太陽光発電でよく耳にするパワーコンディショナー(パワコン)って何?
目次
太陽光発電について調べていると、「パワーコンディショナー」という言葉を耳にしたり目にすることがあると思います。もしくは、パワーコンディショナーの略名である「パワコン」という言葉が使われていたかもしれません。
よく耳にする言葉ですが、太陽光パネルと比べるとパワーコンディショナーについてはあまり詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。本記事では、この「パワーコンディショナー」について、役割から特徴まで徹底的に解説をしていきます。
パワーコンディショナーは金属でできた箱状の電気機器で、大きさは衣装ケースくらい、見た目は宅配ボックスやロッカーが近いです。
出展:「オムロン」
産業用太陽光ではパネル下の架台柱に、住宅用太陽光では住宅の外壁に設置されているところをよく見かけます。
パワーコンディショナーは、太陽光パネルに比べるとあまり目立つ存在ではありません。しかしながら、パワーコンディショナー(パワコン)は、太陽光発電の心臓部とも言われる非常に重要な電気機器です。いくら太陽光パネルが発電したとしても、パワーコンディショナーがなければ発電した電気は家の中で使うこともできませんし、売電することもできません。
パワーコンディショナーの役割
ではパワーコンディショナーにはどのような役割があるのでしょうか。
それは、太陽光発電で発電した電気を変換・調節することです。具体的に言うと、主な役割として以下の2つがあります。
- 発電した電気を家の中で使えるようにする
- 発電した電気を売電する
2つの役割をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
発電した電気を家の中で使えるようにする
まずは、以下の図をご覧ください。これは、太陽光発電システムの簡単な構成図です。
パワーコンディショナーが、太陽光パネルと分電盤・売電メーターの間にあることがわかります。
太陽光パネルで発電した電気は、パワーコンディショナーまで伝達されます。その電気は、住宅用太陽光発電では家の中で消費され、余った分が売電メーターを経由して売電されます。
実はこのとき、パワーコンディショナーで太陽光パネルで発電した電気を変換しているのです。なぜなら太陽光パネルで発電した電気は「直流電流」で、家の中ではそのまま使うことのできない電気だからです。
その「直流電流」を家の中で使える「交流電流」に変換することこそが、パワーコンディショナーの役割です。
産業太陽光の場合は全量買取のため消費がありませんので、全ての電気が売電メーターを経由して売電されることになります。売電する場合も、交流電流である必要がありますのでパワーコンディショナーが必要です。
発電した電気を売電する
パワーコンディショナーのもう1つの役割が、発電した電気を売電することです。
正確に言うと、使うのか売るのかを判断して系統の電圧状況に合わせて売電する電気の電圧を調整する、という機能を持っています。 この「系統の電圧状況に合わせる」とはどういうことでしょうか。系統とは、電柱や電線など電力会社側の設備のことを言います。この系統へ電流を送電(逆潮流ともいいます)することで、売電を行います。
電気は、電圧が高い方から低い方へ流れるという特性があります。水の流れをイメージしてみてください。 水も水位の高いところ(上流)から低いところ(下流)へ流れていきます。系統の電圧は、周囲の電気の消費状況や太陽光発電からの売電状況で、絶えず上がったり下がったりを繰り返しています。
系統に入る電気と出ていく電気が常に変動しているため、電圧もそれに応じて少しずつ変化しています。目安の電圧が100Vですが、実際には電気事業法で定められている101Vを基準に±6V、つまり95V~107Vの間で電圧は変動しています。
そのため、太陽光パネルで発電した電気を系統側に送電する際には、系統側の電圧よりも高い電圧に調整しなければ売電できません。この電圧調整の役割を、パワーコンディショナーが担っているのです。
パワーコンディショナーの主な役割は上記の2点ですが、それ以外にも安定発電のためにさまざまな機能が具備されています。 出力抑制(出力制御)命令に合わせた出力抑制機能や、災害時に非常用電源として使える自立運転機能、発電量を最大化するMPPT制御機能などがあります。
パワコンにはどういったタイプがある?
