムは2つのタイプがあります。土地が「賃貸タイプ」のものと「売買タイプ」のものがあります。売買のものも徐々に増えてきてはいますが、全国的には賃貸タイプのものが多なっています。
賃貸と売買どっちがお得?
どちらのタイプもメリット・デメリットがあります。双方とも太陽光発電システムに対する固定資産税はかかります。また、メンテナンス料金に変わりはありません。
賃貸の場合は、土地に対する固定資産税は所有者ではないのでかかりませんが、土地の賃料を毎年支払うことになります。しかし、基本的には売買よりは、イニシャルコストが安いとされています。
また、賃料が年単位で見直される場合は、景気や経済状況によって価格が変動する可能性があります。一括で支払える余裕があるのであれば、リスク回避のために一括で支払っておくとよいでしょう。
売買の場合は、土地の所有者となるので毎年固定資産税の支払い義務が発生します。初期費用も賃貸に比べ、高くなるケースが多いです。 メリットとしては、太陽発電事業が終わった後でも土地は資産として残ることです。ただし使い道がなければ、固定資産税だけが毎年かかってしまうデメリットがあります。
「売買物件」「賃貸物件」ともにメリット、デメリットはあります。一概にどちらがお得なのかと言う判断をするのは難しそうです。土地の立地条件なども判断材料になると思いますので、基本的には初期費用と利回りで検討するとよいでしょう。
土地賃借料の相場
場所によって異なりますが、大体年間10~30万円程度になります。
日射量や交通の便など、条件の良い土地は高くなる傾向にありますが、おおよそ年間売電額の10%程度で計算しておくとよいでしょう。
販売会社が購入した土地であれば若干の交渉の余地はあるかと思いますが、あまり期待しないほうがいいでしょう。
現実的に、分譲太陽光発電は『売り手市場』となっています。購入希望者が多く需要に供給が追いついていない状態なので、価格交渉で値段を下げるのは難しいです
比較のポイントは?
土地の賃料は初期費用の回収に関わってくる部分なので、大切な部分ではありますが、発電量や保証面も非常に重要です。全体のバランスを見て検討することが大切です。
価格面を重視される方も多いですが、投資をメインとして考えた場合、利回りを気にされる方も多いです。人によって重視するポイントは異なりますが、20年間のお付き合いとなるので、信頼できる業者かどうかが一番大切といってもよいでしょう。
土地権利に関してはこちら
分譲太陽光発電の土地借地権付きとは?
収益は年間200万円前後。10年で回収の計算
1区画の設備容量はおよそ50kW。年間の発電量50,000kWhに平成25年度の買取価格(売電価格)37.8円を乗じた1,890,000円が年間の予想収益です。発電する場所にもよりますが、実際には200万円前後の収益が見込めるため、10年程度で初期費用を回収できる計算です。
20年間の収益はおよそ4,000万円。利回りは10%前後
1年あたり200万円の収益が見込めるため、20年間トータルの収益は4,000万円程度。2,000万円の初期費用に対して倍の利益を見込めるのが分譲商品の魅力です。
また、想定される利回りは10%前後です。マンション経営には空室リスク、コンビニや駐車場経営には競合リスクがあります。分譲太陽光発電の場合は隣に別の発電所が建設されても買取価格(売電価格)に影響はありませんし、雑草リスクなど、ある程度のリスクは最初から想定されているので、対策が打ちやすいのも特徴です。
遠方であれば会って商談する機会も少ないので、メールや電話でのやり取りとなります。レスポンスの早さと、疑問に対してきちんと答えてくれるかは当然のことながら、購入希望の方にとっては会社の規模や実績も気になるところですね。
分譲太陽光発電の販売会社は歴史の浅い会社も多く、不安に思われる方も多くいらっしゃいます。 ただ、パネルの故障はメーカーがおこないます。売電保証や動産保証は保険会社がおこないます。メンテナンスも専門の業者がおこないます。販売会社との関わりは契約前から発電開始までが主となります。
一番重視するポイントは契約の内容です。『20年間絶対に安全』というの簡単ですが、メーカー、施工会社、保険会社にしても今後ずっと存在する保証はありません。『何かが起こった際の備え』をきちんとしている業者が信頼できる業者といえるのではないでしょうか。
分譲太陽光発電のまとめ
土地がなくても50kWの太陽光発電を2000万円程度で始められるので、分譲太陽光発電のニーズは非常に高いものになっています。
自分で土地を探す手間を省き、さらに規模の大きな太陽発電システムを区分けして、50kW未満の低圧連系の太陽発電システムとして販売するケースが多いので、高圧連系に必要なキュービクル等の設備が必要ありません。また、施工会社や販売会社が区分けした太陽光発電システムを一括して管理するのでメンテナンス費用等が安いのが特徴です。
ご自分の所有地に太陽光発電システムを設置する場合は、設置場所が近隣であれば自分で管理することができますが、遠くの場合だとどうしても管理をお願いしなくてはなりません。個別で管理することになるので、分譲太陽光発電よりもメンテナンス費用が嵩んでしまいます。
土地を所有していない人は、今から土地を探して太陽光発電事業を始める選択肢をとるよりも既に前年度の設備認定を取得している分譲用太陽光発電システムを購入したほうが手間も省けて、高い売電価格で20年間の買取が保証されていますのでメリットが大きいかもしれません。
【重要!】追記
平成26年度4月1日から固定価格買取制度の認定について改正が行なわれ、敷地を分割し低圧太陽光発電所を複数設置する分譲太陽光発電を行なうことが禁止されました。
詳しくはこちらをご覧ください
太陽光発電分譲禁止!!駆け込み需要が活発化
ただ、大規模な土地を分割する分譲太陽光発電の場合、複数基を同じ場所に購入した場合、発電所が一箇所に集中してしまうため災害時などにリスクも集中することになってしまいます。
現在、土地付き太陽光発電は固定価格と共に設備費用も下落しているため、低価格で発電量が多いものが主流になっているため、こういった発電所を分散して所有する方がリスクヘッジには向いていると考えられます。