パワーコンディショナーの役割を理解できたところで、どのような種類のパワーコンディショナーがあるのかを見ていきましょう。
基本的には、設置するのが屋内か屋外か、機器を細かく分けるのかまとめるのか、という2つのポイントがあります。
屋内型
屋内型のパワーコンディショナーは、主に住宅用太陽光発電で用いられます。
運転音や放熱へ配慮した設置位置を選ぶ必要があり、居室や寝室から距離があって熱のこもりにくい脱衣所や廊下などに設置されることが多いです。後述する屋外型に比べると、以下の特徴があります。
- 風雨による経年劣化の影響を受けにくい
- サイズが一回り小さい
- 湿気の多い箇所には設置できない
- 価格的には安い
屋外型
屋外型のパワーコンディショナーは、主に産業用太陽光発電で用いられます。
屋内型と比べて、設置場所を選ばないというメリットがあります。また、常に風雨にさらされ続けられるため、表面塗装や接合部のシーリングを工夫することによって防水・防塵性能が高められています。一方で、その分だけ屋内型に比べると費用的には高くなる傾向にあります。
屋外型を産業用太陽光で用いる場合は、2つの設置方法があります。
それが、「集中型」と「分散型」です。
産業用太陽光発電はシステム容量が大きくなるので、その分パワーコンディショナーの総容量も大きくしなければいけません。このとき、パワーコンディショナーの機器をなるべくまとめる「集中型」か、細かく分ける「分散型」かという選択肢が出てきます。
それぞれのメリットとデメリットを解説していきます。
集中型
「集中型」は、パワーコンディショナー1台あたりの容量が大きいものを選んでなるべく少ない台数で設置する方法です。
台数を少なく抑えることができるため、初期導入時のコスト負担を減らすことができます。また、施工や保守メンテナンス時にも、台数が少ない分だけ工数の削減につながるというメリットもあります。
このように、集中型は設置効率が良いというメリットがあります。
一方で「集中型」は、故障など不具合時のインパクトが大きくなるというデメリットがあります。
1台あたりの容量が大きいため、必然的に紐づく太陽光パネルの枚数も多くなります。そのため、1台故障することでロスしてしまう売電量が大きくなります。 また、1台にかかる負担が増えるため、故障するリスクも分散型に比べると高くなるでしょう。
分散型
「分散型」は「集中型」と逆で、台数は増えますがパワーコンディショナー1台あたりの容量が小さいものを選んで設置する方法です。
メリット・デメリットも「集中型」と全く逆で、メリットは不具合時のリスクを低減できること、そしてデメリットはコスト負担が増えることです。1台あたりの容量が小さく、紐づく太陽光パネル枚数が少ないため、「集中型」と比べると故障時の売電ロスが少なく済みます。
一方で、台数が増えるため初期導入コストも施工や保守メンテナンスのコストどちらも大きくなることになります。
「集中型」と「分散型」のどちらを選ぶかは、ご自身の投資方針や周辺環境などを考慮して決めましょう。
投資用土地付き太陽光発電では三相屋外集中型が主流!
太陽光投資を目的とした土地付き太陽光発電の案件では、設置効率がよく費用面で有利になる屋外集中型のパワーコンディショナーを用いることが主流です。
分散型にして起こるかわからない故障時のリスクヘッジをするよりも、集中型で初期費用を抑えて手堅く収益性を向上させたいからです。また、屋外集中型の中でも「三相」屋外集中型が最も主流です。
「三相」というのは送電方法のことで、もう1つ「単相」というものもあります。
「三相」が産業用製品など大型設備に利用され、「単相」は家庭で使う家電機器に利用されています。産業用太陽光では、この三相でかつ屋外集中型が最もコスト効率に優れているため、採用されることが多くなっています。
三相屋外集中型のパワーコンディショナーを選ぶときに基準とすべきなのは、以下の3つの項目です。
- 変換効率
- 容量
- 価格
1つずつ詳しく見ていきましょう。
変換効率
パワーコンディショナーが太陽光パネルで発電した直流電流を交流電流に変換する際、必ずロスが発生します。この変換ロスの割合が変換効率です。
変換効率が高いほど、発電した電気をムダにすることなくより多くの売電ができます。現状はどのメーカーもパワーコンディショナーの変換効率も横並びで、95%~97.5%程度になっています。
注意すべき点が、パワーコンディショナーと太陽光パネルの相性によって変換効率が変わるという点です。
メーカーが公表している変換効率はあくまで参考値ですので、パワーコンディショナーと太陽光パネルの最適な組み合わせを選択したほうが良いでしょう。また、メーカーや業者が提示する発電シミュレーションには、このパワーコンディショナーの変換効率も加味した上で、算出していることがほとんどです。
容量
産業用のパワーコンディショナーの容量は、10kWちょうどのものに加えて、50kWまで各20kW、30kW、40kW台でそれぞれラインナップがあります。また、分散型の場合は住宅用として3.0kW~6.0kWで数種類のラインナップされている10kW以下の容量のパワーコンディショナーを複数使うことになります。
パワーコンディショナーの容量は、太陽光パネルの出力値に合わせて選択をしましょう。また、過積載をする際はパワーコンディショナーに過積載可能な太陽光パネルの出力範囲を、事前に確認することをオススメします。
価格
太陽光発電設備の全体コストのうち、50%~60%と最も大きな割合を占めるのは太陽光パネルです。そして、パワーコンディショナーが占める割合は10%~20%と言われており、太陽光パネルの次にコスト負担が大きい機器です。
分散型で主に利用される5kW前後のもので、25万円~50万円ほどになります。集中型で利用されるような容量が大きいものであれば、100万円以上になります。定価ベースで、だいたい0.5kW容量が増えるごとにおおよそ1万円程度価格が上がるイメージです。
ただ、太陽光発電においてはあまり個別の機器の価格を見ることは少なく、システム全体の価格で見ることがほとんどです。そのため案件同士を比較する際は、全費用を容量で割ったkW単価で比較するようにしましょう。
パワコンのメンテナンスや保証、寿命は?
パワーコンディショナーは、エアコンや冷蔵庫等と同じ電気機器です。そのため、同じように劣化し寿命を迎えます。
パワーコンディショナーの寿命は、おおむね10年~15年です。太陽光発電は20年以上の運用期間になりますので、少なくとも1度は故障する計算になります。 このときのメンテナンスとしては、業者やメーカーでチェックしてもらい修理もしくは交換対応を適宜判断する形になります。
しかしながら、実情としては修理対応は難しいため、基本的に交換となることが多いです。そのため、投資の収益性を試算する際には、このパワーコンディショナーの交換費用も見込んで計画するようにしましょう。 また、修理・交換の作業時は、一旦発電を止めることになりますので、1日は売電収入がないことも合わせて覚えておきたいです。
ただ、基本的に10年もしくは15年のメーカー保証がついています。10年は無償でつくことがほとんどですが、メーカーによっては有償15年とオプションになっている場合もあります。
メーカー保証期間中に故障した場合は、無償で交換をしてくれるため、有償となっても15年のメーカー保証がついてくるのはとても安心です。
収益性を鑑みて、メーカー保証が15年のパワーコンディショナーを選択する、オプション料金を払って15年に保証期間を延長するかを検討しましょう。
まとめ
パワーコンディショナーは、太陽光パネルで発電した電気を家で使ったり売電できるように変換する電気機器でした。産業用太陽光では、三相屋外集中型を用いれば設置台数を減らすことができるので、より効率的な投資になります。
一方で、10年~15年で寿命を迎え交換をする必要があるため、メーカー保証期間は慎重に検討した方が良さそうです。
太陽光パネルにばかり注目が行きがちですが、太陽光発電の心臓部とも言われるパワーコンディショナーにも目を向けて、安定した太陽光投資を実現しましょう。
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